ブースターファンを設置して、床下エアコンから遠い、日陰の部屋も暖かくした
12月27日(金)の午前9時半くらいに、今年9月に完成し引き渡した、Q1.0住宅小幡の家に訪問しました。
晴れた日でしたが、赤外線温度計で、玄関前の日陰の駐車場コンクリートを測ると-1度。
しかし、床下エアコン暖房が切られた、室内各部屋の床温度は、22度くらいになっており、どこでも暖かく、快適でした。
Q1.0住宅小幡の家の、温度と湿度の写真を撮ったので見てみましょう。
目次
下屋があり、日差しが入りにくい住宅は、室温を均一にするのが難しい。だから、ブースターファン(送風機)で床下暖気を移動させて、各部屋を暖かくした
Q1.0住宅小幡の家は、総二階ではなく、下屋のある住宅です。かつ南面の半分以上が、南隣家の影になります。南隣家との外壁間は、約1.2mくらいと接近しています。そのため現在、14時以降は、室内に日射が入らなくなります。
Q1.0住宅小幡の家のように下屋があり、かつ南隣家の日影になる住宅は、総二階で、南側に障害物の無い住宅と比較して、1階が広いため、暖気と冷気が移動しずらい上に、充分日射取得できない家になります。そうなると、室内のどこでも暖かく、均一に近い室温にするのは難しいです。
また、この住宅のように吹抜けがあることは、室温を均一にしやすい要素になります。というのも、吹抜け自体が、1階と2階を繋いで1つの空間となり、暖気と冷気を上下階に運ぶダクトになるからです。
この住宅には、南西の角に3畳の吹抜けがあり、吹抜けに日射熱は入ります。しかし、建物の中央に吹抜けがある場合と比べると、室温を均一にしずらいです。建物の真ん中に吹抜けがある場合は、その熱を吹抜けの両側の部屋に配りやすいからです。吹抜けが、家の真ん中にあると、1.2階共に、暖気と冷気を、家全体に配りやすくなります。
そのため、Q1.0住宅小幡の家は、1台の床下エアコンのみで、家の隅々まで暖かくするのは、少しだけ難しい状態です。
それでも各部屋の温度を測ったところ、下の写真のように、建物の隅々まで暖かい理由は、断熱気密性能が良いことが基本となりますが、ブースターファンとパイプファンで暖気を移動させていることも要因です。
1階の床下エアコンから離れた2部屋の個室は、それぞれの部屋の床ガラリ下に付けた、「ブースター循環ファン」で、床下の暖気を床上に吹き出しています。
そして2階の一番端の個室は、普段はドアを開けておいて、かつ壁に付けたパイプファンを弱で廻して、2階の暖気を移動させることで、室温を均一に近い状態にしています。
結果として、1.2階共に、1階の床下エアコンから遠くても、暖かい室内になっていました。
Q1.0住宅 小幡の家の床下エアコン稼働時間と状況
Q1.0住宅 小幡の家の暖房は、床下エアコン(2.8kw 10畳用)1台のみです。施主に床下エアコンの稼働時間を聞いたところ、夕方16時~朝の8時までの16時間とのことでした。
私が訪問した、午前9時半ころは、稼働時間ではないので、床下エアコンは停まっていました。
エアコンは、壁付リモコンで制御しており、設定温度は22度で、風量は4段階の3番目で運転しています。
建物は、総二階でない下屋のある住宅。下屋とは、総2階では無い建物の、1階部分の屋根と屋根下の部屋のこと。
基礎の立上りを最低限として、床下の暖気が移動しやすいようにしていますが、床下エアコンから遠い、1階の2部屋ある各個室の、床ガラリの中心までは、直線距離で約7mと10m。
床下エアコンから、1階の個室までは、少し離れており、床下エアコンと近い部屋の室温くらいに、ならない可能性があったので、個室の床面にブースターファンを付けて、床下の暖気を床上に移動させました。
※床ガラリとは、床下と室内の空気を循環させる換気部材
床ガラリは、7か所設けていますが、上記2か所の個室の床ガラリには、電源を引いてブースターファンを設けて、床下暖気を小さなファンで床上に移動させています。
ブースターファンを使うことで、各室温は、22℃くらいと、ほぼ均一になっています。下屋の、日陰になる個室の床温度も、他の部屋とほぼ変わらない22度程度になりました。大きな窓のある、日射取得できる部屋の室温は、23~24℃で少し高いです。
ブースター循環ファンとは?
デルタ電子のブースター循環ファンは、床下・階間・小屋裏などをチャンバーとするダクトレスで、空気を移動させるシステムです。
この住宅では、床下を暖房のチャンバーとして、ブースター循環ファンを床ガラリ下に付けて、床下の暖気を1階に上げています。
※階間(かいかん)とは、1階天井裏と2階床の、隙間高さ約50~60センチ弱のスペースのこと
※チャンバーとは主に2つの意味があり、空調設備のチャンバーBOX、もしくは暖気か冷気の溜まる、箱型の空間のこと
※タクトレスとは、ダクト(配管)を必要としない換気や空調システムを指します
デルタ電子のブースター循環ファンは、添付した絵のように、本体横の丸穴から吸った暖気もしくは冷気を、真下・真上・真横に吹き出す循環ファンです。
ブースター循環ファンを住宅で使う場合は、今回のように、床下エアコンで床下を暖めて、床下を暖気用のチャンバーとします。床下エアコンから遠い部屋は、床下の暖気が行きわたりにくいので、床下にブースターファンを設置して、床下からの暖気を床上に送って、部屋を暖かくします。
もしくは、小屋裏や階間にエアコンを設置する場合は、小屋裏や階間を、暖気もしくは冷気のチャンバーとして使い、冷気もしくは暖気を、天井面から下に吹き出したり、2階床面から上に吹き出したりして使います。
ただし暖気は、軽くなり上にあがるので、床面から吹き出して、上に上げるのが自然で、冷気は重くなるので、天井面から吹き出して、下に下げるのが自然だと思います。
ブースター循環ファンの7つの特徴とは?
1階の個室2か所のブースター循環ファンは、日陰となる個室に設置されており、冬の間は、24時間運転しています。
デルタ電子のブースター循環ファンの特徴は、いくつかありますが、「弱運転」にすると、運転音が気になりません。一番使用頻度が高いと思われる「弱運転」の場合で説明します。
- 気流の形状が、他のファンとは違い、開口部の形と同じ「扁平気流(長方形気流)」なこと。
- ACモーターではなく、DCモーターという、風量が細かく設定出来て、省エネなモーターを使っており、消費電力が弱運転で1.8Wであること。
- 弱運転の場合、室内ではファンの音が、ほとんど気にならない。運転音が小さいので使いやすい。
- 弱運転の場合でも、1つあたり50㎥/h吹き出すので、容積24㎥の6畳個室や、31㎥の畳個室には十分だと思われること
- 本体が小さく、木製ガラリ、樹脂ガラリなど、様々な材質の床ガラリと、組合わせて使えるので、インテリアとして違和感が無いこと。
- 作動時に扁平気流を2.5m吹き上げることができること。天井高さくらいまでは空気を吹き上げることが出来る。
- 1台のコントローラーで、ファンを5台まで作動できること
室内干しと、お風呂の残り湯をサーキュレーターで攪拌して湿度管理
冬の理想的な室温と絶対湿度はザックリ、室温21℃~23℃、絶対湿度11g/㎥以上で、上記の表の赤で囲った範囲です。
(参考)絶対湿度とインフルエンザの関係
宮城県医師会より
〜7g/㎥ :より起こりやすい
7〜11g/㎥:流行しやすい
11〜g/㎥ :流行しにくい
Q1.0住宅 小幡の家の冬の湿度調整方法は、上の写真のように、ユニットバスのお湯を残して、脱衣室の床にサーキュレーターを置いて廻して加湿しています。ガス乾燥機の乾太くんを使っていますが、あえて室内干しもしています。加湿器は使っていません。
Q1.0住宅 小幡の家の冬の各部屋の温度と湿度
Q1.0住宅 小幡の家の各部屋の室温は22度くらいです。床下エアコンから遠い部屋も暖かくなっています。
施主は、室温23度になると、寝苦しい場合があるとのことで、今のところ、室温22度くらい、絶対湿度9~10g/㎥くらいが、ベストな室温と湿度なのだと思います。
室温22度の場合、理想の絶対湿度は11g/㎥ 以上です。そうなると、インフルエンザも流行しにくくなります。
Q1.0住宅 小幡の家では、ユニットバスの残り湯や洗濯物を室内干しすることで、冬の絶対湿度も理想に近づいていますが、絶対湿度11g/㎥ 以上にするには、もう少し加湿が必要です。具体的には、現状にプラスして加湿器を使うと、理想的な湿度になると思います。
しかし、室内には既に、置き家具や、大きめな空気清浄機等も置いてあるので、加湿器の置き場所をどこにするのかも、難しそうです。今後を見守りたいと思います。
断熱気密性能の高い家は、冬もエアコンをガンガン廻さなくても、室温を快適な21~23度くらいにしやすいことが分かります。
高性能住宅の温湿度管理と病気
病院の入院室では、快適な室温の21℃~23℃にするために、エアコンを長時間廻して室温を維持しています。病院の構造はコンクリート造や鉄骨造のことが多く、窓ガラスも1枚だけのアルミサッシが殆どで、断熱性が低い建物が多いからです。
それに対して、Q1.0住宅レベル2以上の高性能住宅では、断熱気密性能が良く、真冬と真夏にエアコンが効きやすい。エアコンを長時間廻すことなく、ローコストで病院のような快適な温湿度にできます。そうなると、体が冷えないので、普段の生活で免疫力が維持しやすくなります。具体的には、高性能住宅は、室温を21~23度に維持しやすいので、加湿しても十分に水分量を溜め込めて、冬の理想的な絶対湿度である、11g/㎥以上に近づけやすい。そうすると、喉がイガイガしないし、肌も乾燥しにくく、ウイルス活動も抑制されるという効果があります。
Q1.0住宅 小幡の家の断熱気密性能と冷暖房容量
Q1.0住宅小幡の家は、Q値0.92W/㎡K。これくらいの断熱性能があると、施主が、温度と湿度を理想に近づけやすい。
夏は、窓の外で日射遮蔽すると、室内に日射熱が入りにくく、ローコストで室内の温度管理がしやすい
気密性能は、隙間相当面積0.4。総相当隙間面積54㎡は、切手9枚分。気密性が高いほど、隙間風が入って来ないので、室内の温湿度管理がしやすい。
一方、気密性が低い住宅では、窓や壁の隙間から外気が流入するため、室温が不安定になりがちです。気密性が低いと、換気システムも正常に働きずらくなり、湿気を外に排出しにくくなるので、カビやダニが発生する原因にもなります。
冷暖房容量を想定できる、設備容量計算シートを見ると、計算上は、暖房1552.1W(1.55KW)、冷房1608.7W(1.61KW)以上あれば良いので、暖房・冷房共に、2.2KWの6畳用エアコンが1台あれば、良いということになります。
余裕をみて、暖房用で10畳用のエアコンを床下暖房で1台と、主に冷房用で、2階リビングの吹抜けの前に、10畳用のエアコン1台の、合計2台採用しました。
暖房用の床下エアコンは三菱エアコンの霧ヶ峰の値段の高くない機種をワイヤードリモコン仕様で、壁に設置した固定リモコンで室内温度を感知しています。冷房用の2階リビングの壁付けエアコンも、日立エアコンの高くない普通のもので、吹抜けの前に設置しました。
ただし、吹抜けが住宅の真ん中ではなく、端っこだったので、一番遠い1階の個室には冷気をイマイチ送ることが出来ず、引き渡しの直前に6畳用のエアコン1台を補助的に付けて、より快適さを増しました。2024年9月7日に引っ越ししましたが、夏に個室の補助エアコンを点けたのは、1回だけとのことです。
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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