2018-04-27
リフォーム

【Q&A】屋根瓦の漆喰補修リフォーム。モルタルでなく漆喰を使う具体的理由を、瓦屋の社長に聞いてみた

現在、屋根瓦の漆喰補修リフォームをしているお客様から、下記のような質問が来ました。

 

「屋根瓦をリフォームしているが、新しい白い漆喰の色が取って付けたような白色で、今までのセメントの色と違って違和感があるが、どうなのでしょうか?」という質問です。

 

これから屋根瓦のリフォームを行う方にとっては、とても参考になる良い質問だと思いますし、そこから派生して、屋根瓦リフォームでモルタルを使わなくなった具体的理由も分かったので、ブログで取り上げます。

 

私自身も、ブログを書くにあたり、屋根瓦工事でセメントが使われなくなった理由を(想像では分かっていましたが)、今回確認のため瓦工事業者の社長に聞いたので勉強になりました。

 

質問 「屋根瓦をリフォームしているが、新しい白い漆喰の色が取って付けたような白色で、今までのセメントの色と違って違和感があるが、どうなのでしょうか?」

ヨシダクラフト様

 

お世話になります。

 

いま、屋根瓦の交換を行っていますが、瓦を貼るセメントの色は白に決められてしまうのですか?

 

屋根の棟にある四角錐のセメント部分ですが、屋根瓦が赤茶色に対して使用しているセメントが白のため、付着部分が目立っておりとても違和感があります。

 

以前は黒っぽいグレーのセメントを使用していたため目立たず違和感もなかったので、今回の白が取ってつけたように目に入ってしまうのですが、どうなのでしょうか?。

 

まだ、途中の工程であの上に目立たないように塗る予定でしたらすいません。気になったので、瓦貼りが終わる前にお聞きしたかったもので。

 

宜しくお願い致します。

 

回答 「屋根瓦の漆喰の白色はだんだん馴染んできて違和感が無くなっていきます」

屋根瓦に使う漆喰をこねているところ

S様

 

おはようございます。屋根瓦同士の隙間は、セメントでなく基本的に白い漆喰で施工します。今は、施工したばかりで、「屋根瓦の漆喰の色が真っ白」なので、以前のセメントの色と違い違和感があるかもしれませんが、漆喰の白色はだんだん馴染んできて違和感が無くなっていきます。

 

30~40年前は、瓦にあまり釘やビスを打たなかっため、瓦の固定が甘かったということもあり、セメントで接合部を固める施工法も取られたようです。

 

最近では、東日本大震災の時に漆喰が不足してセメントが使われたことがありましたが、基本的には、新築の瓦屋根工事の時やリフォームの瓦同士の隙間は、漆喰で仕上げを行います。

 

以前は隙間に粘土(葺き土)を詰めてから、漆喰を塗っていましたが、粘土(葺き土)自体が重いということもあり、既存の粘土(葺き土)を撤去して行う屋根瓦リフォームでは、粘土(葺き土)を使わず、全て漆喰で仕上げることが多いです。

 

※粘土(葺き土)とは、漆喰を塗るための下地になる土のことです。

 

瓦の工事で、なぜセメントが使われることが無くなったかというと、セメントを使うとリフォームする時に剥がすのが大変で手間が掛り、施工費用が高額になるからです。またセメントで固められていた場合、剥がす時に瓦まで割れてしまう可能性もあります。

 

ですから、セメントでなく更新性の高い漆喰を使います。漆喰の色は白と黒(濃いねずみ色)がありますが、黒が使われることはあまりなく、S様の瓦は赤茶色なので、漆喰の色は白の1択です。「屋根瓦 漆喰」で検索すると、漆喰の色は、白が多いです。

 

瓦屋の社長に、瓦工事でセメントが使われることが無くなった理由を聞いてみた

 

●私「今、陶器瓦工事で漆喰でなく、セメントが使われることはありますか?」

 

■瓦屋社長「今は全くセメントが使われることはないですね」

 

●私「どうして瓦工事でセメントが使われることが無くなったのですか?」

 

■瓦屋社長「瓦の隙間を埋めたセメントが劣化してくると、割れたり剥がれたりするのでリフォームが必要になるのですが、瓦に付着したセメントを剥がすのに非常に手間が掛り、施工費用が高価になってしまうことから、瓦工事でセメントが使われることが無くなりました。また、どうしてもセメントを剥がす時に瓦が割れたりすることもあるのです」

 

●私「リフォームがしずらいということですね。また和瓦以外は廃盤になる可能性が高いですから、和瓦以外の瓦が葺いてある場合は、それを割ってしまうと、もう同じ瓦は施工できないということになりますね」

 

新築時に瓦屋根にする場合は、和瓦(J形瓦)もしくはS形以外の瓦を選ぶと、リフォーム時にその瓦と同じ形のものが無く、交換ができなくなる可能性がある

和瓦(J形瓦)ってコレです。長く使える可能性の高い瓦はこの形。

画像出典

陶器瓦の種類は、時が経っても部分交換できる可能性が高い「和瓦」が良いと思います。

 

和瓦(J形瓦)は、JIS規格で寸法や形状が規定されているため、瓦メーカーが違っても、基本的に交換できます。

 

しかし和瓦(J形瓦)もしくはS形以外の瓦を使うと、リフォーム時にその瓦と同じ形のものが無く、交換ができない可能性があります。

 

このページの陶器瓦の部分をご覧頂けると、屋根瓦を選ぶ時の参考になると思います。

こちらもご覧ください。

 

 

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

この記事をシェアする
コメント