【会話】建具職人が造った造作ドアは、時を経ても別の建具職人が修理出来る!しかし既成品ドア (既製品建具)は古くなると修理が効かない可能性が高い!という職人との会話
古い住宅の室内ドアリフォームをする度に、「造作ドアが一番長く使えてインテリアにも馴染む!」と実感するワタクシですが、今日は、その感覚が一般消費者にも伝わるのではないかという、「建具職人との会話」を書きます。
宇都宮市の当社のご近所で室内ドアの交換リフォームしてきました
当社のご近所、宇都宮市本丸町の築40年以上の住宅の室内ドアの交換リフォームを行ってきました。古い住宅なので、建物の歪みが多少あり、既存の造作引き戸が上手く動かなくなってしまったことが原因のリフォーム依頼でした。
動きにくい引き戸を、強く引っ張って開閉していたので、建具の桟が外れてボロボロになり交換することになりました。引き戸のドアのみ交換できた理由は、この住宅の室内ドアが「既製品ドア」でなく、「造作ドア(造作建具)」だったからです。ドアの採寸の時に、柱が倒れていることが分かったので、柱に合わせてドアを「ハの字」型に造り、ドアを閉めた時に柱に「ピタリ」とおさまるようにしました。柳さんは寡黙ですが、メッチャメチャ上手い建具職人なのです。
建具職人が造った造作ドアは、時を経て別の建具職人が修理出来ます。しかし、建材メーカーの既成品ドア (既製品建具)は、ドアとドア枠が一体で造られており、古くなるとパーツが廃盤になる上に、建具職人が他のパーツを使って直せない特殊な納まりなので、修理が効かないことが多です。私と職人の交わした実際の会話を再現します。
上記写真のベテランの建具職人、柳建具(やなぎたてぐ)の柳さんとの会話です
●私「柳さん、ハウスメーカーが採用している既製品ドアの修理をしたことありますか?」
■柳さん「この前、初めて既製品ドアの修理というか交換をしたよ。開き戸だけど。」
●私「この前っていつですか?」
■柳さん「1ヶ月くらい前。」
●私「建具職人としてのキャリア40年以上なのに、既製品ドアの修理というか交換を初めてやったのですね?枠を残してドアだけ交換したのでしょう?」
■柳さん「そう。」
●私「既製品ドアのドア枠は無垢材ではないから、枠の芯材のMDF等が劣化してなかったですか?ドア枠の木目のシートは剥がれてなかったですか?」
■柳さん「枠は使えたのだけど、蝶番が同じものが無く、既存より大きな蝶番に交換して蝶番の跡を隠したよ。」
※蝶番とは、ドアの端に付く開き戸を開閉する金物です。
●私「なるほど。蝶番が廃盤になっていて同じ物が無かったのですね。既製品ドアでも開き戸なら、何とか造作建具と同じ方法でドアを交換することも出来るわけだ。既存のドア枠と新しいドアの面材の色目は合いました?」
■柳さん「合わなかったね。」
●私「それはツライですね。合う面材もありそうだけど・・・。似た感じで微妙に違う面材を選ばざるを得ないので、かえって見た目もおかしくなるのかもしれないですね。」
■柳さん「そう!」
●私「やっぱり既製品ドアは、古くなると修理が難しくなるのですね。既製品の引き戸の場合は、引き戸枠はそのままで、ドアのみ交換は出来ないでしょう?」
■柳さん「既製品ドアの引き戸の場合、鴨居と敷居に特殊な金物や部材を使う納まりになっていることが多いから、金物や特定の部材が廃盤になると、交換や修理は無理だろうな。」
※納まりとは、例えば、壁と床が接する部分を、壁と床の「取り合い」といい、そこをどのような形にするかを「納まり」という。
●私「でしょうね。クローゼット等に使っている折れ戸はどうですか?」
■柳さん「折れ戸も引き戸と一緒で、既製品ドアは特殊な金物や部材を使う納まりになっていることが多いから、ドアのみの交換は難しいだろうね。」
これが、既製品の室内ドアを使った場合のリフォームが難しいという実態です。既製品の室内ドアが壊れて部品が廃盤になっていたら修理が出来ません。そのような既製品ドアのリフォーム方法は、ドア枠廻りの壁を壊して、ドア枠ごと交換することになります。これではお金が掛かる上に、交換した新しいドアは、他のドアとはデザインも違ってしまうので、室内の統一感も無くなります。
対照的に、建具職人が造った造作ドアは、時を経て別の建具職人がドアのみ修理や交換が出来ます。ドア枠も無垢材で造られているので、劣化が少なく長く使えます。室内ドアの交換を含む内装リフォームをする度に、造作ドア(造作建具とも言う)が一番長く使えてインテリアにも馴染むと実感します。
ちなみに私は、新建材が嫌いなのではありません。ベニアも新建材ですが、交換でき長く使えてプレーンなので、好きでよく使います。こちらもご覧ください。
60年前のラワンベニアを見て感じた、私は新建材が嫌いなのではなく、廃盤になってしまう新建材が嫌いだということ!
室内ドアは、室内に占める面積が大きく、手で触る所なので人の印象を大きく左右します
造作ドア関連のブログをいろいろ書いていますので、ご覧ください。
造作ドアにすると決めた理由は「吉田さんの造る住宅はダサイ!」と言われたからでした
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有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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