中古住宅を購入するときに既存住宅状況調査(ホームインスペクション)をするべきか? 既存住宅状況調査を行うメリット・デメリット
9月26日(水)に、栃木県建築士会主催の既存住宅状況調査技術者講習の「新規講習」を受けてきました。10時から18時までの1日掛りの講習会でした。
以前のブログにも講習を受けることを書きました。既存住宅状況調査技術者講習は、建築士会で受講するのがお得な3つの理由
既存住宅状況調査技術者とは、中古住宅の状況調査 (住宅診断、又はホームインスペクションとも言う)ができる唯一の公的資格です。
今日のブログは、これから中古住宅を買ってリフォームする人、または中古住宅を売ったりする人には、関係する話になります。新築をする人も、建てた後は中古住宅になりますから、一応ザックリ読んでください。
不動産業者は、中古住宅の売主と買主に対して、ホームインスペクション(住宅診断)を利用する意思があるかどうかを確認することが義務化された
2018年4月1日以降、不動産業者は、中古住宅の売主と買主に対して、媒介契約時にホームインスペクション(住宅診断)のことを説明し、インスペクションを利用する意思があるかどうかを確認することが義務化されました。
中古住宅の売主と買主は、不動産業者から、インスペクションするかどうかについて必ず説明を聞くことになります。
ちなみに媒介契約とは、不動産業者と売主、買主が結ぶ契約のことです。具体的内容は、売主ならこの中古住宅を売ってください、買主なら家を探してくださいという時に結ぶ契約のことです。
既存住宅状況調査技術者とは?
既存住宅状況調査技術者とは、国土交通省に登録された講習機関が行う、「既存住宅の状態を調査するための講習」を修了した建築士のことです。
重要なのは、既存住宅状況調査技術者が全員建築士であること。受講資格が建築士のみのため、一級建築士、二級建築士、木造建築士のいずれかの資格が無ければ、既存住宅状況調査技術者の講習を受講することができません。
今まで、ホームインスペクション(住宅診断)関連の資格は数多くありましたが、建築士であることを受講条件としていたケースは少なく、普遍的な建築知識や実務経験を持っていない、例えば、住宅建築の現場を知らない営業マンの方でも、講習と簡単な試験で、民間団体のホームインスペクション資格を取得していました。
経験のある建築士でさえ中古住宅の状況を正確に判断するのは難しいのに、建築士でない(建築の基礎知識を持っていない)ホームインスペクターが住宅診断するのは無理があり、不具合が起きたので、国の意向で、建築士のみが既存住宅状況調査技術者になれるようにしたのだと思います。
今後は、既存住宅状況調査技術者以外の、ホームインスペクション資格は価値が無くなります。
中古住宅を買ったり売ったりするときに、住宅診断(ホームインスペクション)を依頼する場合は、既存住宅状況調査技術者を持っている者か、どうかが重要なチェックポイントとなります。
既存住宅状況調査技術者の具体的仕事
- 改正宅地建物取引業法の建物状況調査
- 既存住宅売買瑕疵保険の現況調査
- 長期優良住宅化リフォーム推進事業でのインスペクション
- 住宅リフォーム工事の設計・施工に伴う事前調査
- 中古住宅購入前の判断としての建物状況調査
- リフォーム工事前の建物状況調査
調査は目視調査が基本で、床下や天井裏には入らないで調査することが基本となります。既存住宅状況調査は、建物の瑕疵の有無を判定するものでなく、瑕疵がないことを保証するものではありませんが、建物の現況を把握できる客観的判断の1つになると思います。
既存住宅現況検査技術者と既存住宅状況調査技術者との違いは何か?
私は今現在、既存住宅現況検査技術者という資格を持っていますが、その資格が廃止されて既存住宅状況調査技術者に移行になります。
2つの資格は名前が似ていますが、大きな違いは、既存住宅現況検査技術者が建築士の資格がなくても取得出来たのに対して、既存住宅状況調査技術者は建築士のみが取得できる資格です。
平成28年改正された宅地建物取引業法の建物状況調査を行うには、建築士の資格が必要とされて、既存住宅現況検査技術者に代わって、既存住宅状況調査技術者の資格を設けたという形です。
既存住宅現況検査技術者には、建築士の資格を持っている人は多くいて、建築士の多くは既存住宅状況調査技術者の講習も受けて資格の移行をしている人が多く、もしくは新規に資格取得をしています。
中古住宅を購入する時に既存住宅状況調査を行うメリット・デメリット
中古住宅の買主が、購入前に既存住宅状況調査(ホームインスペクション)を行うメリットは、
- 購入前に中古住宅の現況と問題点をザックリ把握出来る。
- 購入後に必要なリフォーム費用がある程度分かって、ザックリ計画ができる。
- 既存住宅状況調査(ホームインスペクション)をすることにより、購入するかしないかの判断材料に出来る。
中古住宅の買主にとって、既存住宅状況調査を行う最大のメリットは、その中古住宅を購入するかしないかの判断材料にできることです。
ただし、解体を伴わない目視調査が基本なので、その中古住宅の状況が全て分かるわけではありません。中古住宅の状況を把握するのには限界もあることから、ザックリ把握できるのが重要だと書きました。
私は、中古住宅を買う時には、既存住宅状況調査(ホームインスペクション)を行い、購入の判断材料にするのが良いと思います。
中古住宅を購入する時に既存住宅状況調査を行うデメリットは、無いような気がします。
中古住宅の売主が既存住宅状況調査を行うメリット・デメリット
中古住宅の売主が既存住宅状況調査を行うメリットは、自分が売る中古住宅の現況を把握することで、買主により正確な状況が伝えられることです。中古住宅が良い状況なら、自分の売りたい中古住宅の「売り」になります。
中古住宅の売主が既存住宅状況調査を行うデメリットは、売りたい中古住宅が良くない状況だと分かれば、価格を安くせざるを得なくなり、売りにくくなることだと思います。
ですから、状態の良い中古住宅の売主は、積極的に既存住宅状況調査を用いて自分の物件をPRすることもあり得ますが、基本的には、売主側が費用の掛かる既存住宅状況調査を積極的に行うことは、あまりないと思います。
中古住宅を買う時に、既存住宅状況調査(ホームインスペクション)をすべきかどうか?
今までの説明から、中古住宅を買う時は、既存住宅状況調査(ホームインスペクション)をして、購入判断にすべきだと思います。
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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