「プレカット」によって大工の作業が時短された代わりに、「的確で美しい断熱施工」が大工の重要な仕事になっている
6/17(月)に上棟した、宇都宮で建築中の小さなQ1.0住宅SH-house。
現在、木造住宅の構造材や羽柄材(はがらさい)は、工場であらかじめカットして現場に搬入される「プレカット」が当たり前の時代です。
プレカットが主流になり、構造材や羽柄材を刻む(加工する)機会がほぼ無くなったので、現場や作業場でノミや鉋(かんな)を使う大工の仕事は減りました。
現場で鉋をかけて、透けるように薄く長い鰹節のような木材をヒラヒラさせているのが「腕の良い大工だ」とのイメージの方も多いと思いますが、今は違います。
プレカットで大工作業が時短された代わりに、「的確で美しい断熱材と気密部材の施工」が、現場での大工の重要な仕事になっています。
その「大工が行う断熱・気密施工」は快適性・省エネ・健康をも左右する、最重要の要素になっているのですが、そのことを知る「住まい手」は少ないです。
当社ではそれにプラスして、大工や建具職人や家具職人がつくる造作建具や造作家具を標準仕様にして、違和感のないインテリアで、かつ長く使える内外装にしています。
構造材と羽柄材はできるだけプレカットにして、大工さんには「断熱材と気密部材の施工」と「造作材の削りもの(無垢材の窓枠やドア枠の加工、大工の造る家具など)」に力を入れてもらうのが良いと思いました。
上棟後の1週間の現場の様子
上棟翌日に屋根下地のゴムアスファルトルーフィングを貼って、人間が傘を差したような、構造体が濡れない状態にした後は、構造金物を付けて骨格を整え、間柱を建てて建物のシルエットがわかるような状態になってきています。
そのあと、2階部分のサッシ廻りの下地木材である「窓台とまぐさ」を付け終わり、外壁の耐力面材のダイライトMS12mmを貼り始めました。
基礎スラブ上、全面に断熱材を貼る場合は、工程が少し違う
2階は耐力面材を貼り、桁上断熱用の床合板をはってから、1階に降りて基礎スラブ上の断熱材を貼ります。
1階は基礎スラブ上全てに断熱材を貼るため、普通の木造とは工事の進め方が少し違います。
1階部分は、今日月曜日6/24に、木部のホウ酸による防蟻処理をして、乾いてから基礎スラブ上の断熱材を貼る工程です。
その後、床下配管をして、床の剛床を貼り金物を付けて、間柱を建て、1階部分の耐力面材を貼ります。
プレカットとは?
プレカットとは、木造住宅に用いられる構造材(土台・柱・梁)と羽柄材(屋根垂木・間柱・破風)をプレカット工場であらかじめ機械で加工し、現場では、ほぼ組み立てるだけという工法です。
プレカットされた材料は、通常建て方の時に1階もしくは2階の床上にクレーンで搬入しておきます。
プレカットも、どこまでやるのか各住宅会社でバラバラですが、このお宅のように屋根垂木や破風はもちろん、「窓廻りの下地木材まで含めた間柱も全て、ブレカットしておく」と良いと感じました。
木造住宅で使う木材の種類は大きく分けて3種類
木造住宅で使う木材は大きく分けて、「構造材」「羽柄材(はがらざい)」「造作材(ぞうさくざい)」の3種類に分類される。
構造材とは、土台・柱・柱・梁など「家の骨格となる木材」のことを言います。
羽柄材は、屋根垂木・間柱・破風等、「床と壁と屋根の下地となる木材」で、骨格となる土台・柱・梁等の「構造材」と、フローリング・天井板・巾木等の目に見える仕上げ木材である「造作材」の中間に位置して、「つなぎ役となる木材」です。
窓廻りの下地木材である「窓台とまぐさ」もプレカットしたので早く正確になった
サッシ(窓)の廻りは、木材で囲いその木材にサッシを固定します。
サッシ下の、床と並行な木材を「窓台」、サッシ上の木材を「まぐさ」とか「窓まぐさ」と言いい、これが窓廻りの下地木材となります。
今回、窓廻りの下地木材と、壁と床の気密シートの受け材になる30×105断面の木材もプレカットにしたので早くに正確になりました。どちらも杉の乾燥材です。
今までは、現場で私が「窓台」と「まぐさ」の位置だしをして、大工さんが木材をカットして取り付けていたので、現場でこの工程が無くなりました。
大工さんに聞いたところ、栃木県では、窓廻りの木材までプレカットしている工務店は少ないとのこと。
窓廻りの木材も一切現場で切る必要が無いので作業が早く、間違いも少なくなる上に、木材の切れ端ゴミも出ません。
出来るだけプレカットする部分を多くして、現場での大工工事を時短することは、「断熱気密工事」や「造作工事」の時間が増えることにも繋がるし、現場管理者も時間が増えるので、様々な箇所をチェックできます。
窓台とまぐさ部も柱を欠込せずにプレカットにした
通常、プレカット工場に何も言わずに注文してしまうと、柱の窓台とまぐさの「ジョイント部分」は柱が「コの字」に欠込まれて(窓台とまぐさの入る溝が掘られて)現場に納入される。
「柱の欠込み」は、柱の断面が欠損するため弱くなるので、「欠込み」は無いほうが良いという考えで、今回の現場から「柱に欠込み」を設けない仕様とした。
窓台下とまぐさ上の柱の両脇に、間柱で添え木をして「窓台とまぐさ」を納めました。
瑕疵保険会社(当社は住宅保証機構に依頼)の検査員も、構造体の検査に来た時に「窓廻りも含めた間柱と筋違等の羽柄材のプレカット」を見て、「ここまでブレカットしているの?!」と驚いていました。
宇都宮市市内でも羽柄材までプレカットするのは、まだ珍しいのだと思います。
剛床と柱下部の取り合いは剛床の上に、30×105の間柱を全て設置し、より気密性の高まる構成とした
外周壁の、壁の断熱材が入る剛床と柱下部の取り合いは、28mmの剛床の上に、30×105の間柱を全て設置して、これに石膏ボードの下端を留め付ける納まりとした。
この間柱の受け材があると、あらかじめブチルテープを貼っておき、その上から気密シートが確実に貼れる。
また気密シートを受け材と石膏ボードでサンドイッチして、確実に気密シートを「面」で押さえられるので気密が高めやすい。
この間柱も工場で全てプレカットして搬入したので、現場でカットする工程がない。
窓台とまぐさ部の柱を欠込みしない方法と、剛床と柱下部の取り合いに受け材を設ける方法は、間柱の材積が多くなり、少し値段が高くなりますが、柱の欠損がないため弱くならず、気密性がより高まるという考えて標準仕様とした。
また、外壁上部の気流止めは石膏ボードを桁まで貼り上げ、気密シートを押さえる工法を標準としている。
石膏ボードを壁の上下の、受け材と桁で留め付けて、壁中に火に強いグラスウール断熱材をいれる仕様は、火災が壁の中を走りにくいファイアーストップの効果もある。
非常に燃えにくいというのは、発砲系断熱材に対して、グラスウールの最大の優位点でもある。
上記写真の丸いマシュマロのようなものは、「現場で吹いたウレタン」。
ウレタン下には金物がある。
金物は熱伝導率が高いので、外壁に面する「金物の座彫り部」から「冬は室内側の熱が逃げない」ように、「夏は外から熱が入らない」ように断熱するためにウレタンを吹く。
「お待たせしました。お待たせしずぎたかもしれません。昭和最後のエロ事師、村西とおるでございます」。積読していた本をやっと読み始めました。面白い、面白すぎて、ほら貝笛を吹きながら読んでますw。様々な事件が目の前で起こっているような臨場感。著者は本橋信宏さん。他の本も読みたくなります。
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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