【シラスそとん壁の汚れは落ちる?】築17年の家の、外壁洗浄実験により判明|除菌洗浄剤よりも、高圧洗浄機の強い水圧が有効だった理由

17年前、2009年4月に完成・お引き渡しをしたA様邸。
築15年となった2024年4月26日、外壁の汚れが気になり、施主のA様と一緒に、メーカー推奨の除菌洗浄剤「サポートジアーナM」を使って洗浄を行いました。

洗浄剤のマニュアルを読んだ上で、メーカーに事前確認した方法は、
- 洗浄剤を散布
- 散水ホースで水をかけながらナイロンブラシでこする
というもの。
高圧洗浄機は使わなくても汚れは落ちる、との説明でした。
しかし、結果は――汚れは落ちませんでした。
その後私は、
「家庭用高圧洗浄機を使い、水圧をコントロールすれば、外壁を傷めずに汚れを落とせるのではないか?」
と考え、施主のAさんに再実験を提案。
そして2年後の2026年3月21日、再度洗浄を実施したところ、家庭用高圧洗浄機で、かなり綺麗に汚れが落ちました。
今回の記事では、
- 1回目(失敗)
- 2回目(成功)
の実験結果をもとに、そとん壁のメンテナンス方法と注意点を詳しく解説します。

以下のリンクは、除菌洗浄剤「サポートジアーナM」を使った場合の洗浄マニュアルです。
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.takachiho-shirasu.co.jp/assets/images/untitled%20folder/%E5%A4%96%E8%A3%85%E3%82%B7%E3%83%A9%E3%82%B9%E5%A3%81%E3%81%AE%E3%81%8A%E6%89%8B%E5%85%A5%E3%82%8C%E6%96%B9%E6%B3%95%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6-%E5%9C%A7%E7%B8%AE%E6%B8%88%E3%81%BF.pdf
目次
そとん壁は「工務店殺し」の長寿命外壁材
築17年経過した現在でも、汚れているのは
- 北面
- 東面
- の雨が乾きにくい部分
です。
一方で、
- 南面
- 西面
は、ほぼ汚れていません。
これは、日射によって雨水が乾きやすいかどうかの違いだと考えています。


一般的な外壁材である
- 窯業系サイディング
- ジョリパットなどの塗り壁
は、10〜15年ごとに塗装メンテナンスが必要です。
しかし、そとん壁は違います。
外壁塗装リフォームが基本的に不要です。
これは正直なところ、工務店としては複雑です。
新築時に採用すると、その後の外壁リフォーム需要がほぼ無くなるため、まさに「工務店殺し」の建材と言ってもいいと思います。
ただし逆に言えば、施主にとっては非常に優れた外壁材であることは間違いありません。
外壁の高圧洗浄は、屋根塗装等で足場を架ける時に、軒天塗装や樋塗装と一緒に行うのが良いと思います。
そとん壁とは?

そとん壁とは、九州・南九州に広く分布する「シラス(火山灰)」を原料とした塗り壁材です。
製造しているのは 高千穂シラス株式会社 で、自然素材100%に近い外壁材として注目されています。
主原料であるシラスは、約2万5千年前の火山噴火によって堆積した天然素材。これを独自の製法で加工し、外壁用の仕上げ材として使えるようにしたものが「そとん壁」です。
一般的なサイディングとは異なり、塗り壁ならではの質感と、無機質素材の耐久性を兼ね備えているのが特徴です。
また、代表的な仕上げとしては
- かき落とし仕上げ
- スチロゴテ仕上げ
などがあり、意匠性(デザイン性)の高さも魅力のひとつです。
当社では、かき落とし仕上げを採用しています。
かき落とし仕上げのメリットはとにかく、ヘアークラック(ひび割れ)が、目立たないこと。左官材料は、必ずクラックが入りますので、それを目立たなくするのは大切なことです。
かき落とし仕上げのデメリットは、他の仕上げ方と比較して、多く材料を使ことです。剣山のような道具で掻き落とすことで仕上げますが、掻き落とした材料は、使えませんからゴミになり、産廃のコストも余分に掛かります。
https://www.takachiho-shirasu.co.jp/
そとん壁のメリット・デメリット
そとん壁のメリット
① メンテナンス性が高い(塗り替えリフォームが不要)
そとん壁は無機質材料のため、紫外線で劣化しにくく、色あせしにくいのが特徴です。一般的な窯業系サイディングや左官外壁のジョリパットのように、10〜15年ごとの塗装メンテナンスが前提ではありません。
長期的に見ると、ランニングコストを抑えられる外壁材です。このお宅も、外壁の塗装リフォームが不要というメリットが採用理由の主要因でしたが、17年経った今でも、外壁塗装リフォームは必要ありません。ただし、汚れている部分はあるので、それが気になるようなら、足場を架けて洗浄する必要はあります。外壁材以外の軒天・破風などは塗装の必要はありますし、屋根材のリフォームの必要もあります。
築17年の結果から、そとん壁は、リフォーム費用を最小限にできる建材ということで間違いはありません。新築時に、そとん壁・ガルバリウム鋼板外壁材・杉板等のリフォームスパンを伸ばせる外壁材を使うと、初期コストは窯業系サイディングと比較して高くなるものの、リフォームスパンは伸ばせるので、施主にとっては、良い外壁材であることも間違いありません。
しかし、新築した工務店にとっては、外壁塗装リフォームが、ほぼ無くなってしまう工務店殺しの材料であるとも言えます。長寿命外壁材は、私が提案したのですから、文句は言えません。しかし、外壁塗装リフォームが減っていることは、正直痛いです。
② 汚れが付きにくく、目立ちにくい
表面が多孔質で、かつ意匠的に凹凸があるため、雨だれや汚れが分散されやすい特徴があります。
ただしここが重要で、「まったく汚れない」わけではありません
特に、
- 張り出しバルコニーの袖壁
- 軒の出が少ない外壁面
- 北面・東面 (この2面は、日射時間が少なく乾きにくいので汚れやすい)
などは、汚れが出やすい傾向があります。
③ 防火性・耐久性が高い
主成分が無機質のため、
- 燃えない(不燃材料)
- 劣化しにくい
という特徴があります。
長期にわたって外壁としての性能を維持しやすい材料です。
④ 自然素材ならではの質感
工業製品の外壁にはない、
- やわらかい陰影
- 手仕事の風合い
があり、経年変化も含めて楽しめる外壁です。和を感じさせる素材です。室内の無垢材・造作建具・造作家具との相性も非常に良いです。
そとん壁のデメリット
① 初期コストが他の外壁材よりも高い
窯業系サイディングを初めとして、ガルバリウム鋼板や杉板などの乾式工法と比較しても、左官が塗る湿式工法である「そとん壁」は、手間が掛かるため高くなります。当社では、外壁下地210mm付加断熱を採用するようになってから、断熱気密工事費用に予算が掛かるようになり、そとん壁は採用できなくなりました。
ただ、前述の通り、外壁塗装リフォームが不要なため、生涯トータルコストで見ると、窯業系サイディングならば、逆転するケースも多いと思います。そとん壁に興味があるお金のある人は、外壁下地210mm付加断熱以上を標準仕様とした上で、採用を検討すべき材料です。他の外壁材よりも値段が高いのは、価値があるので値段が高いということです。
② 職人の技術によって仕上がりが変わる
塗り壁なので、施工品質=職人の腕
です。
- ムラ
- 厚みのばらつき
- 仕上げの粗さ
などが出る可能性もあります。経験のある工務店選びが非常に重要です。
③ ひび割れ(ヘアクラック)は入る
自然素材の塗り壁なので、微細なひび(ヘアクラック)が入ります。入る可能性があるのではなく、確実に入ります。
構造的な問題ではないケースがほとんどですが、神経質で気になる方にはデメリットになります。そのような方は、何が何でも採用してはいけません。
④ 汚れやすい部位がある(設計による外観形状の影響を受ける)

- 張り出しバルコニー
- 軒ゼロ住宅
- 北面・東面等、日射が少なく乾きにくい面
などでは、汚れが出やすい外観です。外壁が雨掛かりになりやすく、汚れやすい軒ゼロ住宅との相性は、最悪だと思います。外壁材の性能でなく、設計により、屋根の軒を充分だしておくなど、汚れにくい外観にしておく必要があります。
⑤そとん壁を、ある程度理解している人が使うべき材料
- 左官職人が手仕事で行うため、均一性からは遠い材料
- 塗り壁なので、必ずヘアクラックが入る
- 汚れやすい部分がある
という理由から、杉板外壁材と同じくらい施主を選ぶ材料だと思います。そとん壁を、ある程度理解している人が使うべき材料であり、神経質な人には全く向いていません。
今回の高圧洗浄でも、外壁表面の粒は多少落ちますので、心配性の方には使えないと思いました。
神経質な人に向いている材料は、均一性が高く、一番市場で流通している窯業系サイディングだと思います。ただし、窯業系サイディングは、10~15年に1度程度、外壁塗装は必要であり、塗装の時期を逃がすと、基材まで傷むので、全面張り替えの可能性が高くなる外壁材です。かつ、窯業系サイディングは、商品が廃盤になるスパンが早いです。部分的に傷んでしまった場合などは、廃盤になっている可能性が高く、部分張り替えは出来ない可能性が高いと思います。
そとん壁の洗浄実験1回目 (2024年4月26日)
2024年4月26日(金)、9時くらいから、施主Aさんと2人で、そとん壁の洗浄実験を行った。
結論を先に書くと、「サポートジアーナM(除菌洗浄剤)+ブラシで擦りながら散水ホース」では、汚れは落ちなかった。
1.まずは、添付した「サポートジアーナM(除菌洗浄剤)の使用方法」通りに、サポートジアーナと水を1:2で希釈しました。

2.洗浄箇所に事前に散水ホースで充分に水を掛けました。

3.噴霧器で、洗浄箇所に1.で作った液体を噴霧

4.洗浄剤を散布後、30分以上経過した後で、散水ホースで水を掛けながら、ナイロンブラシで洗い落しました。その時、汚れと思われる黒い水が流れました。

5.事前に、メーカーの高千穂様に聞いたところ、「散水ホースを使えば、家庭用高圧洗浄機を使わなくても汚れは落ちる」ということだったので、高圧洗浄機は使いませんでした。黒い汚れた水が流れたものの、作業後は、綺麗になりませんでした。
家庭用高圧洗浄機を使わなかった、もう1つの理由は、家庭用洗浄機でも強く設定すると、車の塗装を剥がすほど強力であること。家庭用洗浄機を使うなら、上手く設定しないと、そとん壁の表面がポロポロ落ちたりすることも、あり得ると考えていたからです。

6.作業後。綺麗になりませんでした。

7.その後、私は「家庭用高圧洗浄機で、加減しながら洗浄すれば、外壁材を傷つけずに汚れは落ちるのではないか?」と考え、施主Aさんに、「家庭用高圧洗浄機を持っているので、もう一度、高圧洗浄機を使って、洗浄実験してみませんか?」と相談していました。
8.2年後に再び、以下の洗浄実験を行いました。
そとん壁の洗浄実験2回目 (2026年3月21日)
2026年3月21日(土)10時くらいから、施主Aさんと一緒に作業を始めました。
結論から書くと、綺麗になりました。
高圧洗浄機を使い、最も強い水圧の直噴ノズル(拡散ノズルではない)で、外壁からノズルまで、30㎝程度の至近距離で水を掛ける方法です。ただし、外壁の表面の粒子は、多少落ちますので、頻繁には行わないほうが良いと思いました。10~15年に1度、高圧洗浄するのが良いのでは、という結論です。
1.まずは、洗浄箇所に事前に散水ホースで充分に水を掛けました。

2.次に、サポートジアーナM(除菌洗浄剤)を散布する場所と、散布しない場所の、それぞれの結果の違いが分かるように、養生テープで縦に見切りを付けました。
3.向かって右側に、除菌洗浄剤を散布しました。

4.高圧洗浄機は、ヴィットリオというメーカーのZ3-755-20という仕様です。ホームセンターで売っている家庭用で、塗装職人が使うプロ用の高圧洗浄機ではありません。

5.私の家庭用高圧洗浄機は、取替ノズルが2種類あります。バリジェットノズルは、先端のノズルヘッドを回すことで、「直噴」から「拡散」まで切り替えができるどちらかというと、水圧が低い、最も用途が広いノズル。サイクロンノズルは、高圧の直噴水を回転させながら、噴出させるノズルで、汚れやこびり付きが酷いモノを洗浄するノズルです。


6.最初に向かって左側の、除菌洗浄剤を散布していない所を、高圧洗浄機で洗い始めました。拡散タイプのノズル、バリジェットノズルを使いましたが、汚れは落ちませんでした。
7.次に汚れやこびり付きが酷いモノを洗浄する、直噴のサイクロンノズル(水の設置面が一番小さく強力)を使い、外壁からノズル先端までを30センチ程度に近づけると、汚れが落ちるようになりました。


8.サイクロンノズルは、細いピンポイントの直噴で、手を差し出すと、怪我をするほど痛いです。そのくらい強力な水圧で落とさないと、そとん壁の汚れは落ちませんでした。

9.汚れの落ちやすさは、汚れの状態と、そとん壁の仕上げ形状にも関係すると思いました。この建物は「掻き落とし仕上げ」ですが、表面に細かい凹凸があるので、凹み部分を洗浄するのが難しいのです。高圧洗浄機で凹み部の汚れを掻き出さないと、汚れは落とせないようです。掻き落とし仕上げは、クラックは目立ちませんが、汚れは落としにくいと思いました。

10.向かって左側の除菌洗浄剤を散布していない場所、1.5畳程度を洗浄するのに30分程度掛かりました。

11.次は、向かって右側の除菌洗浄剤を散布した場所を洗浄しました。ほんの気持ちだけ、洗浄剤を散布していない左側よりも、汚れが落としやすいように感じました。個人的には、サポートジアーナM(除菌洗浄剤) は、値段も高いため、必要ないように感じました。



12.洗浄剤の使用の有無に関わらず、強い水圧で高圧洗浄するため、そとん壁の表面の粒子は、多少落ちます。落ちた程度は、個人的には、心配にはならない範囲でした。施主Aさんにも確認したところ、同じ意見でした。

13.2年前の洗浄前と比較すると、かなり汚れが落ちて、綺麗になったことが分かります。


そとん壁を使う場合、どのような形状の家が汚れにくいのか?
「どのような形状の家が汚れにくいのか?」は、他の外壁材と同じです。
屋根の軒を充分出して、外壁に雨が当たりにくくすることが大切だと感じています。軒の長さは、外壁の汚れにくさ「のみ」を考えると、出ていれば出ている程良いです。具体的には、外壁仕上げから、軒先まで600mmくらい出せると、外壁は汚れにくいと思いました。
軒の出ていない、「軒ゼロ住宅」は、雨に濡れやすいため汚れやすく、論外です。
また、外壁から張り出したバルコニーの袖壁は、袖壁上に屋根が無くて雨に当たりやすいため、傷みやすいです。そのため、張り出したバルコニーは無くしてしまったほうが良いと思います。
まとめ
そとん壁は、非常に優れた外壁材でありながら、設計と使い方を間違えると弱点が出る材料です。
そして今回の結論は明確です。
洗浄について
- 洗浄剤よりも水圧が重要
- 高圧洗浄機でないと落ちない
- ただし強すぎると表面は削れる
高圧洗浄機は、正しく使えば問題なし。
汚れが少ないうちに洗浄できれば、より簡単に汚れは落ちるとは思いますが、頻繁に高圧洗浄すると、外壁は傷むと思います。10~15年に1度の高圧洗浄が無難だと思います。
外壁としての評価
- メンテナンス性は圧倒的 (外壁塗装の必要がない)
- 屋根塗装等をする時に足場を架けるので、その時外壁洗浄や樋塗装は行う、
- 外壁リフォーム需要が無くなるので、工務店的には「工務店殺し」
- 新築時の値段は高いものの、外壁リフォームの必要が減るので、施主にとっては非常に優秀
最も重要なこと
設計により、外壁に雨を掛けにくくすることが重要
- 軒
- 形状
- 雨の当たり方
ここを間違えなければ、そとん壁は非常に良い外壁材です。
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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