サッシの可動部分を「障子(しょうじ)」と言うのはなぜか?その由来は?
住宅業界で使われる「障子(しょうじ)」という言葉は、2つの異なる意味で使われます。
一般的に「障子」は、和室などにある、木の格子に白い紙を貼った、造作建具としての引き戸を指しますが、実は、サッシ(サッシュ)にも「障子」と呼ばれる部分があります。
これから新築やリノベーションを考えている方に、2つの「障子」の違いや、由来などを説明します。
目次
施主との会話、「障子」違いの例

■私「来週、サッシ業者が掃き出しサッシの、障子の調整に伺います」
●施主「サッシの調整に来て頂くのは知っていますが、うちに障子は1本もありません。他のお宅と間違っていませんか?」
■私「間違っていません。住宅業界では、サッシの動く部分のことも、障子と呼んでいます」
住宅で使われる2つの異なる部材を、同じ「障子」という名前で呼ぶので、住宅業界以外の方には、分かりにくいと思います。
住宅業界の多義語である「障子(しょうじ)」
1つの言葉に2つ以上の意味があることを、多義語(たぎご)と言います。例えば、「首(くび)」は、人間の顎と胴体の間の、身体の一部の意味と、解雇の意味の2つで使われます。
「首」の違いは、前後の文脈を考えれば分かりやすいと思いますが、「障子」は、どちらも建築用語です。どちらも部材名であり、「サッシにも障子という部材がある」ことを知っていないと、「障子の違い」が分からないと思います。
サッシの可動部分としての「障子」

概要
- 住宅業界では、樹脂サッシ、アルミ樹脂複合サッシ、木製サッシ、アルミサッシの、主に可動部分を障子と言っています
- 主に引き違いサッシの可動部分のことを、障子と言うことが多いのですが、縦すべりだし窓、内開き窓、上げ下げ窓など、全ての窓の可動部分も障子と言っています
- 玄関ドアの可動部分も障子と言います
- サッシの障子は、ガラスをはめ込むのが一般的です

用途
- サッシの障子は、主に窓や玄関ドアの一部として使われます
- 障子は、開閉することで、換気や採光、防犯、出入りの役割を果たします
- 断熱性能が高い障子は、省エネ・結露防止・快適性の向上にも貢献します
歴史
- 日本では昔から木製の格子窓や雨戸の文化があったが、明治時代以降、ガラスをはめ込んだ窓が一般的になりました
- 昭和に入り、アルミサッシが登場し、1970年代以降、アルミサッシは広く普及しました
- その後、アルミ樹脂複合サッシと樹脂サッシが普及しました
世界の樹脂サッシ普及率
話が少しそれますが。樹脂サッシの普及率を書いておきます。新築する場合は、家の断熱性能を確保する点から、樹脂サッシがマストアイテムです。
- 現在は、より断熱性能の高い樹脂サッシが主流になりつつあり、令和4年度、日本の樹脂サッシ普及率は33%になっています。
- ちなみに、世界のサッシ素材の主流は樹脂サッシで、各国樹脂サッシ率は60%を超えており、その他は木製サッシです。
- 世界的には、アルミ樹脂の複合サッシやアルミサッシは、ほぼありません。

サッシの種類別の断熱性能と価格の関係
サッシの断熱性能と価格についての表。サッシの種類の中では、樹脂サッシがコスパ良くおススメです。予算があれば、雨掛かりにならないようにすることを前提に、木製サッシを採用することも考えてはどうでしようか?

木製サッシの断熱性能と値段が一番高く、次に断熱性能と値段が高いのが樹脂サッシです。
造作建具としての「障子」

概要
- 造作建具としての「障子」は、木枠と和紙(または樹脂)で作られることが多いです
- 光を柔らかく通し、外からの視線を遮り、和の雰囲気を演出します
- 開閉の仕組みは、引き違い、押し開き、折りたたみなど多彩です
用途
- 室内の間仕切りや窓の内側に使用。窓の内側の障子は、内障子(うちしょうじ)と呼ばれています
- 内障子(うちしょうじ)は、インテリア・外部からの目隠し・断熱性を向上させるものとして使用されています
- 現代では、和モダンのインテリアとしても人気です
歴史

- 造作建具としての「障子」は、奈良時代〜平安時代にかけて、格子戸に紙を貼る形で誕生しました
- 室町時代に、現在のような「組子細工」の障子が発展
- 江戸時代には、庶民の家にも普及し、日本家屋の定番になりました
- 近年は、和紙ではなく樹脂製の障子紙も登場し、耐久性が向上しました
- 紙ではない、アクリルワーロン製の厚手の障子は張替えの必要がありません
サッシの可動部分を「障子(しょうじ)」というのはなぜか?その由来は?

サッシの可動部分を「障子」と呼ぶのは、日本の伝統的な建具文化に由来しています。もともと「障子」は、部屋を仕切るための可動式の建具全般を指す言葉でした。以下のような背景があります。
1.「障子」の語源と意味の変遷
「障子」という言葉は、平安時代から使われており、もともとは「部屋を仕切るための移動可能なもの」を意味していました。初期の障子は、木の枠に布を張ったシンプルなもので、後に和紙を貼った「明かり障子」が普及しました。
2. 「障子=動く建具」という概念
日本の伝統建築では、雨戸・襖(ふすまかみの貼られたもの)・障子(和紙の貼られたもの)など、可動式の建具を「障子」と呼ぶ習慣がありました。つまり、「障子」は「固定されていない、開閉する部分」を指していたのです。
3. アルミサッシの登場と名称の継承
近代になり、ガラスをはめ込んだアルミサッシが普及しましたが、日本の伝統的な建具の考え方がそのまま受け継がれ、サッシ枠の中で可動する部分を「障子」と呼ぶようになりました。これによって、「ガラス障子」という表現が生まれ、現在では「サッシ障子」とも呼ばれるようになりました。
4. 建築業界での専門用語としての定着
建築やリフォームの現場では、サッシの可動部分を「障子」、固定部分を「枠」と呼び、施工時の指示や部材の区別に使われています。
5.まとめ
「障子」はもともと「可動する建具」を指していたため、昭和になりアルミサッシが登場した後も、その可動部分を「障子」と呼ぶようになったのです。これは、日本の建具文化の名残といえるでしょう。
日本の住宅に、開き戸(ドア)が入ってきたのはいつか?

日本の住宅に、開き戸(ドア)が本格的に普及し始めたのは、明治時代(1868年~1912年)以降です。
それまでは、引戸が一般的でした。
開き戸(ドア)が入ってきた経緯
- 江戸時代以前(~1868年)
- 日本の伝統的な住宅では、襖(ふすま)や障子(しょうじ)といった引戸が一般的でした。
- これは、間取りの柔軟性を確保し、通風や採光を調整しやすいという利点があったためです。
- 明治時代(1868年~1912年):西洋建築の影響
- 開国後、西洋文化の流入に伴い、洋館や官公庁の建築に開き戸が採用され始めました。
- 明治政府が建設した鹿鳴館(1883年)や洋風の学校・ホテルなどで開き戸が使用されました。
- 大正~昭和初期(1912年~1945年):都市住宅への普及
- 洋風住宅の増加に伴い、一部の富裕層の住宅では、玄関や洋室に開き戸が導入されるようになりました。
- ただし、日本家屋の多くは依然として引き戸が主流でした。
- 戦後(1950年~):一般住宅への広まり
- 戦後の住宅政策や高度経済成長期(1950~1970年代)にかけて、洋室が標準化し、開き戸の普及が進みました。
- 特に、公団住宅(UR賃貸住宅の前身)やハウスメーカーの住宅で開き戸が増加。
- 1970年代以降は、玄関・トイレ・浴室・収納などでは開き戸が標準的になりました。
結論:開き戸が本格的に導入されたのは明治時代で、戦後に一般住宅へ普及しました。

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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