2024-07-15
Q1.0住宅 宇都宮小幡の家(宇都宮市)

室内塗り壁の不具合が多いのは、吊戸棚廻りです。その理由を話します

左官職人による漆喰塗り。家具などを覆っている半透明シートが養生

先週7/12金曜日。Q1.0住宅小幡の家は、室内の漆喰塗りと玄関のタイル貼りが完了しました。左官職人が施工をする工事です。

漆喰塗りの最終日の作業内容は、養生剥がし、細かい所の補修作業、清掃です。

漆喰塗りの場合の養生とは、室内のドア枠・窓枠・家具等の木部や、キッチンなどの住宅設備に漆喰が付かないように、仮設の薄い半透明シートやテープで覆うことです。

漆喰などの、室内塗り壁の不具合は、木部や住宅設備との「取り合い」に起きやすいので、確認が必要になります。

「取り合いの状況」は、養生を剥がしてからでないと分からないので、あらかた養生を剥がし終わった、11時過ぎに現場に確認に行きました。

この場合の「取り合い」とは、ドア枠・窓枠・家具・巾木等の木部や、キッチンの吊戸棚や抽斗(ひきだし)などの住宅設備機器と、漆喰のジョイント部分のことで、室内には無数にあります。

室内塗り壁の不具合が多いのは、吊戸棚や抽斗廻りです。その理由を話します

2階ミニキッチン吊戸棚部分。天井と吊戸棚キャビネットの取り合い部。キチンと漆喰が塗れていない

私が見つけた漆喰の不具合は、2階のミニキッチンの吊り戸棚廻りの漆喰が、キチンと塗れていなかったこと。

原因は、吊戸棚のドアを外さないで、漆喰を塗ってしまったからです。

私がこの不具合に気が付いた理由は、扉の養生を外した形跡が無かったからです。

何かオカシイと思って、脚立を用意して、扉の養生を外し、扉を外してみたら、吊戸棚キャビネット上端と天井の取り合いの漆喰が、キチンと塗れていなかったのです。

これは、室内塗り壁では「わりとありがち」な不具合となります。

室内の造作建具は、珪藻土の後に建て込むのが普通ですが、キッチンなどの住宅設備や既製品家具は、塗り壁工事の前に行うので、塗り壁が始まる時には、ドアや抽斗が付いています。その場合、必ず、ドアや抽斗を外してから漆喰や珪藻土を塗らないと、取り合い部にはキチンと塗れません。

現在気が付いている漆喰塗りの不具合は、1か所のみで、他は良い仕上がりだと感じました。照明が付いてから、再確認します。

室内塗り壁の不具合が、住宅設備機器や既製品家具の廻りで起きやすい2つの理由

この部分に、漆喰塗りの不具合が起こりやすい理由の1つは、左官職人にとっては、作業工数が多くなり面倒な部分だからです。

例えばキッチンの施工は、室内塗り壁の前に行います。その時キッチン職人は、雇われているメーカーから、後工程の職人達が、キッチンに傷を付けないように、非常にガッチリと段ボール養生するように指導されています。

ですから、左官職人がキッチンの吊戸棚や、キャビネットの抽斗廻りを施工する時の、具体的な作業手順としては、

まずは漆喰の付いた手を雑巾などで綺麗に拭いた上で→段ボール養生を剥がします。(住宅設備機器はガッチリと養生されているので、段ボールを外すだけでも、結構面倒だと感じる職人も居ます。特に高齢な職人は面倒だと感じる人が多い印象です)→それから、ドアや抽斗を取って(これも慣れてないと大変)、キャビネット廻りの漆喰を塗ってから→また手を綺麗にして→ドアを再度取付します。

この一連の工程が、平らな面を塗るよりも、かなり面倒だと感じているのだと思います。平らな面は普通に塗るだけですから。

原因の2つ目は、左官職人は、少子高齢化の影響を最も受けている職種の1つで、人が少ないことです。左官職人の平均年齢は、優に60歳を超えている印象です。

分かりやすく言うと、70歳を過ぎた高齢の職人では、余程健康状態と精神状態が良くないかぎり、上記したような住宅設備廻りの面倒な作業をするのは難しいと感じています。

左官職人が居ないので、左官職人の貸し借りが行われています

現実に、左官職人が居ないので、左官職人の親方 (社長)が、同業の左官業者に依頼して、左官職人を貸し借りしています。左官職人の親方は、手伝いに来た職人を、厳しく指導できない場合も多いです。というのも、手伝いの職人も当然高齢で、かつ、他社の職人だからです。

そうなると、上記のように、住宅設備機器廻りは、養生材や扉や抽斗を外す作業が発生して、面倒なので、キチンと養生を剥がさずに塗ってしまう職人も出てきます。

この2つが、室内塗り壁の不具合が、扉や抽斗の付いた、キッチンなどの住宅設備機器廻りで起こりやすいの理由です。

ということで、住宅会社の現場監督にとっては、室内塗り壁工事では、住宅設備機器廻りの養生と扉を取って、キチンと塗ってもらうことが重要であり、そこは確認すべき箇所であるということになります。

左官職人が絶滅危惧種になった理由の1つは、材料造りの問題ではないか?

ちなみに、左官職人が絶滅危惧種になった理由の1つは、材料の問題もあったと思います。現在でこそ、漆喰や珪藻土は、水が入って練れている完成品で届くので、現場では機械で攪拌して塗るという作業で済みます。

しかし、ほんの7-8年前までは、セメントの袋のような粉で届いて、現場で水を入れて練っていました。それも下塗り用と上塗り用で種類が違っていたので、現場での材料造りが、結構重労働だったわけです。

完成品に近い材料が工場で造れなかったことが重労働となり、若い人が入りにくかった原因の1つではないかと感じています。

室内塗り壁の前には、木部塗装を完了させておく必要がありますが、未施工部分連発で大変でした

指差ししているのが塗装がされていない玄関框。タイルの立上りを貼ると、玄関框(木)とタイル目地が接触する状態

金曜日は、漆喰と同時に玄関ドアの内外部のタイルも施工していました。上記の漆喰の不具合部分を直してもらい帰ろうとしたら、左官の親方から、「玄関框の塗装がされていないので、どうする?」と言われました。

室内のドア枠・窓枠・巾木や造り付け家具(造作家具)は、室内の塗り壁が始まる前に、塗装職人に塗ってもらう必要があります。

ちなみに、写真のような無垢材でなく、新建材は塗装の必要がないので、工程が少なくて済み、間違いが起こりにくいという点では有利です。

先に木部を塗装しておく理由は、塗装してない木部に、タイルや漆喰などの水分を含む建材を施工してしまうと、木が水分を吸ってしまい、シミになってしまうからです。

ですから、漆喰塗り・玄関タイルの前に、必ず塗装職人による木部塗装をして、木部に水分が入らないように塗料の膜を造った上で、水分のあるタイルや漆喰の工事をします。

先の問いかけの意味は「タイルを施工してしまうと、玄関框(杉材)が塗装してないから、シミになってしまうけど、どうする?」ということでした。

色付きの塗料であれば、塗ってあるかは一目瞭然なのですが、当社も含めて、一般的に室内の木部塗料は、透明のオイルステイン仕上げが殆どです。塗装が完了しても透明なので、なかには見ただけでは、塗ってあるかが分からない部分もあります。

オイルステインとは木材に染み込んで着色してくれる「ステイン塗料」の一種です。

今回は、珪藻土塗りの前の、木部の塗り忘れが多数あって、その都度、塗装職人に指摘して、何度か塗りに来てもらっていました。

タイル職人も、今日玄関タイルを貼らないと、いつ来れるか分からない上に、2度来ると余分に費用が発生するということで、玄関タイルの框塗装は、待った無しです。

あわてて塗装職人に電話すると、病院にいるので、行けないとのこと。

塗料は現場にあるので、私が玄関框を塗る羽目になってしまいました。涙。

玄関框は、1.6Mくらいだったので、なんとか短時間で終わりましたが、金曜日の午前中は、不具合の2連発で疲れました。

当社の室内塗り壁は、珪藻土ではなくて、漆喰になりました

今まで、室内塗り壁は、けいそうくんフィニッシュワンを使っていましたが、鎌倉漆喰を使うことにしました。

どちらも、ワンウィルという同じ会社の建材です。

けいそうくんは、20年近く使っていますが、製造者から電話で、「吉田さんが長年使ってきた、けいそうくんは、今は鎌倉漆喰という名称になっている」と言われたからです。

当社のショールームの壁天井は、20年近く前のけいそうくんなのですが、色と質感は鎌倉漆喰にとても良く似ています。

どうりで、ワンウィル以外の漆喰メーカーの方が、ショールームに来場された時に、「この壁、珪藻土ではなく、ほぼ漆喰ですよ!」と言われていたことを思い出しました。

鎌倉漆喰は、漆喰と珪藻土のいいとこ取り!のようです。

室内漆喰塗り壁の工程

2階勾配天井足場

まずは、左官作業前に足場を架けます。床面は養生シートの上に、薄いべニアを敷いて、漆喰作業中に高所から、鏝などのモノを落としても、床が傷つきにくくしています。

吹抜けにも足場を架けます。吹抜けや勾配天井があることで、足場などの仮設工事は多くなります。

家具等の木部養生してから、石膏ボードの繋ぎ目とビス頭をパテ処理

左官業者の材料置き場。パテ処理されている。

天井杉板貼りの部屋は、天井は漆喰塗する必要が無いので、左官業者の材料置き場となっています。

乾太くん台の上に載って、脱衣室の壁に漆喰を塗っているところ

各部屋、天井を仕上げてから、壁を仕上げるという順番で、仕上げていきます。

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

この記事をシェアする
コメント