世界最古の暖房システム『ハイポコースト』に学ぶ! 現代の床下エアコンとの共通点とは?

2025年3月2日(日)の朝日新聞連載「もっと教えて!ドラえもん」に、「あったか暖房 未来はどうなる?」という見出しの記事が掲載され、人類の暖房の歴史について紹介されていました。
その中で、古代ローマ時代に「ハイポコースト」という床下暖房がすでに存在していたことが書かれていました。「ハイポコースト」は、当社で採用している「床下エアコン」と似ているため、調べてみました。
「ハイポコースト」は、世界最古の暖房システムと言われており、朝鮮半島の「オンドル」よりも古い床下暖房です。「ハイポコースト」の熱源は薪を焚いた火ですが、床下に空間を設けて暖気を流す仕組みは、当社の床下エアコンと共通点が多く、その原型とも言えるものです。
今から2760年前の古代ローマ人は、床面を暖めると快適であることを、既に理解していたことになります。
※2760年前の数字の出し方については、現在、歴史上の年数を数える時に、世界的に使われているのは、キリストが生まれた年を、紀元年とする西暦です。
※古代ローマの建国年は紀元前735年です。735年+今年でキリストが生まれてから2025年なので、735年+2025年=2760年前。今年から数えて2760年前が、古代ローマ時代の建国年ということになります。
遺跡の写真を見ると、「ハイポコースト」の温風が流れる床下空間の高さは、現在の木造住宅の床下エアコンを採用した場合の基礎高さと比べても、同じくらいか、それより低いくらいのようです。
送風機もない時代に、暖気をどのように横移動させたのかは謎ですが、下に貼ったオンドルのイラストのように、排気口を火の発生場所の対角位置などに設けて、床下全体を煙突を横にした感じにして、暖気を移動させていたのだろう、と想像しました。
目次
朝日新聞連載「もっと教えて!ドラえもん」の記事@2025年3月2日(日)を、時系列で要約しました

- 暖房の歴史は、人類が火を使い始めた時点から始まります。火は採暖するためだけでなく、外敵から身を守り、暗闇を照らす照明として重要な役割を果たしてきました。(焚き火による暖房と照明のこと)
- 古代ローマ建国時(紀元前753年建国)には、すでに「ハイポコースト」という床暖房がありました。これは、薪を燃やして暖かい空気を床下に送り込む仕組みです。(ハイポコーストは、紀元前753年の建国より以前の、紀元前1世紀頃に始まったとされています)
- その後、朝鮮半島では、炊事場のかまどの排気を利用して「オンドル」という床暖房が普及しました。
- 日本では、14世紀前半から15世紀後半の室町時代に「こたつ」が登場し、現在でも使われ続けています。
- 17世紀頃、イギリスでは木を伐りすぎて森林資源が減少したため、18世紀の産業革命では蒸気機関で使用される石炭が暖炉やストーブにも使われるようになりました。
- 20世紀に入ると、電気を使った暖房器具が普及し始めました。
- 現在、家庭で広く使われているエアコン暖房は、空気から熱を集める「ヒートポンプ」という技術を利用しています。この技術により、消費する電力よりも多くの熱エネルギーを得ることができます。(今ここ)
- 石油や石炭などの化石燃料を今のように使い続けると、資源が枯渇し、二酸化炭素などの温室効果ガスを排出して地球温暖化を進めてしまいます。そのため日本政府は、2050年までに温室効果ガスの排出ゼロを目指す「カーボンニュートラル」の実現を目標にしています。(今ここ)
- また、化石燃料ではなく、再生可能エネルギーを使う取り組みも進んでいます。(今ここ)
世界最古の床下暖房「ハイポコースト」の仕組みと歴史は?

●ハイポコーストの仕組み
ハイポコーストは、次のような構造になっています。熱源は薪ですが、床下を造って、そこに温風を流すのは床下エアコンと同じです。
送風機もない時代、暖かい空気を、どのように横に流したのかが不明で、とても興味があります。
- 炉(火元)
- 建物の一角に火を焚く炉(フォルナクス/ fornax )を設置
- 木材や炭を燃やして熱を発生させます。
- 床下の空間
- 石やレンガで作られた小さな柱(ピラエ/ pilae )を規則的に設置して床下空間を作り
- 熱の循環
- 炉で発生した暖かい空気が、この床下の空間を流れることで、床全体を暖める。
- 壁にも空洞の煙(flue)提供
- 煙の排出
- 壁や屋根に設けられた煙突から、不要な煙やガスを外に排出することで、室内の空気を清潔に保った。
●ハイポコーストの歴史
1. 発明と発展(紀元前1世紀ごろ)
- 紀元前1世紀ごろ、ローマ人によって開発されたとされる。
- その後、ローマ帝国の拡大は各地に広がっています。
2. 全盛期(1~4世紀)
- 公共浴場で使用された
- 特に寒冷地の富裕層の邸宅などでは、室内の快適性を向上させるために重要な技術だった。
3. 衰退(5世紀以降)
- 西ローマ帝国の衰退と共に
- 中世に入ると、薪ストーブや暖炉が主流となり、ハイポコーストは忘れられていった。
●まとめ
- ハイポコーストは古代ローマの床下暖房システムであり、床下空間に暖かい空気を循環させることで部屋を暖めた
- ハイポコーストは、テルマエ(公共浴場)や富裕層の邸宅で広く使われています。
- ハイポコーストは、ローマ帝国の衰退とともに廃れたが、現代の床暖房の原型となったと言われている。
古代の床下暖房「ハイポコースト」と、現代の床下暖房「床下エアコン」との類似点と違う点


古代ローマの床下暖房「ハイポコースト(Hypocaust)」と、現代の床下暖房「床下エアコン」は、どちらも床下に暖かい空気を供給して、床下空間を暖める仕組みですが、構造や熱の渡り方に違いがあります。
類似点は、ハイポコーストも床下エアコンも、床下に暖められた空気を送り、その熱で床下を暖めて、暖まった空気が床面を暖め、さらに室内を暖める方法です。ハイポコーストは薪を燃やした熱い空気を床下に送り込み、床下エアコンはエアコンの温風を床下に送り込みます。
どちらも、床からじんわりと室内を暖めるため、足元が冷えにくく快適。 例えば、灯油温風ヒーターなどの、一般的な暖房よりも、空気の乾燥を抑えられます。
どちらも、ある程度の高さのある床下空間を造って、温風を流すのは似ています。
違う点は熱源で、「ハイポコースト」は薪の火による暖かい空気、「床下エアコン」は、電気によるヒートポンプで作った暖かい空気を使っています。
ちなみに、現在の床下エアコンではない床暖房は、電熱線や温水パイプを床板の直下に設置。温水パイプの場合は、灯油、ガス、ヒートポンプの熱源で温水を暖めてパイプに通して床面を暖房します。床下空間を造って、そこに温風を流す方式ではありません。

当社の床下エアコンについては、こちらをご覧ください。
ブースターファンを設置して、床下エアコンから遠い、日陰の部屋も暖かくした
同じ床下暖房である「古代ローマのハイポコースト」と「朝鮮半島のオンドル」はどちらが古いのか?

●ハイポコーストの歴史

ハイポコーストは、古代ローマで発展した暖房システムです。 紀元前2世紀から1世紀にかけて、ローマ帝国の公共浴場や富裕層の家で使用されました。 このシステムは、床下に設置された空間に温かい空気を流すことで、床下から床面や壁を暖める仕組みです。火を焚いて、床下に熱い煙や空気を広げることで、部屋を暖めることが出来ました。ハイポコーストは、現在は使われていません。
●オンドルの歴史

オンドルは、韓国の伝統的な暖房システムで、古代から存在していたとされています。オンドル(温床)は、韓国をはじめとする東アジアの伝統的な床暖房システムで、その歴史は非常に古いです。オンドルの起源は、紀元前1世紀頃、韓国の三国時代の前に伝わると言われています。
初期のオンドルは、火を焚いた炉から温かい煙を床下空間に流すシステムで、寒い冬に暖かい部屋にする仕組みでした。
オンドルは、生活環境に合わせて進化し、現代では高効率なシステムとして、多くの家庭に取り入れられています。
●ハイポコーストとオンドルはどちらが古いのか?
ハイポコーストの方がオンドルよりも古いようです。ハイポコーストは古代ローマ時代に登場しており、紀元前2世紀から1世紀にわたって使用されていました。 一方、オンドルは韓国で古代から使われていたものの、ハイポコーストよりも後の時代に普及した暖房システムです
ハイポコーストが、オンドルよりも古いシステムであると言えます。
住環境調整の歴史(その3)「暖房の歴史」

公立大学法人 熊本県立大学 環境共生学部 居住環境学専攻 辻原万規彦教授の資料。住環境調整の歴史(その3)「暖房の歴史」です。ネット検索したら出てきました。

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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