2025-10-19
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外壁材「モカウッド」、超長期使用できる燻煙処理木の外壁──モデルハウスで見つけた快適空間のヒント その3

モカウッドが途中まで貼られたところ

10月1日〜2日に開催された「2025新住協全国研修会@長野市」。住宅見学バスツアーの2軒目に訪れたのは、山本建設さんの社屋兼住宅でした。

この建物は、これから仕上げ工事に入る現場で、断熱と気密施工の途中段階を見ることができる貴重な場所。現場での工夫や施工精度を共有できる、まさに“実践的な技術交流の場”でした。

その建物の一部に、無垢の木の外壁がすでに貼られていて、「モカウッド」という無垢木材が使われていました。


このモカウッド、カタログには「一生腐らない耐久性」「反らない寸法安定性」と書かれており、とても気になる外壁材です。

今回は、ノンケミカルでの熱処理木材「モカウッド」について紹介します。新築時の塗装はもちろん、塗り替えの必要もない、朽ちる要素の無い木材とのことです。

外壁塗装リフォーム回数を減らせる外壁材とは?

外壁材の選定には、その工務店の考え方や家づくりへの姿勢がよく表れます。

外壁は建物の中で最も面積が大きく、外観の印象を決める部分。見た目が美しく、少し珍しい素材を使えば、それがそのまま家の個性にもなります。

さらにその素材が「長持ちして、ほとんどメンテナンスがいらない」ものなら、住まい手にとって大きなメリットです。

この2つを兼ね備えているのが、今回紹介する「モカウッド」と言えそうです。

モカウッドのほかにも、比較的メンテナンスの回数を減らせる外壁材として次のようなものがあります。

  • 杉板
  • ガルバリウム鋼板
  • しらすそとん壁
  • タイル

これらの外壁材は、現在木造住宅のシェア約8割を占める窯業系サイディング(約15年ごとに塗装リフォームが必要)に比べると初期費用は高めですが、長持ちしやすいのが特徴です。

窯業系サイディング


ただし、メンテナンス回数を減らせる外壁材は総じて、時間が経つと色が変わったり、汚れが出やすいため、経年変化を理解できない住まい手が採用すると、クレームになりやすい素材でもあります。言い換えると、こうした外壁材は“建築が好きな人向け”の素材です。

一方で、シェア約8割で国民的外装材とも言える窯業系サイディングは、初期性能が高くコストも抑えられますが、定期的な塗り替えが必要になります。ただしこれは、建築業界にとってはリフォーム需要を生み出す意味で“重要な外壁材”とも言えます。

窯業系サイディングは、一次防水性能(=外壁の一番外側で雨を防ぐ力)が高く、もし、二次防水材である透湿防水シートの施工に不備があっても、外壁材そのものとシーリングの防水力で雨漏りを防いでくれる初期性能が高い外壁材です。

窯業系サイディングは、木造住宅外壁材の8割を占めているため、近所でもたくさんの施工を目にしますが、外壁下の透湿防水シートの施工が粗い現場が多いように感じます。その割に、窯業系サイディングの漏水事故が多いという報告を聞いたことはありません。窯業系サイディング自体の防水仕様が優れているからだと思っています。そのおかげで、漏水事故が無く、助けられている住宅会社も多いのではないでしょうか?

対して、モカウッドやガルバリウム鋼板、しらすそとん壁、タイルなどのメンテナンス回数を減らせる外壁材は、窯業系サイディングと比べて、外壁本体の防水性が頼りないため、外壁材の下に雨水が侵入しても、内側の透湿防水シートでしっかり防水することが前提になります。メンテナンス回数を減らせる外壁材は、見えない部分の施工精度が特に大切です。

窯業系サイディングについては、いろいろとブログを書いています。

モカウッド7つの特徴

モカウッドは、長野県産の信州カラマツや赤松を独自の「減加圧熱処理」で仕上げた木材です。
薬剤を一切使わず、熱と圧力の調整によって、高耐久・高寸法安定性を実現しています。

香りを嗅ぐと、焙煎されたような独特の香ばしさがあり、断面を見ると木の芯まで処理されているのが分かります。

主な特徴は以下の7点です。

  1. 超長期の耐久性
  2. 腐朽しにくい構造(朽ちる要素がほとんどない)
  3. ノンケミカルな熱処理
  4. 新築時の塗装不要
  5. 将来的な塗り替え不要
  6. 寸法の安定性が高い(反り・ねじれが少ない)
  7. 外壁・ウッドデッキ・内装材・板塀・サッシなど幅広い用途に対応
モカウッド

超高耐久外壁材は「造り手の首を絞める」素材でもある

モカウッドは、木の芯まで燻煙処理されているため、非常に長持ちします。新築時の塗装も、完成後の塗り替えも不要。色が経年変化することを理解できれば、木の外壁として、他のどんな外壁材と比べても理想的な仕様だと思います。

ただし、こうした超高耐久外壁材は、住まい手にとっては嬉しい一方で、造り手(工務店)にとっては、実は複雑です。


というのも、窯業系サイディング外壁材では15年ごとに塗り替えリフォームが必要ですが、モカウッドのような超高耐久外壁材ではその機会がほとんどなくなるからです。

当社でも、ガルバリウム鋼板外壁・杉板外壁・しらすそとん壁などを採用していますが、どれも長持ちする素材です。そのため、窯業系サイディングのように定期的な外壁リフォームが発生することは、ほとんどありません。

つまり、こうした超高耐久外壁材をお客様に勧めることは、住まい手にとっては「新築コストは高いものの、長い目で見るとお得で安心」な選択となりますが、工務店にとっては「外壁塗装リフォーム工事の機会を減らす」=自分たちの仕事が無くなり、首を絞める選択でもあります。

窯業系サイディングを採用している住宅会社は、定期的に外壁塗装リフォームが発生します。その仕組みのほうが、企業としての継続性を考えれば理にかなっています。


しかし、私は「完成後にお金のかかりにくい、長持ちする家を造る」ことが良いと考えて、家造りしています。 これが、外壁材の選定には、その工務店の考え方や家づくりへの姿勢がよく表れると思う理由です。

モカウッド外壁材と杉板外壁材の価格比較

右の色の濃いのが外壁材 モカウッド:本実 15×144×4000
断面。木材芯まで、燻煙処理されている。右が外壁材

「モカウッド外壁材(信州カラマツ)」と「当社で使っている杉板外壁材(八溝材)」の価格を比較してみます。

モカウッドは購入時点の価格、杉板外壁材は塗装までの概算です。

  1. 規格サイズを見ると
     - モカウッド:本実 15×144×4000
     - 杉板:縦貼り押縁仕上げ 18×175×4000、押縁15×40×4000
  2. 木材価格の比較
     モカウッドは、杉板(押縁を含めて)の約3.1倍の価格。
     ただし杉板は当社購入時点では無塗装で、モカウッドは購入時点で減加圧熱処理されており、新築時も塗装不要・再塗装も不要です。
  3. 総コスト比較
     杉板を両面1回ずつオイルステイン塗装した場合と比べると、モカウッドは、杉板の約1.8倍の価格になります。※大工の外壁木材を貼る施工費は同じと仮定します。

木の芯まで熱処理されているモカウッドは、新築時の塗装及び塗り替えが不要だと考えれば、初期コストが高くても、長期的にはモカウッドのほうが経済的と言えるかもしれません。私は、予算があればモカウッドを使いたいと思います。

モカウッドとエステックウッドの違い

モカウッドと似た熱処理木材に「エステックウッド」があります。エステックウッドはモカウッドよりも早く登場した製品で、どちらも薬剤を使わずに耐久性を高めた木材です。


違いを簡単にまとめると以下のようになります。(チャットGPTに聞きました)

項目モカウッドエステックウッド
処理方法減加圧熱処理(独自技術)高温乾燥処理(一般的な熱処理)
主な原材料信州カラマツ・赤松スギ・ヒノキなど国産材
薬剤使用なし(ノンケミカル)なし
処理の深さ木の芯まで処理表層中心の処理
寸法安定性非常に高いやや反りやすい
色の変化ダークブラウン〜シルバーグレー明るめブラウン〜グレー
価格帯高価(プレミアム材)中価格帯で入手しやすい
モカウッドとエステックウッド比較表

どちらも優れた素材ですが、モカウッドはより深部まで処理されており、寸法安定性と耐久性が特に高いのが特徴です。

エステックウッド

まとめ

モカウッドは、木の温もりや経年変化を楽しみながら、塗り替えの手間を省きたい人にぴったりの外壁材です。長期的なメンテナンスコストを抑えたい方や、自然素材を活かした外観を求める方に向いています。

「外壁も長く愛着を持って使いたい」という方に、ぜひ知っておいてほしい素材だと思います。

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吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

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