最先端の高断熱高気密住宅・エコハウス「西方邸」を見学してきました
今年、全国の高断熱高気密住宅・エコハウスに関心の深い住宅設計者・工務店経営者は、秋田県能代市詣で(もうで)をしています。
理由は、秋田県能代市在住の高断熱高気密住宅・エコハウスの先駆者、西方里見先生が自邸を建築し、繋がりのある設計者や工務店に公開しているからです。
私も西方先生と同じ新住協(高断熱高気密技術の研究開発団体)の会員なので、6/27・28に開催された第2回新住協 東北地区大会で西方邸を見学させて頂きました。
間取りは普遍性のある総2階、窓と壁の対比が明確で、断熱性能、機能性から由来するシンプルで可愛らしいデザインの住宅。庭と家も一体になった、地域の象徴になるような素敵な住宅でした。
設計者の自宅の新築は、普段は施主に配慮して出来ないことを試す場
設計者や工務店経営者が自宅を新築する時は、自身がそれまでに設計及び施工した住宅の技術的・機能的長所を整理して取り入れることはもちろん、普段は施主に配慮して出来ないことをする場でもあります。だから自邸が見たいのです。
施主への配慮の具体例は、通常特殊なものではありません。
例えば施主の間取りに対する具体的要望が強い場合。それが普遍性のない間取りだったり、予算が厳しいのに将来使わないと思われる和室を造りたいという希望だったり、小さな家なのに風水にこだわってしまったりの場合は、家全体の間取りやデザインはもちろん、予算のバランスも崩れることになります。
そのような場合設計者は、何とか訂正する方向で施主に「やんわりと」話はしますが、聞き入れられなかった場合は、結局その住宅に住むのは自分でなく施主なので、施主の要望に沿う形の間取りになることが多いです。
間取りは外観デザインに直結しますので、間取りがおかしいと外観もおかしくなります。変なところに下屋が出来て凹凸の激しい外観になってしまったりして、おかしくなる場合が多いです。
また予算が少ないのに大きな家になってしまうと、全体的に安い建材を使うことになります。そうなると見た目も悪い上に耐久性も劣ることになります。結果として、経年するとメンテナンス回数の多い、お金が掛かる住宅になったりしますが、あまりにも詳しく説明すると、施主が気分を悪くしたりしてやぶへびになるので、そのデメリットを詳細に説明する造り手は少ないのが現状です。
上手い設計者とは、施主の話はよく聞くけれども、施主の言うとおりにはしない整理能力と説明力があり、納得させられる人だと思います。
最先端の高断熱高気密住宅・エコハウスは、ヒートショックで死なない為の家
西方先生の説明によると、自邸を新築した理由は、ご自身やご家族が(健康で快適に暮らせて)死なない為に造ったとのこと。ヒートショックによる死亡率が65歳を境に高くなるという統計もあり、65歳で自邸の新築をしたとのことです。
断熱性の高い家の大きな窓は暖房機になり、自殺防止装置を兼ねる
秋田県は自殺率が17年連続日本一。日照時間も日本一少なく、冬は晴れる日がほとんど無い。曇りの日が多いと、気分も暗くなりうつ病になり易く、自殺する高齢者が多くなると言われています。
南側の大開口(大きな窓)は、日射熱を取り入れて窓が暖房機としての役目になっています。かつ大きな窓は、明るい室内を実現するので、自殺の多い地域での自殺防止装置としての役割も提案している。
日射とプライバシーの調整は、窓の外側に隠すように配置されている、「外付けブラインド」ヴァレーマで行われる。普段ブラインド本体は、見えないような造りになっていて、外壁と窓がシンプルに見えるように配慮されている。
外観の窓と壁の構成が明確、シンプルで可愛らしい住宅
外観を見ると南面に大きな窓があり、壁と窓の対比が明確で美しく可愛らしい。南面以外の窓も必要最小限の数になっており、窓が外壁から室内側に入り込んでいるので、外壁に堀の深い陰影を作っている。
南面の大開口は、道路からは室内が見えてしまい、住む人のプライバシーが歩行者から影響を受けると思われたが、建物の配置により、昼間、大型ブラインドが開けられていても室内は見えにくい。逆に室内から道路は良く見える。夜は室内が見えやすいので、「外付けブラインド」ヴァレーマを下して生活。
庭と建物が一体になった住宅
家と庭が一体になった素敵な外構。外構が家の素晴らしさを引き立てている。庭には小さな池もありメダカがいた。外構が良いと、家がよりよく見えると実感した。
機能性がデザインになった内装
室内の天井は、ビルボード(大建工業)12㎜の上に、秋田杉板10㎜を目透し貼り。高気密住宅は、室内の音が響きやすいので吸音仕様となっており、その機能性が地産地消の材料を使ったデザインになっている内装。
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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吉田さん、こんばんは 秋田杉の外壁、素敵ですね。 吉田さんの家造りの思いからすると、軒を深く出して外壁を守るのが大切とありますが、こちらのお宅はほとんど出ていないのですが、西方先生はどのような意図でそうしていらっしゃるのでしょうか? 2枚目の画像の手前のお宅はかなり軒を深く出しているので気になります。
猫好きさん、こんにちは。 写真に写っている、お隣の軒の深いお宅も西方先生のお宅(旧宅)です。 軒の出の件、西方先生にお聞きしたことはないので想像ですが、 防水面では、軒を出さなくても施工をしっかり行っており、外壁と屋根の取り合い等から漏水の心配はなく、 耐久性と更新面では、木の外壁材は工業製品ではないので廃盤になることはなく、劣化した場合は部分的交換もできるとお考えなのではないでしょうか? 木製外壁材は、部分的に交換ができる唯一の乾式外壁材だと思います。 木の外壁材、軒を出さなくても、かなり耐久性はあるのかもしれません。