2014-03-14
研修会・展覧会

講師

昨日は、管理建築士研修会受講でパルティ栃木へ。
これは、5年に一度の研修会。
この他にも建築士の為の定期講習会というのが3年に一度。
両方とも、姉歯事件の影響で出来た制度。
終日研修を受ける。
1冊のテキストを使い4人の講師が各章を担当しながら講義が進む。
「建築士事務所のリスク管理」の章の講師は保険会社の方。
講義が進むうちに、設計者の図面どおりに施工して不具合が出た場合の話になる。
以前は、図面どおりに施工して不具合が出ても、それを設計者のせいにする施工者は居なかったとの話。
要するに、設計者のミスは本来、設計者が悪く責任を取るべきだが、景気の良かった時代は、全部責任は施工者が被ってくれた。しかし、経済状況の悪化から、施工者が責任を取ってくれなくなったとの話。それが原因で保険が使われるようになっていると興味深い話を聞く。
建築は受注産業だから、エンドユーザー(お客さん)が直接、専業の設計事務所に依頼すると、施工者である工務店、ゼネコンは、設計事務所の下請けになる。設計者のミスも施工者が被ることが多々あり、施工者は文句が言えなかったのだ。景気の良い時代は、後で仕事を貰えれば、今回の設計事務所のミスは私が被りましょうということが多々あった。
今は、仕事が無いから、施工者がミスを被ってくれないと。
で・・・そこからが問題。
講師曰く、
今日は専業の設計事務所の方ばかりでなく、
設計施工で行う工務店の方もいらっしゃるので、言いにくいのですが・・・。
と前置きして、
(今後)設計者の図面どおりに施工して不具合が出た場合
「施工者のせいにしてしまいましょう」
「施工者のせいにすることが、業界の慣例になれば、裁判所も納得しますから」
と。語句は多少違うかもしれないが、そういう内容を話し始める。
専業の設計事務所の方々からのお金によって生活している保険屋さんだから、
設計事務所の為にというのは分かるが間違っている。
設計事務所登録している工務店は、施工者用の任意の工事保険に入るから、
この講師が売っている建築士専門の賠償責任保険には通常入らない。
工務店は、この講師の保険のお客さんではないのだ。
だから、施工者の前でそういう話をしたのかもしれないが、こんな話を聞くと
アホな設計者がこの講師の言うようにしないとも限らない。
施工者もバカではないから、設計者と施工者の争いも発生するだろう。
造り手側が争っていたら解決にならないのだ。
この研修会のきっかけになった姉歯事件の仕事の流れは確か設計者➟施工者でなく、
この逆で、コンサル➟施工者➟設計者➟下請設計者(姉歯)という仕事の流れで起きた事件だったはず。
何度もいうけど、住宅建築(建築)は受注産業だから、お客さんの一番近いところで、契約した元請が力を持つのだ。だから、工務店なり設計事務所なり元請の裁量が高いと造り手側の円滑な仕事につながり、お客さんも良い状態というかスムーズに仕事が進み良い建物が出来る。逆に低いと姉歯事件のようになる。
そういうリスクを取らない為にも、住宅建築では元請になる必要があるのだ。
ミスを少なくする、正しい講義内容は、「施工者のせいにしてしまいましょう」
「施工者のせいにすることが、業界の慣例になれば、裁判所も納得しますから」ではなく、
ミスをしないような安全な設計、安全な納まり(変わった形態でなく普通の信頼性ある設計
)。及び施工にしてください。だろう。
分かりやすい講義をしてくれた講師だったが一言多かった。
注文住宅 リフォーム 工務店 栃木県宇都宮市 ヨシダクラフト

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

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