これから「床下断熱リフォーム」が普及していく理由
床下に潜り込んで、床を剥がすことなく行う「床下断熱リフォーム」はフローリングや下地木材を壊さずに出来る、費用対効果の高い断熱リフォーム工事でしたが、今まで普及していませんでした。
何故かと言うと「普段、断熱材を施工している大工さんが床下に入るのを嫌がるから」です。
普及を促進する画期的方法として、
「床下断熱リフォーム」の施工を大工ではなく、床下の専門家である「防蟻工事業者(シロアリ業者)」が行う
ことが始まっています。
断熱材メーカーの中でも、旭ファイバーグラスは床下断熱リフォームに力を入れており、床下断熱リフォームの専用部署?を持ち、防蟻業者への断熱材施工の指導も行うことによって、「床断熱リフォーム」を後押ししています。
断熱施工業者を「大工」から「防蟻業者」に変え、施工指導をすることによって、今まで断熱施工をしていなかった「防蟻業者」に行わせるという画期的な試み。
次は大工(他の職人も)が床下に入りたくない理由と、床下断熱リフォームを防蟻業者が行う利点を見てみましょう。
今まで、床下断熱リフォームが普及しなかった理由
通常、新築時に断熱材を施工するのは大工なので、床下断熱リフォームもお願いしたいところですが、床下に潜るのを嫌がる大工が多いです。
理由は、昔の住宅では、土間が土の布基礎の場合が多く、一度床下に潜ると頭からつま先まで土埃だらけになる上に、虫はもちろん蛇がいる場合もあります。
床一面がコンクリートのベタ基礎でも、床下を潜り這いずり回ると、もれなく埃だらけになります。
また、大工の棟梁が「床下断熱リフォーム」をやる気がある場合でも、下の大工さんがやりたがらないケースが多いのです。今は、人が嫌がる作業を強制できる世の中では無いので、棟梁も強くは言えません。
そんな理由で、現場を管理する住宅会社も、大工に床下に潜ってくれとは依頼しずらい。
結果として「床下断熱リフォーム」は今まで普及しなかったというのが原因の1つです。
次は、身体が汚れる以外の、床下に潜りたくない理由を見てみましょう。
床下断熱リフォームは、防蟻工事業者が行ったほうが良い理由
床下での作業には、普段の作業着とは別に、床下専用のつなぎと道具1式が必要になるという「物質的ハードル」と、床下は狭いので身体が大きいと作業性が悪くなるという「身体的ハードル」があります。
床下専用の着衣と道具1式とは、「写真のような床下用のつなぎ、帽子、汚れても良い靴、懐中電灯、照明、電工ドラム、床養生材等」です。
床下に入った着衣は埃だらけになるので、家に持って帰って家庭用の洗濯機で洗うと、洗濯機が汚れると言って、奥さんに怒られることでしょう。
床下に頻繁に入るなら、専用の洗濯機を買う必要があるかもしれません。床下仕事は、洗濯の面でもハードルが高いです。
対して防蟻工事業者の職人は、床下に潜って防蟻処理や白蟻駆除をするのが仕事ですから、床下専用の着衣と道具は常に持っていますし、会社には床下に潜った着衣を洗う専用の洗濯機を完備しています。
防蟻業者に聞いたところ、普通の洗濯機ですが、家庭で使うより壊れるのが早いらしいです。
かつ、防蟻工事業者は害獣駆除も行っていることが多く、例えば床下に蛇等の生き物がいても作業に支障がありません。生き物が嫌いな職人だと、その時点で床下には潜れなくなるでしょう。
元々ニーズのあった「床断熱リフォーム」に断熱材メーカーが目を付けて、床下の専門家である防蟻業者がマッチングされ、断熱施工指導が入ることによって「床断熱リフォーム」が普及しようとしています。
私も、依頼している防蟻工事業者と組んで、床下断熱リフォームを行おうと考えています。ご興味ある方ご連絡ください。
※追伸・・・現在のところ、グラスウールを使った床下断熱リフォームを行う白蟻業者は見つかっていないのが現状です。現在は断熱施工専門工事業者さんに、床下グラスウール断熱と発砲ウレタン断熱を依頼しています。取引先の白蟻業者に依頼したところ、一度やったが単価が合わないとのことでした。やってくれる白蟻業者さんいらっしゃいましたら、ご連絡ください。(令和1年5月7日)
床下断熱リフォームと同時に「床下防蟻再施工」をすべき
床下断熱リフォームでは床下に防蟻工事業者が入るので、同時に「床下防蟻再施工」をすべきです。
グラスウール断熱材を濡らすと、乾くまでは断熱性が弱くなるので、施工の順番は「床下防蟻再施工」を先に行い、床下木材が乾いてから、グラスウール断熱材の施工を行うのが良いと思います。
床下断熱リフォームのメリット
床は、唯一身体が直接触れる部位です。床が無断熱や断熱不足の場合、足元から身体が冷えてしまい不快になります。室内の寒さは心疾患や脳血管疾患等の病気にも直結します。
「床下断熱リフォーム」とは、「床下の冷気」が壁内に入り込むのを遮断する「気流止め」と「床下断熱材」を丁寧に施工することです。
消費者には「気流止め」という言葉は馴染みがないかもしれませんが、床下の断熱材施工と同等以上に大切な工事です。
写真のような気流止めしないと、床下の冷気が壁から上がってしまい、床に断熱材を施工しても効きにくくなります。
「床下断熱リフォーム」をすると、床の断熱性能が上がるので床が冷たくなくなり、室内の快適性も上がるばかりか、部屋の温度差も少なく暖房費の節約にもなります。
床を壊さずに施工できる「床下断熱リフォーム」には、快適性と健康の向上、暖房費の節約以外の施工上のメリットもあります。
・「住まいながら施工ができること」・・・床下断熱リフォームは、床下点検口や床下収納から床下に入って、床下から施工するので、家具の移動や室内の片づけが不要。
・「工期は、たったの1日~2日」・・・床下断熱リフォームの施工は1日~2日と短期間。施主負担が少ないです。
床下から行う、床断熱リフォームの断熱材はグラスウールが良い理由
床下から行う床下断熱リフォームには、発砲ウレタンを吹き付けたりする工法もありますが、更新性・転用性・施工性も考えると、グラスウールがベストだと思います。
柔らかい材料なので、45センチ程度の床下点検口や床下収納庫からも入りますし、クッション性があるため、「気流止め」をする場合も隙間の無い施工ができます。
また、グラスウールなら床下のメンテナンス時、例えば白蟻駆除をしてから断熱材を戻すことが容易です。
対して発砲ウレタンを吹いてしまうと、万一白蟻が出た場合には、木材に断熱材が張り付いてしまっているので、断熱材を簡単に外すことが出来ませんから、白蟻駆除をしても木部まで確認するのは大変になります。
新築時の壁や床や天井の断熱材も、更新性・転用性という同じ理由で、出来れば発砲系断熱材は使わないほうが良いと考えます。
床下断熱リフォームをする場合、グラスウールと発砲ウレタンの価格差
ただし、床下からの床断熱リフォームを「グラスウール断熱材で行った場合」と「発砲ウレタンで行った場合」の2種類を施主に見積提示すると、グラスウール断熱材の方が手間が掛るため値段が高く、今のところ床下からの床断熱リフォームは、「発砲ウレタンでは行ったことはあるが、グラスウールで行ったことはない」のが現状です。(令和1年5月7日現在)
1階の床面積が20坪の場合、グラスウールで行う床下断熱工事は、発砲ウレタンのザックリ2倍以上の値段です。
床下に潜って一気に吹き付けができる発砲ウレタンは、20坪の場合、職人2人が3時間程で完了しました。
対してグラスウール断熱材を床下から施工する場合は、3人で2日間程度の時間が掛る見積になりました。これは現場発泡ウレタンに比べて人件費が多く掛かるということ。グラスウールを床下から施工する場合は、気流止めも、床の断熱工事とは別に行う必要があります。
「床下から行うグラスウール断熱材の施工方法」は、カットしたグラスウールを床下に運び、床下で仰向けになった職人が、1枚づつグラスウール断熱材を木の間に充填施工していくので、職人も作業が大変であり時間も掛ります。
予算があるならグラスウールで行うのが良いと思います。ただし、以下のブログのように床下の防蟻工事と土間の防湿フィルム敷も一緒に行うと、安くはありません。メリットとデメリットをよく考えて、どちらの断熱材が良いのかを選ぶ必要があります。
発泡ウレタン断熱材で行った場合の床下断熱リフォームのブログをご覧ください。以下のブログは、床下断熱リフォームの見積を、グラスウールと発砲ウレタンの2種類の断熱材で出して、結果として発泡ウレタン断熱材で行った経緯が書いてあります。グラスウールと発砲ウレタン断熱材のメリットとデメリットも書いてあります。
「床下断熱リフォーム」をする時は、防蟻再施工と防湿シート敷の同時施工がおススメ【床下発砲ウレタン断熱材施工】
次は断熱リフォームを行いやすい順番を見てみましょう。断熱リフォームをして、冬暖かくなると快適性が上がるうえに、病気にもなりにくくなります。
床が傷んでいる場合は、床を撤去して断熱リフォームを行います。その場合はこちらを参考にしてください。
「床断熱フック」を使って分厚い155㎜の床断熱施工ができると、床表面温度が上がり快適性が向上!床断熱リフォームにもピッタリ
断熱リフォームを行う順番、最初は内窓設置
1.冬寒く夏暑い家を断熱リフォームする場合、最初に行うべきなのは、既存窓の内側に樹脂内窓を取り付けること。
断熱リフォームでは、内窓設置が一番費用対効果が高いので、最初に行うべき。
冬の暖房時に、家の中から出ていく熱の50%以上が窓からというデータがあります。
ですから既存の窓の室内側に、樹脂窓を設けて窓の断熱性を強化するのは合理的ですし、建物を壊さず簡単に取り付けられるリフォームであることも合理的です。
当社では内窓設置リフォームも多数行っています。興味のある方は見積もり致しますので、ご連絡ください。
2.次に行うべきなのが天井断熱リフォーム
天井が平らであれば、人間が天井裏に入って行けますから、分厚い断熱材を割と簡単に施工することが可能なので、比較的低価格で行うことができます。
特に夏、2階の部屋が暑い場合は、天井断熱リフォームは効果的です。
3.3番目が今日のブログの床断熱リフォーム
床下に潜り込んで、床を剥がすことなく、床下から断熱材を床下地木材にはめていきます。床下に潜った時に、壁の一番下に断熱材を入れる「気流止め工事」も行わないと、壁内に気流が入り暖かい空気は上に上がるので、断熱材が効かなくなってしまいます。
以上3つは、内装材を撤去しないで出来る、比較的ハードルの低い断熱リフォームです。
残るは、壁の断熱リフォームです。
壁の断熱リフォームは、内装材を撤去して断熱材を入れ直すか、既存の壁を壊さず行う場合は、下地材を室内側に付加して断熱材を入れる必要があるため、室内が狭くなり一番ハードルが高いです。
壁は面積が大きく、断熱リフォームを行えば効果的ですが、工程も多く面積も大きいという理由で、一番お金が掛かるので最後の4番目としました。
こちらもご覧ください。
この本、読み始めました。非常に説明がうまく分かりやすい。この本を読んで、私も説明がうまくなるように勉強します。
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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