2025-04-19
MK-house(芳賀町 下高根沢)
リフォーム
建材・住宅設備・便利グッズ
高断熱・高気密住宅

【窓の省エネリフォーム事例】木製窓の腐食に悩まされ、樹脂窓に交換した築22年の住宅

築22年の住宅、現在までに7か所の、輸入木製窓の障子が腐ってしまう事態になりました。

そのうち6か所の窓は、同じメーカーの木製窓の障子に交換しました。しかし今回、一番最後に腐朽が分かった窓は、外壁を壊さずに、断熱性の高い【樹脂窓】に交換できる、「RAKUE(らくえ)工法」を採用し、省エネ性能とメンテナンス性を高めました。

このブログでは、木製窓の劣化状況から樹脂窓への交換方法、窓の省エネリフォームの補助金活用までを詳しく解説します。

※窓の障子とは、窓枠以外の窓の可動部分の「ガラス+障子枠」のこと。

木製サッシが次々と腐朽。ついに決断した木製窓から樹脂窓への交換リフォーム

2003年の新築時に採用したのはアメリカ・PELLA(ペラ)社のアルミクラッド木製サッシ

無垢木材のサッシなので、室内から見た意匠と風合いは素晴らしいのですが、築7年目の2010年から窓障子の腐食が始まり、築22年目の現在まで、7か所の窓の障子が腐るという事態になりました。

その都度、窓障子を輸入し交換してきましたが、納期2か月・価格高騰・再腐食のリスクを考え、4年程前の2021年に、施主が娘さんに代替わりしたこともあり、「もう交換しなくて良い窓にしたい!」という結論になりました。

多分、ペラ社の木製サッシを採用したお宅は、当社が施工したこのお宅と同じように腐って、障子交換もしくはサッシ交換していると思います。

そこで採用したのが、「カバー工法」による外窓の交換。基本的には「カバー工法」の要素が大きい工事になりましたが、一部の窓枠を撤去する「はつり工法」の要素もあったので、なるべく外壁を壊さず、短工期で高性能な【樹脂窓】に交換できる「RAKUE(らくえ)」という工法を採用しました。

2018年に、ペラ社の窓障子に交換した時のブログはこちら

輸入建材は、大手商社の子会社からは買わないほうが良い理由

なぜ新築時に木製サッシを採用したのか?その背景と選定理由

上記の施工例は、今回、木製窓から樹脂窓へのリフォームを行ったお宅です

設計開始前、当時の施主は、松本民藝家具を好んで使用しており、新築したら置きたいと、ダイニングテーブルや椅子、机等を注文済でした。

設計前、施主と一緒に、宇都宮市に店舗があった松本民藝家具の顧客の会に出席したところ、家具と顧客達の品の良さに驚きました。

松本民藝家具という名前と家具の雰囲気は知っていました。しかし、吟味された上に長期間乾燥させた木材を、担当の職人が1つずつ丁寧に手作りして行く工程と、上品な固定ファンが付いていることを知らなかったからです。

松本民藝家具に合う内外装にすることを施主と打ち合わせした上で設計を始めました。松本民藝家具の雰囲気と合わせるには、サッシもいつも使っているYKKの樹脂サッシより、木製サッシのほうが、より違和感がないということで、木製サッシを採用することになりました。

この住宅はFPの家ですが、FPの家のパネルと建材販売をしており、FPグループを運営していた松本建工と資本関係もあった三井物産ハウステックから、ペラ社のサッシを勧められたからです。

当時、ペラ社のサッシの商流は、伊藤忠建材の輸入建材部門である(株)キーストーン→三井物産の建材子会社である三井物産ハウステック→当社という流れでした。

輸入住宅の衰退と共にキーストーン社は無くなり、三井物産ハウステックもFPグループを運営していた松本建工が倒産したことで無くなりました。

木製窓でもアルミクラッドしてあるため、むき出しの木製窓よりは「木部が風雨に晒されず長持ちするだろう」と考えていましたが、結果としては、そうなりませんでした。

木製窓を採用する場合、アルミクラッドしていない木製窓のほうが、劣化を目視しやすい上に、乾きやすいという点でも良いのかもしれません。

PELLA(ペラ)社のアルミクラッド木製窓とは?

木製窓から樹脂窓への交換リフォーム完成後。白いサッシ以外がペラの木製サッシ

チャットGPTにペラ社について聞いてみました。

PELLA(ペラ)社のアルミクラッド木製窓は、木の温もりとアルミニウムの耐久性??を兼ね備えた高性能な窓製品です。

●生産国

PELLA社はアメリカ合衆国アイオワ州ペラに本社を構え、全米に18の製造拠点と200以上のショールームを展開しています。製品は主にアメリカ国内で製造されており、品質管理と技術革新に注力しています。

●特徴

1. アルミクラッド木製構造

外部は耐候性に優れたアルミニウム、内部は温もりのある天然木材を使用。これにより、外部からの耐久性??と内部の美観を両立しています。

2. デザインの多様性

伝統的なスタイルと現代的なスタイルの両方を提供。歴史的な建築物にも適した詳細なデザインや、モダンな建築に合うクリーンなラインのデザインが選べます。

3. 高性能な機能性 PELLA社の窓は、断熱性、気密性、遮音性に優れており、エネルギー効率の向上に寄与します。​また、メンテナンスが容易??で、長期間にわたって美観と性能を維持できます??。

上記は、チャットGTPによるペラ社についての紹介ですが、このブログを読んで頂くと、窓障子が腐ってしまい、耐久性は無いことが分かります。

PELLA(ペラ)社の木製サッシの障子が腐る原因を推測

PELLA(ペラ)社の木製サッシの障子が腐る原因を推測

窓障子の下枠が腐る原因は、以下の2点が考えられます。

  1. ガラスとガラス廻りの木枠の間の、防水材が劣化して切れてしまい、雨水が浸入して腐朽
  2. 窓枠と障子下部の隙間に雨水が溜まり、木部が吸水して腐朽

1つ目は、もっと耐久性のある防水材にすべきだと思います。樹脂サッシやアルミサッシはもちろん、北欧の木製サッシの場合も、ガラス廻りから雨水が入るというのは聞かないからです。

2つ目も構造的な問題で、窓枠の勾配がなく、排水性が低いため、水が滞留しやすいのです。実際、腐朽箇所はいつも障子の下枠部分でした。

経年した建物では、どちらかではなく、上記の2つが同時に起こり、窓障子を腐らせている可能性もあります。

特に雨が降った翌日は、窓を開けて、窓障子の下枠を乾燥させた方が良いので、施主にはそのようにして頂いておりますが、経年すると腐るのが現実です。

雨が掛かりにくい、軒の出た2階の窓は、今のところ腐っておりません。

アメリカと日本、窓文化の違い

PELLA社のサッシを含むアルミクラッド木製窓は、アメリカでは障子交換を前提に作られている可能性があります。

アメリカでも雨は降りますから、築年数の違いはあれど、窓障子は同じように腐ると思うからです。

アメリカやカナダはDIY文化が根強く、窓もホームセンターで買える環境。腐ったら交換、という発想なのかもしれません。

一方、日本では1960年代からアルミサッシが主流となり、この20年程、住宅性能を重要視する界隈では、徐々に樹脂サッシも一般的になってきましたが、「サッシはあまり壊れないもの」と考えがち。

日本人にとっては、障子交換は想定外の手間になり、ストレスも大きいものです。

【施工写真】木製サッシから樹脂窓への交換工程

木製窓から樹脂窓に交換した、リフォーム工程写真です。RAKUE(らくえ)工法。大きめの出窓で、解体と施工に時間が掛かったため、工期は実働2日間かりました。新設サッシを取り付けるまでは、べニアで養生を行いました。

外部工事前
内部工事前
既存窓、障子の腐朽部分
窓障子の腐朽
窓障子撤去
窓枠撤去。2本のサッシ柱が無いのが分かります。念のため、つっかえ棒しています
窓枠ま一部も腐朽していた
新設する樹脂サッシ搬入
新設する樹脂サッシを仮に固定
窓廻りに硬質発砲ウレタンを吹くための養生
ウレタンボンベ
新設窓を固定するためのウレタン吹付
ウレタン吹付。ウレタンでサッシの固定・サッシ廻りの断熱気密も行う
固まった後で、出っ張ったウレタンカット
サッシ固定のためのウレタンカット完了。10倍発砲の断熱性が高いウレタン
室内側、ウレタンの上は気密テープ施工してから、窓廻りの窓枠下地を付けた。
窓枠取付。違和感がない。
外部窓上端。シーリング前。サッシ上のシーリングは斜めに打って、シーリング上に雨水が溜まらないようにした
窓上端シーリング
窓上端と側面、外壁との取り合いシーリング
外部工事完了
室内工事完了。違和感がない。上手く出来ました

【解説】窓の交換リフォーム:「カバー工法」と「はつり工法」の違い

窓の交換リフォームには、大きく分けて2つの工法があります。

窓交換の「カバー工法」と「はつり工法」の違いは、既存の窓枠をそのまま利用するか、外壁を削って窓枠ごと交換するかです。

カバー工法は、既存の窓枠に新しい窓をかぶせるように取り付け、はつり工法は、既存の窓枠を外して新しい枠を取り付ける工法です。

今回の窓交換リフォームは、「カバー工法」と「はつり工法」の混合工法となりました。ほぼ窓枠は残したので「カバー工法」の要素が多いのですが、障子が取り合う2本の窓枠は撤去したので、一部は「はつり工法」と言えます。

工法メリットデメリット
カバー工法障子を撤去して、既存枠の上から、カバー枠を設置した上で、障子を取り付ける。既存窓枠と外壁に手を加えず施工可能。室内側も解体不要窓が小さくなる
はつり工法(RAKUE)既存窓を撤去して新設する。撤去する時に窓周囲の外壁と室内壁を壊すので、室外と室内で壁補修が必要。新築同様の性能に回復、窓サイズも維持外壁と室内壁補修が必要な場合が多い。(今回は外壁補修は無く、室内も最小限)

【施工法の詳細】樹脂窓への交換リフォームRAKUE(らくえ)工法のメリット・デメリット

RAKUE(らくえ)工法は、新設サッシを、通常の釘やビス固定でなく、硬質ウレタンで固定するため、外壁と室内壁をあまり壊さずに施工できるのがメリットです。硬質ウレタンを使うことで、サッシの固定と断熱・気密工事を同時に行うことが出来ます。

※現場発泡硬質ウレタンは、10倍発砲を使っています。

●  10倍発泡 → 原液1に対して体積が10倍に膨らむ

● 倍率が高いほど軽く、密度が低い

●  倍率が低いほど重く、密度が高く、断熱性も上がる

通常、サッシは、新築時も、リフォーム時のカバー工法とはつり工法も含めて、釘やビスで固定します。

RAKUE(らくえ)工法のメリットは、外壁を壊さずに、サッシを新設できることです。外壁を壊す必要が無ければ、解体及び処分費用が無くなり、かつ大工工事・外壁工事・塗装工事などの必要が無くなります。

通常の窓交換はつり工法では、窓周囲の外壁を壊して窓交換するので、多くの職方が必要になりますが、RAKUE(らくえ)工法では、多くの職方が必要なく、簡単に施工できることは、比較的安価で工期短縮できることに繋がります。今回はサッシ屋さんに全て依頼して、木工事も行いました。

※職方(しょくかた)とは、建築工事において、実際に手を動かして施工する職人たちのことを総称する言葉です。大工、左官、設備工、内装業者、屋根職人、電気工など、さまざまな専門職のそれぞれの職種の総称。

しかし、外壁を壊さずにサッシ交換できるメリットは、経年するとデメリットに繋がる可能性があります。

従来の、はつり工法のサッシ交換のように、窓廻りの外壁を10センチ程度壊してサッシ交換するのであれば、外壁下に施工する防水シートもしくは防水テープを新規サッシのアングルに被せて防水した上で外壁下地木材を施工できます。

従来の、はつり工法であれば、その上に外壁を施工するので、新築の窓廻りと同じ構成となり、サッシは外壁よりも外側に出っ張ることはなく、外壁下のサッシ廻りの防水シートもしくは防水テープは、紫外線や風雨に直接さらされないので、長持ちします。

しかし、外壁を壊さずにサッシ交換するRAKUE(らくえ)工法の場合は、外壁を壊さずに、新規サッシを施工します。そのため、写真のように新設サッシを外壁よりも飛び出させた上で、外壁とサッシの取り合いに「シーリング」という防水材を施工して、防水する必要があります。

「シーリング」は紫外線や風雨にさらされるので、10年前後は持つかもしれませんが、比較的早い時期に劣化して、そこから雨水が入る可能性がありますから、10年前後くらいには、足場を架けて点検し、必要であればシーリングのやり替えもしくは、補修をする必要があります。

メリットと思われる工法が、将来デメリット箇所になる可能性があるということになります。またRAKUE(らくえ)工法では、樹脂サッシの色は白1択になります。

樹脂窓への交換リフォームRAKUE(らくえ)工法は、どのような窓の交換に適しているのか?

既存窓が日本製のサッシであれば、基本的には日本の窓メーカーの「カバー工法」が適していると思います。

今回のように、既存窓が輸入の木製窓の場合は、日本製のサッシと断面構成が違うので、日本の窓メーカーのカバー工法は適していません。特に今回のような「カバー工法」と「はつり工法」の混合工法となる場合は、RAKUE(らくえ)工法が適していると思います。

衰退する輸入住宅と、木製窓の部材供給リスク

2000年代前後は、本屋に輸入住宅雑誌が5-6誌並ぶような、輸入住宅ブームでした。

しかし、円安が進むと、輸入建材の価格が高騰。コスト面でも敬遠されるようになりました。輸入住宅は、おおむね2005年頃を境に衰退し始め、2008年のリーマンショック以降は、輸入住宅を積極的に打ち出す業者が激減しました。

当時の輸入住宅ブームに乗って、前述したように日本の大手商社も子会社を作って、PELLAやマービン社の輸入木製サッシや、輸入内装建材を扱いました。

しかし輸入住宅の流行は去り、多くの輸入建材商社とメーカーが撤退。

衰退前は、輸入住宅が一定の規模を維持したまま、日本に定着すると考えていました。

今でもPELLA(ペラ)社の輸入代理店はあるため、部材供給は可能ですが、将来的な供給リスクや価格上昇の不安が残ります。

この住宅の断熱性能と、一般論としての経年してからの建材供給

2003年完成、Q値1.6、C値0.2という高気密・高断熱仕様のFPの家。当時でもトップクラスの温熱性能です。

しかし、いくら高性能でも窓の障子が腐れば断熱性能も低下。窓のメンテナンス性や将来のリスクを考えると、「樹脂窓への交換リフォーム」は理にかなった選択です。

ただし、先月のブログにも書いたように、日本のメーカーの樹脂窓も廃盤を迎えると、部品を作らなくなります。窓が壊れた場合、部材のストックが尽きると、部品交換が難しくなります。

住宅省エネ2025キャンペーン「先進的窓リノベ」補助金も活用

今回の工事では、国の「住宅省エネ2025キャンペーン」の中の、先進的窓リノベ事業に申請しました。

対象となる窓仕様や施工方法を満たすことで、1窓あたり小さなもので数万円から、大きな窓だと20万円以上の補助金が出る場合もあります。総額の1/3程度の補助金が出る予定です。

家の断熱性能が高まる、内窓取付や窓交換等の、窓の断熱改修をお考えの方は、この制度を使うとお得です。

まとめ:窓の省エネリフォームで家の快適さと安心を取り戻す

  • 木製窓の腐食がきっかけで、断熱性・耐久性に優れた樹脂窓へ交換
  • 「RAKUE工法」により、外壁を壊さず短工期での窓交換。ただしメリットばかりでなく、将来はデメリットの可能性もあり
  • 長期的に見て、メンテナンス性・省エネ性能が大きく向上

窓の劣化に悩んでいる方、築20年前後で木製サッシのメンテナンスが大変な方には、窓の省エネリフォームとして「樹脂窓への交換リフォーム、もしくは内窓取付」を検討して頂きたいと思います。

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

この記事をシェアする
コメント