2019-04-15
Q1.0住宅宇都宮の家 SH-house(宇都宮市)
家庭のエネルギー
高断熱・高気密住宅

Q1.0住宅SH-houseのQPEX(キューペックス)による温熱シュミレーションデータを説明します

 

Q1.0住宅SH-houseのQPEX(キューペックス)による温熱シュミレーションデータを説明します。

 

家の断熱性能は、住み心地と健康と光熱費という「3つの暮らしの重要事項」に直結するので、なるべく断熱性能が高い家を建てるべきです。

 

しかし、断熱性能が高い家を造るにはお金が掛かるので、断熱性能とコストと地域の気候をバランスさせる必要があります。

 

そこで必要になるのが、設計時のQPEX(キューペックス)等の温熱シュミレーションソフトと、完成後の温湿度の実測です。

 

また、断熱性能だけ良くても長く快適に暮らせる家にはなりません。仕上げ材の選択も含めてカッコいい家、メンテナンスコストの掛かりにくい家にする必要があります。

 

今日のブログは、

  • Q1.0住宅の断熱仕様と暖房の種類がどのように決まったのか?
  • 内外装仕様がどのように決まったのか?
  • Q1.0住宅とは何なのか?
  • 温熱シュミレーションソフトQPEXの性能計算結果データを説明します。
  • SH-houseのQ値、UA値、自然温度差
  • SH-houseの平均外気温と平均室温
  • SH-houseの暖冷房負荷計算結果
  • 月別暖冷房負荷のグラフと年間の暖冷房費(年間の家の燃費)
  • 温熱シュミレーション以上に大切な、完成後の温湿度の実測

 

を書きます。

 

長文になりますが、5分程度で読めますのでお付き合いください。

 

断熱仕様と暖房の種類がどのように決まったのか?

SH-house断熱仕様と冷暖房設備

 

SHさんには、当社施工のQ1.0住宅であるSI-houseを訪問して頂き、使用中の収納内部や床下まで見せて頂くと共に、冬と夏の住み心地や燃費、設計施工中の様子などについて、ご家族同士で、ざっくばらんにお話しして頂きました。

 

SI-houseでは、冬の2年と夏の1年に渡って、データロガー(温湿度計測器)で、床下も含めた6箇所の温湿度計測をさせて頂き、施主のSIさんも小まめにデータロガーと自分の温湿度計で、室内の温湿度を確認していたので、住まい手の実感を、私よりも雄弁に話して頂けたのでした。

 

SI-houseの温湿度の実測と年間光熱費はこちらをご覧ください。

 

【更新】栃木県宇都宮市で建てたQ1.0住宅の年間光熱費と、冬と夏の室温の計測結果を公開

 

Q1.0住宅(キューワン住宅)の無暖房状態での夜から朝にかけての外気温と室温の変化をカメラに収めた

 

その時に、断熱仕様の目安となるQ値は、SI-houseの断熱仕様と実測データを参考に1.35以下。暖房は床下エアコン、冷房は壁掛けエアコンの1台ずつにすることにしました。

 

Q値1.35以下にしておけば、基礎の立ち上がりを無くすような特殊な基礎にしなくても、各個室のドアを開けておけば、床下エアコンにより、37坪2階建ての住宅の室温が、ほぼ一定になるということが、分かりました。

 

LDKの床下エアコンから一番遠い、「直線距離で約10M、歩行距離で12M離れた玄関ホール」でも、ドアを開けておけばLDKとの温度差は2度くらいでした。

 

またSI-houseは、準防火地域という窓ガラスの種類が網入りガラスと規制される地域であったので、トリプルガラスサッシは使えなかったのですが、SHさんのお宅は窓ガラスの規制されない地域だったので、窓も南面以外は、ほぼAPW430とトリプルガラスを採用出来て、より断熱強化が出来ました。

 

また、先日のブログにも書きましたが、基礎断熱のスラブ上全面に断熱材を敷くことにより、断熱性能を向上させて、よりいっそうの低燃費と室内温度の均一化を目指しました。

 

その結果SI-houseのQ値は1.19 w/㎡Kになりました。

 

このように断熱仕様と暖房の種類が決まりました。

 

内外装仕様がどのように決まったのか?

当社が、造作建具・造作家具・造作キッチン・無垢材を使って家づくりすることを得意としていたことも、当社にご依頼頂いた要因だと思います。

 

断熱性能だけでなく、意匠(内外観デザイン)にも配慮しないと、暮らしは豊かにならないものなのです。

 

私の建てる住宅は、豪華さとは無縁ですが、簡素で住み心地の良い、機能性の高い、メンテナンスコストの掛かりにくい家を目指しています。

 

造作建具、造作家具はそのためのアイテムで、シンプルに違和感なく造るのは当然として、例えば下駄箱の中が湿気で靴が蒸れないように扉に穴をあけたり、施主が使いやすいシンプルな造作キッチンを造ったり、本とレコードが同時に納まりやすい本棚を、施主と打ち合わせて造ったりします。

 

作家の林真理子氏によると「家を建てる、インテリアを変えるというのは、それまでのその人の美意識、教養の集大成」とのこと。私もこの意見に完全に同意しますし、そのお手伝いをしたいと思います。

 

内外観は自然で、長く使えて、施主のキャラクターに合っていないといけません。

 

Q1.0住宅(キューワン)とは何なのか?

Q1.0住宅とは、私も所属している新住協が名付けた「超省エネの高断熱住宅」のこと。

 

国の現行の次世代省エネルギー基準(一般的な長期優良住宅の省エネ基準)よりも、 はるかに断熱性能が高く、冬は太陽熱を室内に取り込む事で、暖房費が従来の半分以下で快適に暮らせる住宅がQ1.0住宅です。

 

Q1.0住宅には、準Q1.0からQ1.0のレベル4まで、燃費により5つのレベルがあり、

この5つがQ1.0住宅になります。ちなみにレベル4が最高の燃費になります。

 

次世代省エネ基準の家を、家じゅう暖冷房した時の消費エネルギーを100%とした場合、

 

  • 「50%以下の消費エネルギー」で暖房できる家が「準Q1.0住宅」
  • 「40%以下の消費エネルギー」で暖房できる家が「Q1.0住宅レベル1」
  • 「30%以下の消費エネルギー」で暖房できる家が「Q1.0住宅レベル2」
  • 「20%以下の消費エネルギー」で暖房できる家が「Q1.0住宅レベル3」
  • 「10%以下の消費エネルギー」で暖房できる家が「Q1.0住宅レベル4」となります。

 

ちなみにSH-houseは、「Q1.0住宅レベル2」です。次世代省エネ基準の家に対して、70%以上省エネになっています。

 

Q1.0住宅の中で最高に低燃費なのは「Q1.0住宅レベル4」ですが、レベルが上がるほど、断熱に関係する費用も上がります。

 

しかし、「Q1.0住宅レベル4」にして断熱性能と燃費だけ良くても、内外装仕上げ材にお金が回らずに、カッコ悪い家だったり、リフォーム費用が掛かりすぎる外壁材の家になっては、良い家とは言えません。

 

断熱材と同様に仕上げ材の質も大切なのです。

 

ですから、低燃費(断熱性の高さ)のみを追求するのでなく、断熱性能とコスト及びデザイン性をバランスさせる必要があります。

 

それが各会社の個性になっているのだと思います。

 

準Q1.0住宅もQ1.0住宅として認めているのは良いことだと思います。高性能住宅も裾野を広げるのは大切だと思いますし、性能とデザインのバランスが取れている住宅が良い住宅だと思うからです。

 

先にも書きましたが、燃費だけ良くても、室内が新建材のドアだったり、リフォーム費用が掛かりすぎる外壁材の家になっては、カッコ悪い上に、結果としてリフォーム費用が掛かってしまうこともあり、良い家とは言えませんからね。

 

QPEX等の温熱シュミレーションソフトで計算して、完成後に住まいの温湿度を実測していないと、コスト面で断熱性能とデザイン性とバランスさせることもできません。

 

温熱シュミレーションソフトQPEXの性能計算結果データを説明します

一番上の表は、温熱シュミレーションソフトQPEXで出力できる、SH-houseの性能計算結果です。

 

この表からは以下のことが分かります。

 

  • 断熱性能
  • 自然温度差
  • 各月の平均外気温と平均室温
  • SH-houseはQ1.0住宅のどのグレードなのか?
  • 次世代省エネ基準に対して暖房費用は何%削減になっているのか?
  • 暖冷房負荷計算結果
  • 月別暖冷房負荷のグラフと年間の暖冷房費(年間の家の燃費)

 

次は表を個別に分解して説明します。

 

SH-houseのQ値、UA値、自然温度差

Q値1.19、UA値0.36、自然温度差7.95度と、断熱性能はかなり高スペック。

 

■Q値=熱損失係数です。Q値の数値が低いほど、断熱性能が高いとなります。

 

Q値 = (各部の熱損失量の合計 + 換気による熱損失量の合計) ÷ 延べ床面積

 

Q値が小さい家は、熱が逃げづらい家であり、冷暖房の効率がよく省エネ性能が高い家だということになります。

 

 

■Ua値=外皮平均熱貫流率です。熱が家の外に逃げやすいのかを表す数値で、Q値と似ていますが、少しだけ違いがあります。

 

Q値と違い、Ua値は換気による熱損失まで計算する必要がなく、延床面積ではなく外皮面積で割るため、計算式が簡単になっています。

 

Ua値 = (各部の熱損失量の合計) ÷ 延べ外皮面積

 

実際に、暖冷房料金を考慮した家の断熱性能を知りたいなら、UA値でなくQ値で考えたり、比較検討するのが良いです。

 

 

■SH-houseの自然温度差は7.95度です。

 

自然温度差7.95度というのは、外気温度が0度の時、暖房しなくても室内温度は7.95度あるということです。

 

自然温度差=(室内発生熱+日射取得熱)÷熱損失係数です。

 

この式からわかることは、日射取得熱が大きいほど、熱損失係数(Q値)が小さいほど、自然温度差は大きくなります。

 

だから、断熱性能をよくすると共に(Q値を小さくする共に)、南面から日射取得熱を上げることが、冬に省エネで快適に暮らせるコツになります。

 

冬の昼間に南面の窓のカーテンやレースカーテン、ハニカムサーモスクリーンを降ろすのは省エネになりません。

 

1月の宇都宮市の平均気温は2.5℃なので、自然温度差7.95℃であれば1月に暖房なしで平均的に室温が10.5℃ぐらいに保てるという事です。

 

宇都宮市の1月の最高気温は10度以上になる日も多いですから、その場合は、自然温度差により無暖房で室内は18度くらいになります。

 

SH-houseの平均外気温と平均室温

この表を見ると、暖冷房の必要な期間が分かります。冷房DD、暖房DDと記載のある、赤色と水色で薄く染まっている部分が、 それぞれ暖房と冷房が必要な期間となります。

 

赤色と水色に染まっている範囲が少ないと、暖冷房する必要が無いので、光熱費は安くなります。

 

SH-houseの暖冷房負荷計算結果

 

Q1.0住宅とは何か?の欄でも書きましたが、SH-houseは、「Q1.0住宅レベル2」です。次世代省エネ基準の家に対して、72.1%の省エネになっています。

 

月別暖冷房負荷のグラフと年間の暖冷房費(年間の家の燃費)

年間の暖房費は、12,060円。年間の冷房費は3,228円。合計15,288円です。

 

温熱シュミレーション以上に大切な、完成後の温湿度の実測

SI-houseの冬の温度と考察

 

上記は過去に実測したSI-houseの冬のある寒い日の2日間の温度データを実測してまとめたものです。

 

完成引き渡し後には、SH-houseでも室内の何か所かで、温湿度の実測をさせて頂くことになっています。

 

また、年間の光熱費も教えて頂いたら、ブログに書きたいと思います。

 

設計時の温熱シュミレーションと完成後の温湿度の実測をして、その後の設計をより良くしたいと考えています。

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

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