2025-09-24
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new born 荒井良二展@宇都宮美術館─ 展示空間と作家の軌跡から感じた“家づくりとの共通点”

宇都宮美術館エントランス部のポスター

昨日、9月23日(日)の午前中に、宇都宮美術館で開催されていた展覧会
「new born 荒井良二 いつも しらないところへ たびするきぶんだった」を観てきました。

宇都宮美術館は、緑豊かな郊外に建つ雰囲気の良い美術館です。森を切り開いて造られており、専用駐車場から美術館へは、林を抜けて広々とした芝生の横を3~4分ほど歩いて向かいます。館内からも、深い森の景色が楽しめて、自然の中に身を置いているような心地よさを感じられます。

この日は開館直後の9時40分頃に到着しましたが、展覧会の最終日ということもあってか駐車場は、ほぼ満車。館内も老若男女、たくさんの人で賑わっていました。特に、小中学生くらいのお子さんを連れたお母さんの姿が多く見られました。

この展覧会のどこが良かったのかを、(無理やり?)私の仕事である家づくりとの共通点に触れつつ、語りたいと思います。

宇都宮美術館中庭。周囲は森に囲まれている

展覧会を訪れて

会場に入ると直ぐ、ベニア板で造られた橋を渡る。両側は水面に模されたブルーシート。その上にはスケッチが散乱している

私は木造住宅建築及びリフォーム建築業を生業としているので、仕事柄、美術館に行くと、作品だけでなく空間の使い方や展示構成に目が行きます。

今回は特に“空間と作家の物語”のつながりを強く感じる展示でした。

会場に入ると、最初にベニアで作った橋を渡る構成になっており、橋の両脇には、水の代わりに鉛筆で描いたスケッチが散乱しています。その廻りには小屋のような建物と、大きな本の展示がありました。

展示が最初から「旅=作家本人の軌跡」を連想するような構成で、通路を進むたびに新しい作品や小さな家のような展示と出会います。

大袈裟に言うと、家づくりも、施主とともに未来の暮らしを想像しながら道を探っていく旅のようなもの。美術と建築、ジャンルは違っても根っこは似ているのかもしれません。

荒井良二氏とは

私は、荒井良二さんを知らなかったのですが、著名な絵本作家であり美術家です。

色彩は基本的にカラフルで、描き方は子供が描いたような素朴なものが多いのですが、中には広告のポスターを思わせる資本主義的なものもあり多様。公共施設の大型オブジェも手掛けていらっしゃるようです。

作品からは、何気ない日常の温かさ、切なさ、楽しさが伝わってきます。

展示方法と作品を鑑賞して、とても自分と作品の魅せ方が上手な方なのだと思いました。

展示された絵本は読めました

以下、宇都宮市美術館のWEBから「展覧会」について引用します。

展覧会

荒井良二(1956-)は、2005年に日本人として初めてアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を受賞するなど、世界的な評価を受けるアーティストです。彼の幅広い活動は、絵本だけでなく、絵画、音楽、舞台美術にまでおよびます。本展では、絵画や絵本原画、イラストレーション、そして新作となる立体インスタレーションや愛蔵の小物たちを通して、その創作活動を紹介します。まさに旅をする時のように、先が見えない不安や恐れをも楽しみに変えてしまうような気持ちで活動の幅を広げてきた荒井良二。その旅の軌跡と現在地を語る作品たちからなる、これまでにない展示空間が、みなさんをお迎えします。荒井は、これまでどんなところを旅して、次はどこへ出かけていくのか。ここからまた新しい荒井良二が誕生=new bornする展覧会を、一緒に体感しましょう。

https://arairyoji-nb.exhibit.jp/

なぜ、多くの人が訪れていたのか?

家の構造を模した展示
  • ダークさのない、誰もが楽しめる温かな作品であること
  • 作品の柔らかさから、子どもや女性ファンが多いこと
  • 女性や子どもが来れば、男性の家族と近親者も一緒に訪れる可能性が高いこと
  • 絵本作家として著名で、子ども時代に作品を読んだ人・読み聞かせた人が多いこと
  • すべての作品が「撮影OK」で、SNS投稿などで口コミが広がったこと

まとめ

  • 今回の「new born 荒井良二展」は、タイトル通り「新しい荒井良二が生まれる」瞬間を共有する場でした。単なる回顧展ではなく、過去の軌跡を辿りながら、観る人が“これから生まれる作品”を一緒に探していくような感覚になります。
  • 展示の構成は、橋を渡り、小屋を巡り、次々と新しい出会いがある“旅”そのもの。家づくりも同じように、土地や予算、暮らし方という条件の中で、住まい手と造り手が未来を想像しながら形を探っていく旅のようなプロセスです。
  • 荒井氏の作品に囲まれていると、シンプルで心地よい空間がいかに日常を豊かにするかを実感します。私自身、このような、素敵な美術作品が似合う住まいを提案していきたいという気持ちを強くしました。
家を模した展示も複数ありました
吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

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