2017-08-02
本・映画
高断熱・高気密住宅

【#高断熱・高気密住宅本】Q&A方式で高性能住宅を理解できる住宅本「エコハウスのウソ」を、これから新築、リフォームする人におススメしたい!

注文住宅を新築したり、中古住宅を購入してリフォーム・既存住宅をリフォームする場合には、良い住宅本を買って勉強しておくと、失敗を少なくできます。

 

高断熱高気密・高性能住宅・エコハウス分野を分かり易く勉強できる1冊「エコハウスのウソ」のおススメポイントを書きます。

 

「エコハウスのウソ」は、電子書籍キンドル版も出ており、紙の本も大版でないので、鞄に入れて持ち運びしやすいです。

 

「エコハウスのウソ」は文字と図が大きく、読みやすい住宅本

一般の人が注文住宅を建てる時や大規模リフォームする時には、勉強の為に何冊か住宅やリフォームに関する本を読むと思いますが、特に省エネ住宅・高断熱高気密住宅に関する本は必要です。

 

新築はもちろん、お風呂をリフォームする場合も、断熱材を入れて気密工事をしておくと、ほとんどコストアップせずに、冬暖かく快適になります。

 

だからリフォームする方も、高断熱高気密に関する本は読んでおくべきです。

 

しかし、省エネ住宅や高断熱高気密住宅の本は、断熱技術や理科の話になるので、一般の消費者にはハードルが高いです。

 

そもそもの話、小さな字で読みにくい本だと、せっかく買っても「積ん読」になりがち。高断熱高気密に関する本は、プロ向けが多いので、字も小さく、モノクロが多いです。

 

この「エコハウスのウソ」は文字と図がとても大きく、色つきの仕上がりで、読みやすい高断熱高気密住宅の解説本であることが特徴です。

 

文字と図が大きくカラーで分かり易い上に、「説明」もとても上手で、文章も魅力的。

 

まえがきの一部を転記してみよう。

 

筆者が何者であるかといえば、ひと言でいうと「建築環境」の研究者である。

 

筆者と研究室の学生は、かなりの数のエコハウスを実地に計測してきている。

 

そして、その多くが「残念」であり、定石の大部分が「ウソ」であることに気付いた。

 

どうですか?

 

普遍性があり、かつ読みやすい気がしてきたでしょう?

 

「エコハウスのウソ」は、授業のようなQ&A方式で41問、毎日1問ずつだと41日で読める住宅本

授業のようなQ&A方式で41の問いがあり、それに答える形の本になっています。これから注文住宅を新築したり、リフォームする人に特に参考になりそうな質問を見てみましょう。

 

Q.4 家なんてどこに頼んでも同じ?

→A.選び方を間違うと、「寒い」「増エネ」な家になる。建築主の勉強が不可欠。

(として、大手ハウスメーカー、設計事務所、工務店のメリット・デメリットを比較している。とても現状に合致した比較なので読んでくださいね。)

 

Q.14 断熱材と構法(工法)にこだわれば断熱はバッチリ?

→A.あらゆる断熱材・断熱構法には長所・短所がある。丁寧な施工が性能確保のカギ。

(「丁寧なつくり手」を選ぶことが一番大事!であること。断熱気密の施工まで熟知した「良心的建築家」や、「スーパー工務店」を探し出すことが大切と書いてあり、激しく同意。実は、施工まで分かる設計者は殆ど居ません。)

 

個人的に断熱材の種類は、外壁材の種類との合理的な組み合わせと、隣家からの火災を防ぐことを念頭に、燃えにくいものを選ぶのが良いと考えている。私の場合、外壁材はガルバリウム鋼板外壁材や木製外壁材が多いのでグラスウールが最適だ。)

 

 

「エコハウスのウソ」は建材メーカーや住宅会社のPR本ではなく、東大の准教授が書いた本なので客観性が高い

街の本屋さんやAmazonには、数多くの高断熱高気密本、エコハウス本が並んでいますが、残念ながらその多くが建材メーカーや住宅FCが出している自社PR本の為、客観性が薄いです。

 

「〇〇工法の家」や「○○断熱材の家」が出しているPR型の本は、自社の「工法」や「断熱材」を「アゲアゲ」して、自社以外を「サゲサゲ」して、消費者を洗脳するタイプの本が多いということです。

 

「〇〇工法の家」や「○○断熱材の家」は、高額な年会費を払って、住宅FC(フランチャイズ)やVC(ボランタリーチェーン)に入っていないと、施工できない「クローズドな工法」だから普遍性に欠けます。

 

この「エコハウスのウソ」は建材メーカーや住宅会社のPR本ではなく、東大の准教授、前真之氏が書いた本なのであり、前述したようにかなりのエコハウス(高断熱高気密住宅)を実測しているので、客観性が高い。

 

「〇〇工法」や「〇〇断熱材」の本を買って勉強するなら、高額な年会費を支払わなくても、誰でも設計・施工できる「オープン工法」が建てられる本を買って勉強したほうが良いと思います。

 

その理由は、普遍性が高くかつ高性能な住宅のほうが、後世に残りやすい「構法(工法)」や「断熱材」になるのは当たり前のことだからです。

 

「エコハウスのウソ」は省エネ住宅・高断熱高気密住宅の基本を分かり易く解説しているからおススメ

「Q.24気密は息が詰まる?」(P230)は、特に読んでもらいたい箇所です。

 

「低気密住宅では断熱が効かない理由」が分かり易く書いてあります。是非読んでください。

 

いまだに、意匠系設計事務所や工務店の一部は、「気密は息が詰まる」「気密工事をせずに、呼吸する家にするのか一番」とか言っていますが、低気密住宅だと、暖房するほどに寒くなりますから、そういう会社に依頼してはいけません。

 

「低気密住宅では断熱が効かない」「機械換気が機能しない」という理由を、とてもとても分かり易く説明しているので、ここだけでも読んでください。

 

こんなに、分かり易い気密の説明は聞いたことがありません。

 

ハッキリ言って、リフォーム工事の場合では、壁に気流止めをして気密性を確保すると、壁の断熱材が薄めでも、断熱は結構効くようになるのだ。

 

「エコハウスのウソ」を引用してブログを書いていました。

低気密(中気密)住宅がダメな理由

 

「エコハウスのウソ」の1つだけ気になったところ

非常に分かり易い「エコハウスのウソ」ですが、1つだけ気になったところがあります。

 

Q.23吹き抜けは最高?

→暖房するのが非常にやっかい。温風が床に届かずムダが多い。

 

として、吹き抜けのように、床や間仕切りをなくして空間を繋げることは快適性・省エネ生の観点から非常にリスクが高いとしている。

 

私は、断熱性能が、Q1(キューワン)住宅クラスだと、むしろ抜き抜けは設けたほうが良いと考えている。

 

理由は、断熱性能をQ1(キューワン)住宅クラスにして、吹き抜けを設けると、1階の床と2階の天井が見えることにより、30坪前後の「小さな家」でも、室内に広がりを感じることができ、

 

できるだけオープンな間取りにすることで家の隅々まで広く使えるようになるので、二重に広がりを感じるからである。

 

高断熱高気密住宅の最大の魅力の1つは「吹き抜け」であり、特に小さな家の場合は、出来れば「吹き抜け」はセットで考えたいと思う。

 

断熱性能をQ1(キューワン)住宅クラスにしても、部屋を小さく区切って、ドアを閉めてしまうと、冷暖房しない部屋とは温度差ができる。

 

吹き抜けを設けて、オープンな間取りになると温度差が少なくなり、高断熱高気密のメリットが発揮しやすいと考える。

 

断熱性能をQ1(キューワン)住宅クラスにした事例は、こちらをご覧ください。

私が設計施工した断熱性能Q値1.35、C値1のお客さんのお宅に宿泊した感想と室内温度

 

特に、今後ますます増える「小さな家」では、「Q1(キューワン)住宅クラスの断熱性能」と「吹き抜け」を組み合わせて、「小さな家でも隅々まで広く使える」ことをアピールすると、施主もメリットを理解しやすい。

 

こちらもご覧ください。

小さな家で大きく暮らす

 

よく読むと、P236の中段に、H25省エネ基準を大幅に上回る断熱性と丁寧な気密工事があるれば、吹き抜けがあっても大丈夫と書いてある。

 

今だ全国で建っている高断熱高気密住宅は、吹き抜けを造ると寒い家になってしまう断熱レベルなので、「吹抜けはやっかい」と書いたのだと思う。

 

Q1(キューワン)住宅クラスの断熱性能なら吹き抜けはあったほうが良いが、具体的断熱性能の目安を書いてもらい、その点をもう少し強調してもらいたかった。

 

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

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