家に落雷したらどうする?実際の対応と落雷リフォームの記録

「家に雷が落ちて、壁に穴が空いてしまった!」——7月23日(水)の夕方、施主から一本の電話が入りました。
落雷時は外出中で、帰宅して玄関を開けた瞬間に、室内が焦げ臭かったとのこと。外装材には穴があき、さらに複数の住宅設備機器が故障していました。
今回のブログでは、落雷直後にどこへ連絡すべきか、そしてリフォームが完了するまでの一連の流れを紹介します。
今回、落雷による住宅設備機器と分電盤の交換を担当した、当社協力会社の電気屋さんによると、同日、このお宅から20キロ程離れたお宅でも、家に落雷があり、住宅設備機器が破損したそうです。
家に落雷することは稀ではありますが、決して他人事ではありません。
宇都宮市は、春から秋にかけて、雷の数が日本一多い地域です。雷と宇都宮市との関係についても説明します。
目次
施主から落雷の連絡。まず基本の3か所に電話してもらった

「自分が建てた家に雷が落ちた」と施主からの電話を受け、動揺しつつも冷静に状況を確認しました。やり取りの中で分かったのは次のことです。
- 帰宅すると、玄関を開けた瞬間に焦げ臭さを感じた
- 特に分電盤付近が焦げ臭い
- 外壁に穴が空いたとの報告 → 実際は軒天に穴が発生
- 蓄熱式暖房機が突然作動した
- 分電盤が衝撃で浮き上がりガタついている
- 分電盤内部のIH専用ブレーカーが破損
- テレビ、インターホン、吹抜けのシーリングファンが故障
火災には至っていませんでしたが、念のため 消防署・東京電力・保険会社の3か所に施主本人から連絡していただきました。
焦げ臭さは火種が残っている可能性があるため、専門機関の確認が不可欠と判断したからです。幸い消防署と東京電力が当日に来て、状況確認を行ってくれました。私は翌朝、現地確認に伺うことにしました。

分電盤とは何か?

落雷の衝撃で分電盤が浮き、内部スイッチが破損しました。

分電盤とは、電力会社から送られてきた電気を各部屋へ分配する装置です。内部にはブレーカーや漏電遮断器が備えられており、安全に電気を使うための心臓部といえます。今回は丸ごと交換することになりました。
分電盤については、過去に以下のようなブログを書いています。
翌朝の現地確認と応急処置

7月24日(木)の朝に現地を訪問し、室内外を点検しました。軒天部分のケイカル板と下地木材が破損しており、このままでは雨水が侵入する恐れがあります。


職人の手配に時間がかかるため、まずは私自身が二連梯子で上り、防水シートを仮に張って穴を塞ぎました。高所作業は危険を伴うため、梯子は会長(父)に押さえてもらいながら行いました。


電気屋さんと一緒に訪問したかったのですが、上記の落雷した他のお宅を訪問してから来るというので、現地確認日は入れ違いになりました。

落雷箇所である軒天の補修

後日、1.足場を架けてから→2.大工さんが下地を補強して、ケイカル板を貼り→3.ケイカル板廻りの隙間をシーリングして塞いで→4.ケイカル板の塗装→5.足場を解体しました。
このような小さな工事でも、1日2時間程度の作業時間ですが、5日間の作業になりました。

落雷して誤作動した蓄熱式暖房機は使えるのか?メーカーに問い合わせた

落雷により、急に蓄熱式暖房機が作動しており、猛暑の上に暖房が掛かっていました。蓄暖の専用ブレーカーがOFFになっていなかったので、落雷の衝撃で電源が入ったようです。
現在の住まい手は、先月から施主のお孫さんご家族になっていたのですが、冬が終わったら、蓄暖用の専用ブレーカーをOFFにしておくのを、知らされていなかったようです。
蓄熱式暖房機は、ユニデール社の7KW。このお宅は、今年で築22年目ですが、壊れずによく頑張ってくれました。蓄熱式暖房機は構造が単純なので故障は少ないです。
蓄熱式暖房機は、2011年の東日本大震災までは、広く普及していましたが、現在では、メーカーも撤退して、日本及び近隣国では作られていないようです。
ユニデール社製蓄熱式暖房機の「問い合わせ窓口的な会社」は、かろうじて残っていたので、電話をして、落雷して急に暖房が入った経緯を説明し、今後使って良いか?を聞きました。
電話に出てくれた方によると、メーカーは撤退しており部品も無いため、修理は出来ないこと。また、壊れている可能性があるので、使わないほうが無難であるとのことでした。
施主には、落雷して誤作動した蓄熱式暖房機を使わないように、以下のように説明しました
- 蓄熱式暖房機は故障している可能性があるため、今後は使わないほうが良いと思う。
- 蓄熱式暖房機の温風が発生しない使い心地が、エアコン暖房よりも優れている部分があることは分かるが、蓄熱式暖房機の代わりに、燃費の良いエアコン暖房が良いと思う。(蓄熱式暖房機が廃れて、燃費の良いエアコン暖房機が主流になった社会的背景は、下記の「蓄熱式暖房機とは」に書きました。)
- 22年前に建てたFPの家は、当時、国内最高レベルの高断熱高気密住宅であり、エアコン暖房でも充分に暖かく過ごせる。
- 蓄熱式暖房機は、使わずにそのままにしておいても良いし、撤去もできる。
結果として、蓄暖は撤去して、既存エアコンでエアコン暖房をすることになりました。
蓄熱機暖房機を撤去処分して、空いたスペースを収納にした

蓄暖を撤去処分して、収納にする見積を提出。施主の合意を得て施工しました。
蓄暖を撤去すると、通常は壁からは電気配線が出ている為、配線を撤去して、穴を塞ぐ必要があります。蓄暖の撤去は、電気屋さんが解体までしてもらい、一緒に私のトラックに積んで処分場に持っていきました。

壁の珪藻土を剥がして→巾木が外せなかったため、壁からの出を巾木と同じにするために、12mmの合板を貼り、下地を平らにして→12mmのパイン材の羽目板を横貼りして→21mmのシナランバーコアの棚板を2段造り→ステンレスの棚柱を付けて納め(ここまでが大工工事)→オスモ社の自然塗料を2度塗りして仕上げました。(塗装工事)

蓄熱式暖房機とは
- 深夜電力を利用して、内部の蓄熱レンガなどを高温に加熱し、その熱を日中放出して暖房する仕組み。
- 電気料金が「昼間より夜間が安い」という電力会社の料金プランを前提に普及しました。
- 2000年代までは「オール電化住宅」の代表的な暖房機器で、多くのオール電化住宅で採用されていました。
●東日本大震災前の状況
- 東京電力や東北電力などでは「深夜電力割引プラン」が用意されており、オール電化住宅に蓄熱暖房機を導入するケースが多くありました。
- 「環境に優しい」「燃料補給が不要」「メンテナンスが少ない」などの理由で、寒冷地を中心に、全国で広まりました。栃木県内でも、オール電化住宅には、蓄熱式暖房機が、セットで付けられていた印象です。
●東日本大震災後の変化
(1) 原発停止による電力不足
- 2011年3月の震災と福島第一原発事故で、全国的に原子力発電が停止。
- 電力の供給が逼迫し、ピーク時の消費電力を減らすことが重要になりました。
- 蓄熱暖房機は夜間に大電力を消費するため、電力会社からすると「負担の大きい機器」になってしまいました。
(2) 深夜電力料金プランの見直し
- 電力会社は「夜間割安」のプランを縮小・廃止。
- これにより「夜間に安い電力を使って暖房する」という蓄熱暖房機のメリットが失われました。
- 結果として、蓄暖のランニングコストが高騰。
(3) 代替暖房機器として、エアコンの普及
- 震災以降、省エネ性能が大幅に向上したエアコン(ヒートポンプ暖房)が主流に。
- 少ない消費電力で効率的に暖められるため、蓄熱暖房機よりも経済的。
- また、ZEHや高断熱住宅の普及で「少ない熱源で家全体を暖められる」ようになり、エアコン暖房の優位性が高まりました。
●まとめ
- 震災前:夜間電力割引+オール電化=蓄熱式暖房機が普及
- 震災後:原発停止 → 電力不足 → 深夜電力割引縮小 → 蓄熱暖房機の経済性が崩壊
- 現在:省エネ型エアコンや床下エアコン、ヒートポンプ式暖房が主流
その他の落雷によるリフォーム工事


吹抜け部のシーリングファンの交換。吹抜け部の天井に付いているシーリングファンを足場を架けて交換しました。
また、インターホンが壊れたので、室内モニター2台と外部子機2台を交換しました。
※シーリングファンとは、天井に取り付ける大きな扇風機のようなもので、室内の空気を循環させて、温度を均一にする効果があります。特に吹き抜けなど天井の高い部屋で冷暖房効率を上げるのに役立ち、電気代の節約にも繋がることがあります。ただし、吹抜け天井に付けたシーリングファンの交換には室内足場が必要になることが殆どのため、10年前後で壊れた場合は、交換せずに、そのままになっているケースも多いと思われます。
宇都宮市は雷が多いので「雷都(らいと)」と言われている

栃木県の県都・宇都宮市は、夏季における雷の発生日数が全国で最も多いという統計的事実から、「雷都(らいと)」という愛称で親しまれています。地形的には北に日光連山や那須岳などの山並みを抱え、南から湿った風が上昇気流となって雷を誘発しやすいことが、その主な背景にあります。
実際のデータでは、年間の雷日数は金沢などの日本海側都市には及びませんが、春から夏にかけての暖候期(4–9月)に限ると、宇都宮は平年で約24.2日と全国最多であり、まさに「夏の雷都」と呼べる存在です。一方で冬季の雷発生は極めて少なく、日本海側の都市とは名実ともに性質が異なります。
さらに、地域の気象文化を公共交通にも反映させたのが、LRTの「ライトライン」という愛称とその車両デザインです。「雷都を未来へ」というコンセプトを掲げ、黄色と黒の流線型デザインによって雷光のイメージを象徴的に表現しています。
宇都宮市民は、雷のことを、雷様(らいさま)と言います。
実際、宇都宮市は雷が多いのか?都道府県比較によるデータ
- 宇都宮の年間雷日数は、金沢・新潟などの日本海側と比べれば少ないものの、それでも全国平均を上回っています。
- 特に、夏季・暖候期に限定すると全国で最も雷が多い都市という点が、宇都宮市が「雷都」と呼ばれる最大の根拠です。
項目 | 宇都宮 | 全国平均 | 金沢(例) | 備考 |
年間雷日数(1991–2020年 平年) | 約26.5日 | 約20.1日 | 約45.1日 | 宇都宮は全国11位ほど(朝日新聞) |
暖候期(4~9月)の雷日数 | 約24.2日(全国最多) | — | 少ない(日本海側は冬に多い) | 暖かく湿った南風が山を駆け上る地形的要因(下野新聞デジタル, 朝日新聞, 気象庁データ, 毎日新聞) |
年間雷日ランキング | 全国11位程度 | — | 1位(金沢)(朝日新聞, note(ノート), 47都道府県別ランキング) |
宇都宮の路面電車LRT(ライトライン)と「雷」の関係

“雷都”【Raito】と呼ばれる街の誇り
宇都宮市は、夏を中心に全国的にも雷の多い地域として知られており、「雷都(らいと)」という愛称で親しまれています。このニックネームは、地域文化や交通インフラのデザインにも色濃く反映されています。ウィキペディア+14kaisyudo.co.jp+14国際協力機構+14
デザインコンセプト:『雷都を未来へ』
芳賀・宇都宮LRTのデザインには、雷の“稲光”をモチーフとしたコンセプト「雷都を未来へ」が採用されました。
車体や停留所、案内板などに統一されたデザインを施すことで、視認性や親しみを高めています。宇都宮市公式サイト+4ライトライン 公式ポータルサイト+4宇都宮市公式サイト+4宇都宮市公式サイト
シンボルカラー:「雷都イエロー」
車両の鮮やかな黄色は「雷都イエロー」と名づけられ、稲光と豊かな実りをイメージしています。関西ペイントが創色技術を駆使し、高彩度で輝くメタリックカラーを実現しました。メイデンズ情報+6coatingmedia.com+6宇都宮市公式サイト+6
地域愛とデザインの融合
このようにLRTの名称やカラー、デザインは、宇都宮に長く根付く雷への親しみや、地域のアイデンティティを表現したもの。交通インフラを通じて「地域文化を未来へつなぐ」という意志が込められています。メイデンズ情報
項目 | 内容 |
---|---|
「雷都」とは | 宇都宮市の雷の多さから生まれた愛称 |
デザインコンセプト | 「雷都を未来へ」– 地域のシンボルを未来に継承 |
シンボルカラー | “雷都イエロー”、稲光と豊かさをイメージ |
地域文化との融合 | LRTを通じ、住民と文化の共感を得るデザイン |
日本で、自分の家に落雷する可能性は?
① 日本における雷発生の地域差
- 日本は世界的に見ても「雷の多い国」ではありません。東南アジアやアフリカ赤道直下の国々に比べれば発生率は低いです。
- ただし国内では、**北陸地方(石川・富山・新潟)や関東北部(宇都宮・群馬県北部)**が雷の多い地域です。
- 宇都宮市では年間の雷日数は全国11位前後、夏の雷日数に限れば全国最多(約24日/年)です。
② 家に直撃落雷する確率
- 一般的に、建物への直撃落雷の発生率は非常に低いです。
- 目安として、日本全国での建物1棟あたりの直撃雷の確率は、年間で数千~数万分の1程度とされています。
- 東京電力や電気学会のデータによると、例えば「雷撃による建物火災」は全国で年間数百件程度。住宅総数(約5,000万戸以上)で割ると、確率は0.001%以下です。
- つまり、「一生に一度、自宅に直撃雷があるかどうか」というレベルの低さです。
家に落雷する以外の雷被害と落雷対策
家に落雷することは珍しいですが、誘導雷や雷サージによる家電・設備の被害は比較的多いです。雷サージ(雷サージ電圧)とは、落雷によって電線や通信線に一時的に発生する非常に高い電圧・電流の波のことです。
- 落雷が近くの電柱や電線に起こると、そこから家庭内に雷サージ(過電圧)が流れ込み、エアコンやパソコン、給湯器などが故障するケースがあります。
- 宇都宮市のように雷日数が多い地域では、直撃よりもサージ被害対策が重要です。
落雷対策
- 避雷針の設置:直撃被害を防ぐ最も確実な方法(ただし一般住宅ではあまり普及していません)。
- 分電盤にSPD(避雷器)を設置:雷サージから家電を守る現実的な方法。
- 雷注意報・警報時は電源プラグを抜く:簡単ですが有効。
火災保険の落雷による支払い件数は意外と多い
住宅設備機器や家電は、保証期間内(引き渡し後1~2年以内のことが多い)でも「落雷」は保証外であることが多いため、火災保険で修理費用を請求する流れになることが多いです。
- 落雷による保険金支払件数は、近年(2022年度など)で年間に4万件を超えるなど、火災・破裂・爆発よりも多いという統計があります 損保ジャパン+9SBIの火災保険比較+9保険ノリアル+9。
具体的には:
- 2018年度:約26,987件
- 2022年度:約43,515件 SBIの火災保険比較+1

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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