2025-07-20
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高断熱・高気密住宅
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屋根断熱材の落下防止措置!「断熱材落下押さえ縁(だんねつざいらっかおさえぶち)」とは?

断熱専門業者による勾配天井断熱ブローイング施工写真。「断熱材落下押さえ縁」は、今のところ使った経験なし。

今日のブログは、石膏ボードを貼らない場合の、屋根断熱材の落下防止方法について書きます。

勾配天井で断熱材が落ちる!? 落下防止のための基本的な考え方

屋根断熱(勾配天井断熱)では、断熱材を屋根の傾斜部分に充填し、その内側に可変透湿気密シート(または防湿気密シート)を貼ります。さらに気密シートの上から、石膏ボードを貼ることで、気密性・室内側の耐久性・断熱材の落下防止が同時に担保されます。

しかし、石膏ボードを貼らない場所では、可変透湿シートをタッカーと気密テープで留めるだけでは不十分なケースがあります。断熱材の自重により、経年劣化とともにテープが剥がれ、気密シートに隙間が生じ、最悪の場合は内部結露や断熱材の落下につながる恐れがあります。

そのため、石膏ボードを貼らない場合には、「断熱材落下押さえ縁(おさえぶち)」を設けて断熱材を物理的に保持する必要があります。

私は、今のところ「断熱材落下押さえ縁」を使った経験はありません。

勾配天井と平ら天井が混在する場合の断熱方法とその課題

最上階の天井が、部分的に勾配天井(斜め天井)と平らな天井で構成される住宅では、断熱方法の選択が重要です。


当社では、最上階の天井を以下のように使い分けて、施工しています。

  • 勾配天井部:屋根断熱
  • 平ら天井部:天井断熱

この方法の最大の利点は、断熱ラインと室内仕上げラインが揃い、断熱材の内側容積が最小になるため、断熱材の使用量や工事コストを抑えられる点。断熱ラインの内側の容積が最小になるため。経済的です。

一方で、当社の標準仕様である高性能グラスウール210mmの付加断熱壁を採用すると、天井裏の、勾配屋根と平ら天井の接点に付加断熱壁が生じ、断熱・気密処理に手間が掛かります。

また、平ら天井部分では、間仕切り壁の施工より前に天井断熱ラインを仕上げる必要があり、工程管理上の難しさもあります。

すべてを勾配天井断熱に統一した場合のメリット・デメリット

もうひとつの選択肢として、平ら天井部分も含めて、すべて屋根断熱(勾配天井断熱)で統一する方法があります。

この方法のメリットは、断熱ラインが一本化され、構造・施工ともに分かりやすくなることです。
ただし、室内仕上げの平らな天井と断熱ラインが一致しなくなるため、断熱材の内側の容積が増加し、無駄な空間が生まれてしまうデメリットがあります。
また、天井仕上げ面に石膏ボードを張る場合、その上の断熱ラインでもう一度石膏ボードを張ると二重貼りになってしまい、材料コストと施工手間が増してしまいます。

石膏ボードを貼らない場合の落下防止策:「断熱材落下押さえ縁」の設置

天井断熱の場合で、天井裏が物置部屋やロフトではなく、人が入れない空間の場合、屋根断熱材の維持だけのために、石膏ボードを貼るのは勿体ないと思います。

「屋根断熱材を落ちないようして、気密性を確保する」という目的が果たせれば良いという考えから、石膏ボードを貼らずに、断熱材を支える場合は「断熱材落下押さえ縁(おさえぶち)」の設置が有効だと教えて頂きました。


これは、15×45mm程度の胴縁材で、可変透湿シートの上から設置し、シートと断熱材を押さえることで、断熱材の落下を防ぎます。

断熱材落下押さえ縁の方向とピッチは?

可変透湿シート(防湿気密シート)を垂木と同方向に貼るのであれば、断熱落下押さえ縁の設置方向も垂木と同方向になります。断熱材落下押さえ縁のピッチは、910~2730mmくらい。

経年後の屋根断熱の結露事例では、断熱材の荷重が防湿シートに掛かりジョイント部でテープの剥がれが発生。

その結果、テープ剥がれの防湿シートの隙間から水蒸気が屋根断熱層に入り断熱材が劣化した現場を見た経験から、「シートジョイント部をしっかり押さえる事が経年後も断熱構成を維持できると考えに至った経験がある」とのこと。

屋根断熱の室内側に石膏ボードを貼らない場合は、以下のことが大切だとのことです。

1:屋根断熱のしっかり充填(石膏ボードを貼る場合と同じ)

2:可変透湿シート(もしくは気密シート)を弛みの無いように垂木と同方向で設置(石膏ボードを貼る場合と同じ)

3:可変透湿シートのジョイント部は下地木材のある部分で気密テープを貼ること

4:断熱落下押さえ縁は、可変透湿シートのジョイン部の気密テープ上に設ける事

(可変透湿シートの弛みは断熱材落下を誘発するので、押さえ縁設置時にシートに弛みが無いか確認は必須)

という感じの考えで施工を行う。

高断熱高気密住宅の要点の1つは「経年劣化を見据えた施工」

私はJOTOのWEB研修「高気密・高断熱住宅の結露しないきほんレシピのつくり方」を受講し、設計段階から経年後の性能維持まで見据えた施工の重要性を再確認しました。


テキスト形式の研修なので、わからない点も検索しやすく、設計・施工者双方にとって有用な内容です。

講師の古川繁宏さん(住まい環境プランニング合同会社)には、本記事のテーマについても直接質問し、丁寧にご回答いただきました。

目的を果たす手段は、幾通りもあり、安全性や省エネ性の他に施工品質・耐久性・目的・施工スピード等の考えられるプラス要素があれば、計画や施工方法は、幾通りあっても良いと考えています。とのことです。

住宅は、それぞれのケースで、多種多様な状況になっているため、これが全ての面で正しいという、唯一の方法は無いのだと思います。

研修資料:https://www.joto.com/feature/hidamari/

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

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