築51年の住宅の木製窓を断熱リフォームできたのは、屋根庇のおかげだった
こんにちは。いきなりですが、私、「木製窓」が大好きです。北欧から輸入されている超高性能の木製トリプルガラスサッシュも好きですし、アルミサッシが普及する前の建具職人の造った木製窓も大好き。高校生まで住んでいた自宅は建具職人の造った雨戸付の木製窓でした。何が好きかというと、木の手触りと手作り感が好きなのです。
超高性能の木製トリプルガラスサッシュは値段が高くて、私は1度だけ使った経験があるだけです。また、建具職人の造った木製窓は、高度経済成長期のアルミサッシの普及と共に、この世からほとんど姿を消しました。住宅建築の仕事をしていても、木製窓を見る機会は少ないです。
この写真のお宅は、東京オリンピックのあった1964年に建った今年で築51年のお宅で、全ての窓に建具職人の造った戸袋付(とぶくろつき:雨戸が入っている部分を戸袋と言います)木製窓が付いています。51年前の住宅とは思えないほど、木製窓は劣化していません。木の窓なのに、あまり劣化していないのです。このままでも、あと15~20年は使えるのではないかと思えるほどに劣化が少ない。腐朽して木が柔らかくなっている部分はありません。
50年以上前の木製窓が長持ちしている秘密は、写真上方に見える、屋根の庇にあります。平屋ですが、壁から90㎝以上庇が出ていて、雨が降っても、風が強い時以外は、木製窓に雨が掛かりません。今回、打ち合わせの時に現場で雨が降ってきたのですが、屋根の下に入ると全く雨に当たりませんでした。雨が掛からず、木が腐らなかったので、51年経っても劣化が少ないのです。ちなみに2階建ての場合、木製サッシュを付けて、このように長持ちさせる場合は、90㎝以上庇を出したほうが良さそうです。この経過を見ると、造作木製サッシュや木製トリプルガラスサッシュを付ける場合は、これくらいは庇が必要だという事になります。
このお宅の窓の断熱リフォームは、木製窓の外側からLOW-Eペアガラス付アルミサッシを設置したのが3か所。木製窓の内側にペアガラスの樹脂内窓を取り付けたのが5か所。合計8カ所の窓の断熱リフォームを行いました。ちなみに、木製窓の外側からアルミサッシを設置したのは、施主の希望です。劣化は少ないとは言っても、多少、木は変色しているので、来客から目につきやすい3箇所は、外側からアルミサッシを付けたかったのだと思います。
木製窓を断熱リフォームするのは珍しいですし、既存窓の外側からは通常、窓は付かないので、どのように施工したかお見せします。現場で納まりを考えて、施工しました。戸袋の開口部に厚さ3㎝、幅9㎝の檜の板を貼って、アルミサッシのツバを取り付ける下地を造りました。他の3方向は、木製サッシュの額縁にビス留め。コウモリが入らないように戸袋を塞ぎます。初めて行った木製窓の断熱リフォームですが、大げさにならずに上手く行きました。屋根庇が窓の劣化を防いだおかげで、木製窓の状態が良かったから出来たリフォームです。
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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