2025-03-11
インフラの老朽化問題
土地・地盤

埼玉県八潮市道路陥没事故の原因を、住宅屋視点で推測

出典

今日のブログはザックリ言うと、

・「埼玉県八潮市道路陥没事故」から、日本国民は何が不安だと感じているのか?を推測

・技術系公務員と大工人口の推移の表を見ながら、人的側面からインフラの問題点を書きました

・埼玉県による事故説明会の内容から、事故原因を住宅屋視点で推測

という内容です。

「埼玉県八潮市道路陥没事故」から、日本国民は何が不安だと感じているのか?推測しました

建設後50年以上経過する社会資本(インフラ)の割合。今後15年以内に、各インフラは、より老朽化する

今年、令和7年1月28日に起こった、埼玉県八潮市の道路陥没事故。

この事故で日本国民が不安になった要因は、いくつかあると思います。

まず、普段歩いている交差点の下に、大型トラックが流されてしまうような、太い下水管が通っていたこと。

一般人は、交差点の下に、直径5m近くの下水道管が埋設されているなんて、考えてもいなかったと思います。住宅屋の私も、太い下水道管を、道路に埋め込む様子は見たことが無いので、全く実感がありませんでした。

日本国民も私と同じように、今回の事故を見て、太い下水道管が道路下に通っていないと、多くの人の生活排水は処理できないと、初めて認識したと思います。

地下配管の破損で道路が陥没した場合は、今回のように人が下水に流されないまでも、車や人が陥没した道路に落ちると、落下によるダメージを受けたり、土砂に埋もれて呼吸困難などになり、最悪の場合は死に至ります。

社会資本の維持・更新費用は、2013年から2033年の20年で1.5倍になる予定。

現時点で、この事故原因が、インフラの老朽化のみに起因するかは分かっていません。しかし、原因の1つがインフラの老朽化だとすると、大きな不安要因になります。

というのも、日本各地でインフラの老朽化は進んでおり、かつ少子高齢化で税収も少なくなるからです。

既に施設されているインフラの多くは、少子高齢化を前提にしていない、右肩上がりの時期に造られており、道路・上下水道・電気・ガス・有線光ファイバー通信などは、日本全国の広い地域に、毛細血管血管のように張り巡らされています。

しかし、コロナ禍以降、各業界で少子高齢化の影響が進みました。

少子高齢化が現実になり始めた現在は、「老朽化したインフラが壊れても、今までのように全てを直すことは出来ず、その影響は自分や家族にも及ぶ」ことを、ほとんどの人が「薄々感じ始めており、少しずつ現実になってきている」時期だと思います。

薄々感じ始めている理由は、自分がいる業界でも、人手不足を実感しているからです。

これが何となく日本国民が感じている、社会不安の原因の1つだと思います。

公務員全体が少なくなっており、技術系公務員は、より少なくなっている

市町村の土木部門職員は、他の部門より7%少ない

具体的に少子高齢化により、上下水道等のインフラを計画する側の、若い公務員や民間の設計者は減っています。もちろん、実際に現場で働く、若い現場監督・土木や給排水設備の職人も減っています。

技術系職員がいない市町村の割合は、約3割。公務員の数は多い印象がありますが、市町村全体の職員数は、平成8年度から平成27年度の約19年間に約20%減少しています。

働き手が少なくなっている上に、人口減で税収も少なくなりますから、今後は、今までのように素早く、充分にインフラを直せない可能性が高いと思います。

民間の大工等の職人の数は、公務員よりもヤバい感じで減少しています。次を見てみましょう。

住宅建築業界も、大工人口が20年間で半減

上の表を見てください。大工は2000年から2020年の20年間で54%減です。54%減とは、100人のうち54人が居なくなってしまったということです。

かつ大工職の、2020年時点の60歳以上の割合は43%と、高齢化の代表のような職種です。今年は5年後の2025年ですから、大工はより少なく、かつ高齢になっていると思います。

大工が減少、高齢化した理由の1つとして、他の職人と比べて覚えることが多いため、修行期間が長くなり、独り立ちするまでに時間が掛かることが挙げられます。一方で、一度覚えた大工技術は長く使えるために、高齢になっても続けられるという側面もあると思います。

現実、住宅建築業界でも、少子高齢化が近因もしくは遠因となって、人が少なくなっています。今までのような期間では新築住宅が建てられない、かつ大規模リフォームや小さな修繕工事も、時間が掛かるということが起き始めています。

他業界でも少子高齢化による、人と金(所得と税収)の減少で、今までのように仕事が進まない実感を持ち始めている人も、少なくないように感じます。

上の表の右側の小さな表を見てください。建設・土木作業従業者(いわゆる各職種の職人達)も、2000年から2020年の20年間で32.7%減少しており、60歳以上の割合は、27.8%になっています。

建設業界の職人全体も、この20年で3割以上も減少しており、高齢化率も高い絶滅危惧種のような存在ですが、「大工よりは、ましである」といったところです。

インフラとは?

インフラとは、社会や産業の基盤となる施設や設備、サービスを指す言葉で、英語の「インフラストラクチャー(infrastructure)」を略したものです。

インフラの例として、

  • 道路、鉄道、橋、空港、港湾などの交通インフラ
  • 電気、ガス、水道などの生活インフラ
  • 固定電話網、モバイルネットワーク、インターネット接続などの通信インフラ
  • 病院、学校、公園などの公共施設があります。

インフラの問題点とは?

インフラの問題点には、施設の老朽化による機能や安全性の低下、維持管理の為の財源不足、技術系職員の不足などがあります。

【インフラ施設の老朽化問題】

  • 高度経済成長期に建設されたインフラが老朽化している
  • 鉄骨造では鋼材のサビによる腐食、鉄筋コンクリート造ではひび割れや、コンクリートの中性化などが劣化要因
  • 劣化を放置すると、地震や洪水などの災害に対する強度が不足する可能性がある

【維持管理の財源不足】

  • 少子高齢化等により、インフラの維持管理にあてる財源が不足している

【技術系職員と職人の不足】

  • 少子高齢化により、自治体と民間会社において技術系職員(土木技師・建築技師)も減少し、不足している
  • 少子高齢化により、建設作業員(職人)も減少し、不足している

 ※上に2つの表を付けました。

埼玉県による事故説明会の内容から、住宅屋視点で事故原因を推測

報道発表資料を読みましたが、今のところ事故原因についての言及はありませんでした

令和7年2月22日(土曜日)午後2時から、下水道管の破損に起因すると思われる、事故の説明会が行われました。

報道発表資料と埼玉県の説明会書類を読んだところ、事故処理経過のみが説明されており、事故原因についての言及はありません。

交通事故と道路陥没事故が、交差点で起きやすい理由

上記「道路陥没平面図」を見ると、この交差点には、ガス管・雨水管・下水管・通信管・水路暗渠・工業用水など、少なくとも6種類以上の地中配管が、複数集まっていたことが分かります。

このことから交差点は、交通と同じように、地中配管も交差する場所であることが分かります。

交通事故は、車や人が行き交う交差点で起きることが多いですが、地中配管の事故も同じだと感じました。

道路下に公共の配管や配線がある理由

水道、ガス、下水、電気、電話、地下鉄等の公共施設は、民間の土地の下に埋設するわけにいきませんから、道路管理者の許可を得て、道路下に『敷設』するのが通常です。

道路管理者とは、

  • 国土交通大臣(国道や高速道路)
  • 都道府県知事(県道や道道)
  • 市町村長(市道や町村道)

地中配管が集まる交差点付近は、地盤が緩くなりがち?

埼玉県八潮市道路陥没事故概要

埋設配管の多い場所は、配管が無い場所に比べると、「地盤が緩くなる傾向がある」ことは間違いないと思います。

理由として、各種配管を更新する場合は、地盤を堀って配管をやり変えるのが普通だと思いますが、各種配管が各深さごとに多く交差していると、充分な転圧(土砂を機械で押して固めること)がしずらいからです。

住宅建築の場合に置き換えると、地中に配管の無い場所は、強く転圧しても問題ありません。しかし、給排水管等の直上は、強く転圧すると配管が破損する恐れがあるので、配管が無い部分と同じようには、強く転圧をしません。

ちなみに、2016年の博多駅前の道路陥没事故も、交差点付近で起きました。

今回の道路陥没事故も交差点で起きています。各種配管は、道路下に施設されているので、道路が曲がる交差点で配管が曲がることが多くなります。当然のことながら、配管は直線部よりコーナー部で傷みやすいと思います。

今日のブログは、住宅屋視点で、埼玉県八潮市道路陥没事故の原因を推測しました。

ご意見をX(旧twitter)等で頂けたらと思います。

埼玉県八潮市道路陥没事故説明会資料 

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

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