Q1.0住宅「小山の家」夏の温湿度実測結果──お客様インタビュー:高断熱住宅の夏の暮らしと除湿器活用実例

お引渡しをして3年目の夏を迎えた、Q1.0住宅 「小山の家」。真夏の温湿度変化を実測し「どれくらい快適な室内環境になっているのか?」を確認しました。
目次
概要(調査目的・期間・特徴)
真夏の温湿度を実測することで良い点を再確認できるだけでなく、さらに快適にするための改善点も浮き彫りになります。
温湿度計は、当社が設置したものではなく、お客様が常時設置しているスイッチボット温湿度計です。
2025年8月1日(金)~8月31日(日)の31日間の温湿度データを送って頂きました。
その中から、終日最も暑く最高外気温が40℃を超えた 8月5日 のデータを選び、室内各所の温湿度推移をグラフ化して分析しました。測定期間の全てをグラフ化するのではなく、最も暑い日のみに絞って情報を抽出し、見やすく整理しています。
この住宅は、総2階ではなく下屋のある住宅です。総二階の家と比べて、空気が動きにくい下屋のある住宅は、温湿度を均一にしづらい環境ですが、下記のような快適な環境になっています。
特徴的なのは、新築から3年目の今年の夏から、除湿器を使って湿度を調整している点です。
除湿器を導入したきっかけや、実際に使ってみた住み心地について、お客様へのインタビュー内容もあわせてご紹介します。
実測結果
はじめに、ザックリと実測結果をお伝え致します。
2025年8月5日(火)のQ1.0住宅 「小山の家」夏の温湿度実測結果
- 居室(床下を除く)の平均室温:27.2℃
- 居室(床下を除く)絶対湿度の平均:13.6 g/m³
一般に、夏期の快適な環境は「室温26〜27℃くらい、絶対湿度12〜15g/m³くらい」とされます。本住宅は居室平均室温 27.2℃で快適範囲、居室平均湿度13.6g/m³は、快適範囲の中間値です。冬の実測結果と同じように快適な室内になっていました。
2025年8月5日(火)・小山市の天気と外気温
- 天候:終日晴れ、雷雨なし
- 最高外気温:40.8℃(10:15)
- 最低外気温:27.5℃(5:00)
外気温の変化は次の通りです。
朝5時:27.5℃ → 7時:30.4℃ → 9:45頃:40.1℃ → 10:15‐11:30頃:40℃以上が約1時間強続く → 午後14時:39℃ → 17時:36.9℃ → 夜22時:32.4℃ → 23:45:30.7℃
朝7時〜23時45分までほぼ30℃以上。午前中には40℃を超える時間帯もあり、終日非常に暑い日でした。
午前中の10:15分に最高外気温40.8℃を記録した理由は、外部の温湿度計を東面の郵便ポスト上に置いているからです。

測定条件まとめ
項目 | 内容 |
測定期間 | 2025年8月1日 0:00 ~ 8月31日 24:00(31日間) |
グラフ作成対象日 | 8月5日 0:00 ~ 24:00(1日間) |
天候 | 晴れ・雨なし |
対象人数 | 大人2人・子供2人(計4人) |
延床面積 | 97.71㎡(約29.6坪) |
温熱性能 | Q値 0.97 W/㎡K、UA値 0.34 W/㎡K、C値 0.5 cm²/m²(断熱・気密性能) |
温湿度計設置場所 | 外部1箇所・室内8箇所(合計9箇所) |
ドアの取扱 | 基本的に終日開放 |
日射遮蔽 | 電動外付ブラインド、外付ロールスクリーン、ハニカムサーモスクリーンなどを多層で使用 |
エアコン冷房 | 1 台(2階ホール壁掛け、10畳用)24.5℃設定。運転は弱風または微風、24時間連続運転 |
エアコン補足 | 床下エアコンは暖房専用のため、冷房運用には使用していない |
送風機 | サーキュレーター設置。位置と方向あり |
除湿器 | 基本モードは“湿度設定モード”(湿度50%)。就寝時は音を静かにするため運転を弱。現在は2階ホールに設置。 |
温湿度計の設置位置
温湿度を測定した9箇所は以下の通り
- 外部(東面玄関ポスト上)
- 1階キッチン
- 1階リビング
- 1階玄関ホール
- 1階和室床下(南側の床ガラリの下)
- 2階ウォークインクロゼット
- 2階ホール
- 2階子供室
- 2階寝室
室内各所の温湿度と外気温グラフ
背景の黄色が日照時間です。日照時間は気象庁の小山市のデータです。
日差しと共に、外気温は上昇して7時に30.4℃、10時15分~11時30分までの1時間強が40℃以上、23時45分でも30.7℃の暑い日でした。
一方、オレンジ色の室温は、外気の影響を受けずに、27℃くらいで、ほぼ一定になっています。








一日の平均室温について


- 上記グラフを見ると、室温は、ほぼ均一であると言って良いと思います。
- 居室(床下を除く)の平均室温:27.2℃、床下を含んだ平均室温:27.3℃
- エアコンのある2階ホールの平均室温が26.9℃で一番低く、一番平均室温が高いのが、2階子供部屋の27.7℃です。その差は0.8℃。
- エアコンから近いところほど室温が低めで、一番遠い1階和室床下(基礎内部)が27.8℃と一番高くなっています。しかし、床下と言えど、平均室温27.3℃から0.5℃高いだけです。
- 1台のみ稼働している壁掛けエアコンは、2階吹抜けに面するホールの壁に付いています。

室温が、ほぼ均一である理由?

- 高い断熱・気密性能:性能値は上記測定条件参照
- エアコン冷房:エアコンの設定温度と稼働時間は上記測定条件参照
- 吹抜けを含んだ開放的な間取り
- ドアを、基本的に終日開け放して生活していること
- 日射遮蔽していること
これらが組み合わさることで、温度ムラを抑えています。これは、当社の他の施工例でも行われていることです。
相対湿度と絶対湿度の違い
絶対湿度は室温に左右されずに実際の水分量を把握できるので、湿度管理や結露防止の判断に便利です。
指標 | 意味 | 特徴 |
---|---|---|
相対湿度(RH) | その温度で空気が保持できる最大水蒸気量に対して、どれくらい含んでいるかを%で表す | 温度が上がると下がる/下がると上がる(同じ水蒸気量でも変動する) |
絶対湿度(AH) | 空気1㎥あたりに含まれる水蒸気の質量(g) | 温度に左右されない。実際の水分量を把握できる |
各箇所の絶対湿度の平均値
居室(床下を除く)平均絶対湿度:13.6 g/m³、床下を含めた平均絶対湿度:13.9 g/m³。
本住宅は、居室の平均室温27.2℃、居室平均湿度は13.6g/m³で快適範囲に収まっています。一般に、夏期の快適な環境は「室温26〜27℃、絶対湿度12〜15g/m³」とされます。
1階和室床下の絶対湿度は16.1g/m³です。この部分のみ絶対湿度が高い理由として、床下の基礎内に置いてある温湿度計の直上に、洗濯物を干している場合があること。また、温湿度計が置いてある位置が建物の端で、他と比べて通気も良くないことが考えられます。床下結露する心配はありません。


相対湿度について
相対湿度もグラフを作ったので掲載しておきます。


除湿器
お客様が設置している除湿器は、三菱 MJ‑PV250WX‑W。コンプレッサー式除湿器です。現在は2階ホールに設置。基本モードは“湿度設定モード”(50%)。就寝時は音を静かにするために弱モードで24時間連続運転しています。
除湿器については、下記のお客様インタビューをご覧ください。


お客様インタビュー:高断熱住宅の夏の暮らしと除湿器の活用
温湿度データをお客様に送っていただき、グラフ化して室内環境を把握。そのうえで気になった点を電話でインタビューしました。真夏の湿度調整として除湿器を導入したきっかけや、実際の使い心地について伺った内容をご紹介します。
Q1. 室内ドアは普段どのようにしていますか?
A. 2階のトイレ以外は、ほとんど開けています。2階トイレは開き戸で、開けていると寝室に入れないので閉めています。玄関ホールの引き戸は、時々閉めることもあります。
Q2. 2階子供室の平均室温は27.7℃、寝室は26.7℃と1℃違います。理由は何だと思いますか?(どちらもドアを開けて、天井換気扇は運転の状態)
A. どちらもドアを開け、ホールから空気を入れる個別ファンは回しています。1℃の差は気づきませんでしたが、理由として考えられるのは、ホールエアコンの両サイドのファンの向きを寝室側にしているからだと思います。以前、寝室が暑く感じたため、寝室側に風が行くように設定しています。
Q3. 居室(床下を除く)の平均室温27.2℃、絶対湿度13.6g/m³です。これらは快適範囲ですが、さらに温度や湿度を下げたいと思いますか?
A. 特に不快に感じることはありません。強いて言えば、風呂上りに少し暑いと感じるくらいです。
Q4. 除湿器を導入したきっかけを教えてください。
A. 昨年、少し蒸し暑く感じたので購入しました。もともと除湿器に興味もありました。
Q5. 除湿器を導入する前の夏の様子はどうでしたか?エアコンとサーキュレーターで湿度を下げる方法は検討しましたか?
A. 去年の温湿度の数字は覚えていませんが、今よりは、少しだけ蒸し暑く感じました。子供が小さいため、サーキュレーターを置くと悪戯してしまうので使えません。ですから、エアコン+サーキュレーターで湿度を下げる方法は考えていませんでした。冬だけは、脱衣室にサーキュレーターを置いて湿気を分散しています。
Q6. 除湿器(三菱 MJ-PV250WX-W)を選んだ理由は?
A. ネットで調べ、コンプレッサー式がコスパが良く、種類が豊富で一般的な方式だったので選びました。
その中でも、タンク容量が最大24.5Lと多く排水回数が少なくて済むこと、湿度設定ができることが決め手でした。パワフルモードで素早く湿度が下がるのも便利です。
ただ、除湿時の空気は暖められて戻るので、除湿器周囲の温度は少し上がるかもしれません。
Q7. 排水はどのくらいの頻度で行っていますか?
A. 1日1回、朝に捨てています。昼は湿度設定50%モード、夜は音が気になるので弱運転にしています。24時間連続運転です。
Q8. 床下の湿度がやや高めです。ガラリは全て開いていますか?
A. 1階に7か所ある床ガラリは全て開いています。和室床下だけ湿度が高いのは、直上に洗濯物を干すことがあるからかもしれません。(和室の温湿度計は基礎内部の端にあり、通気も良くない場所のためやや湿度が高いのかもしれません)
Q9. 夏の日射遮蔽はどうしていますか?
A. 外付けスクリーンと室内ハニカムをすべて降ろしています。日射取得はしていません。日中は不在が多く、調整が難しいため、完全に遮蔽する方がシンプルで良いと考えています。
Q10. 日射遮蔽するとエアコンがサーモオフすると思いますが、長時間オフになることはありますか?
A. どのくらいの時間サーモオフしているかは分かりません。
Q11. 夏はサーキュレーターを使っていますか?
A. 現在は、子供が悪戯するため置いていません。子供が大きくなったら、1.2階で空気が移動するように使うかもしれません。
まとめ
- Q1.0住宅「小山の家」の夏の温湿度は快適範囲にあり、お客様も快適に感じていることが分かりました。
- 高断熱住宅において、エアコン冷房と除湿器を併用することで、夏の湿度コントロールが非常に有効であることが確認できました。
- 夏の湿度管理は、日射遮蔽をきちんと行ったうえで、除湿器を活用することも選択肢としてシンプルかつ効果的だと思いました。
冬の温湿度実測結果
冬の温湿度実測結果は施工例にあります

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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