「基礎全面断熱した場合に、起こるかもしれないカビの発生」についての問答
![](https://yoshidacraft.net/wp-content/uploads/2025/02/QA-1-1024x683.jpg)
福岡県で新築中の方から、メールで質問が来ました。地元工務店に依頼しているとのことです。
この質問者をAさんとします。
ざっくりした質問内容は、
「基礎スラブを全面断熱した場合。基礎コンクリートが固まる過程で発生する湿気が、断熱材を全面貼ったことにより放湿しずらく、断熱材の下や断熱材の内部でカビが発生するのではないか?」
「また万が一、床下配管が漏水した時に、全面貼った断熱材の下に水が入ってしまいカビないのか?」というものでした。
Aさんは、床下エアコンで暖房するため、ミラフォームラムダDDS、アルミ片面25mmを基礎スラブ全面に施工予定でした。しかし施工直前になって、上記のように断熱材を設置することに疑問を持ち、大変悩んでいるので質問したい!とのことでした。
アルミ箔が貼ってある断熱材はメリットがあるものの、アルミは湿気や水を通しにくいので、基礎コンクリートが固まる過程で発生する湿気や、床下配管が漏水した時に、基礎床面に敷いた断熱材の下に水が入って蒸発せず、カビを発生させるのではないか?と心配していました。
一般的な条件下では、基礎断熱は床断熱よりも、床下が結露しにくい断熱方法です。その理由は、基礎断熱は基礎内部に湿った外気が入ってこないこと、また室内と床下の温度差が少ないからです。
問答を掲載します。
※基礎スラブとは?・・・木造住宅の場合の基礎スラブとは、基礎コンクリートの床に当たる場所。スラブは床版(しょうばん)とも言います。
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目次
基礎スラブ上、全面断熱材として使っている、ミラフォームDDSボードについて
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ミラフォームDDSボードは、表面にアルミ箔が付いていることが特徴。DDSボードは、壁の外張用断熱材として生産されているものですが、当社は基礎スラブ上全面に設置する、断熱材として使っています。
当社で使っている品番は、ミラフォームDDSボードM2RSの厚さ50ミリです。スキン層ありを使っています。基礎立上りはミラフォームラムダの厚さ75ミリです。
ミラフォームDDSボードの断熱材としての種類は、押出ポリスチレンフォームの3種Bです。
ミラフォームDDSボードを、スラブ上全面に設置するベネフィットは、断熱性能が高くなるので、室内が快適になること、基礎が柔らかい床面になるので、人が入りやすくなり、楽に掃除などが出来ることです。
具体的には、表面のアルミ箔面を上にして、基礎の床コンクリート上に設置すると、完成後のメンテナンスで床下に入った時に、床面が柔らかくなります。床下では這って移動しますが、身体を滑らせてストレスが少なく移動できて、掃除も楽にできるので、床下に入る心理的ハードルがとても低くなります。
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一方、通常の床下はコンクリートなので、這いつくばると、すぐに身体が痛くなります。かつコンクリートの粉で服が汚れるので、コンクリート面に這いつくばるのは、とても苦痛です。しかし、この断熱材が敷いてあると、肘や膝が痛くなりません。
![](https://yoshidacraft.net/wp-content/uploads/2019/06/DDSボード.jpg)
「基礎断熱 DDSボード」で検索したところ、現在、全国でこの断熱材を使って基礎を全面断熱しているのは、当社くらいです。Aさんは、当社の真似をしたのかもしれません。少しだけ、親近感が湧きました。また質問内容に、「施主であれば、誰でも心配するような普遍性」を感じたので、回答することにしました。
Aさんからの質問。基礎全面断熱をミラフォームDDSボードで行うと、不測の事態の時、断熱材にカビが発生しやすくなるのでは?
基礎スラブ全面断熱の施工ブログを見て、ご連絡させて頂いた施主です
既に着工しており、貴社に施工依頼するわけではないのに、問い合わせして大変申し訳ありません
もし可能であれば、お知恵拝借できればと大変嬉しいです
吉田さまの施工事例で、ミラフォームDDSボードアルミ片面を使って、スラブ全面断熱をされていると認識しています
私も床下エアコンを予定しており、ミラフォームラムダDDSアルミ片面25mmを、スラブ全面に施工予定です
しかし、施工直前になって、以下の課題があることが分かり大変悩んでいます
・漏水などで、床下が水浸しになった場合の復旧が困難(断熱材がカビるなど)
・基礎コンクリートの放湿を妨げる→片面アルミの場合、スラブと接するラムダ部分は透湿し、アルミ蒸着部分は透湿しないので、ラムダ内で逃げ場がなくなった湿度がラムダ内で結露し、ラムダの中でカビないか
そこでお聞きしたいのは以下です
・吉田様の使われているミラフォームDDSはラムダでしょうか
・上記の課題に対して、どのように認識・対応を予定されているでしょうか
吉田様にまったくメリットのないご相談で大変恐縮です。
何卒ご見識賜れますようよろしくお願い申し上げます
Aさんが見た当社のブログは、これだと思います
ヨシダクラフトの回答。DDSボードで基礎全面断熱する、メリットとデメリットを考えて判断しています
A様
はじめまして。
頂いた問い合わせメールを読ませて頂きました。Aさんは福岡県在住で、福岡県で新築施工中とのことであり、遠く離れた栃木県の当社で設計施工するわけではありません。本当は、新築を依頼した設計者、もしくは施工している住宅会社に問い合わせする内容だと思います。
しかし、内容からAさんは礼節をわきまえた方だと思いました。また質問が、「基礎断熱で、かつスラブ上全面断熱をする施主が悩む、普遍性のある内容」だと思いましたので、私が分かる範囲でお答えします。
Aさんからの質問を、①から③の3つに整理して答えますので、質問の受け取り方が間違っていたら、教えてください。
質問①吉田様の使われているミラフォームDDSはラムダでしょうか?
→回答①当社で設計施工している基礎断熱住宅の、基礎のスラブ上、全面に設置している断熱材、ミラフォームDDSボードはラムダではありません。
ラムダではないミラフォームDDSボードの厚さ50ミリです。スキン層ありの品番M2RSを使っています。もちろん、予算があるなら、断熱性能の高いラムダのほうが良いと思います。
スキン層があるのは、アルミ箔面の反対側で、スラブコンクリートに接する面です。スキン層があると、劣化しにくく、透湿もしにくいです。
断熱性の高いラムダには「スキン層あり」は無いです。
ただし、下記するように、床下が水で長時間溢れる可能性は少ないと思いますので、個人的には、予算があるなら断熱性能重視で、ラムダを選択するのが良いと思います。
DDSボードの3種類(DDSボードスキン層有り無しとDDSボードラムダ)は、カットサンプルが取れるかもしれませんので、必要なら、住宅会社に問い合わせしたら良いと思います。
質問②床下の給排水管が、万一漏水して、床下が水浸しになった場合は、基礎スラブ上、全面に設置した断熱材の下面や内部にカビが発生するなどして、断熱材の復旧が困難だが、どう考えているのか?
→回答②今まで、リフォームを含めて当社施工の木造住宅の、床下給排水管が漏水した経験がありません。
なので、万が一の漏水事故やシロアリ発生など(デメリット)よりは、断熱性能が良くなること・断熱材表面が掃除しやすい等(メリット)を優先して、基礎スラブ上の全面に、アルミ箔付のDDSボード断熱材を設置しています。
確かに床下で、基礎断熱材の上に配管されている給排水管が、漏水する可能性はあります。
床下で漏水すると、スラブ上に設置した断熱材の下にも水分が入り込み、面倒なことになります。
床下配管から漏水しないように、注意事項を書いてから、漏水した場合の対処方法を書きます。
まず、床下の漏水で可能性が高いのは、排水管が詰まって、配管のジョイント部から漏れることだと思います。
排水管の漏水対策として、施主には、キッチン排水管の油詰まりなどしないように説明しています。具体的には、キッチンの排水口に、なるべく油を流さないように、フライパンの油などをペーパーで拭いてから、洗った方が良いと言っています。
また、食品かすなどの固形物を、なるべく排水管に流さないようにも言っています。上記2つが、長期に流れると、配管内はヘドロのようなものが詰まりやすいです。トイレ配管も、トイレットペーパー以外は流さない、トイレットペーパーを、一度に大量に使わないなど当たり前のことをして、詰らせないようにします。
万が一、床下の基礎断熱上で、床下配管が漏水してしまった場合は、床下に溜まった水をポンプで汲むなりしてから、断熱材下の水分を蒸発させるように、送風機などを使うと思います。洪水などで被災した場合と同じです。下は参考のブログです。
基礎断熱の家が床下で漏水してしまった場合、スラブ上断熱材の設置範囲で比較すると、全面設置でなく、外壁周囲から90センチ程度のみ設置したほうが、断熱材の下に入る水分が少なくなるので、掃除しやすく、かつ床下の水分も蒸発させやすいです。
万が一、基礎断熱の家で、漏水事故・洪水やシロアリ被害が起こった場合等は、断熱材の設置面積が少ないほうが、対処に手間が掛からないと言えます。
ただし、基礎スラブ上に断熱材を全面敷いたほうが、断熱性能が高くなります。かつ、DDSボードは、表面がつるつるなので、床下で身体を滑らせて移動でき、拭き掃除もしやすいので、床下に入る精神的なハードルはかなり低くなります。
私は引き渡し前に床下清掃をします。そのため1~2回は床下に潜りますが、全面に断熱材を敷いてからは、とても楽になりました。
基礎断熱のスラブ上を全面断熱することのデメリットは、床下でトラブルが発生した時です。それは、床下で配管が漏水した時と、洪水被害と、床下でシロアリが出た時の3つだと思います。断熱材の裏まで、水やシロアリが廻ってしまい、表面からは見えない可能性が高いからです。
質問③基礎断熱の断熱材として、片面アルミ付のDDSボード断熱材を使った場合、その下の基礎コンクリートが固まるまでの放湿を妨げる。スラブと接するラムダ(断熱材部分)は透湿し、アルミ蒸着部分は透湿しないので、ラムダ(断熱材部分)内で逃げ場がなくなった湿度がラムダ内で結露し、ラムダの中でカビないか?
→回答③ミラフォームは押出ポリスチレンフォーム3種bという種類の断熱材ですが、発砲断熱材の中でも、水が入りにくい断熱材です。下記表の透湿係数を見てください。
![](https://yoshidacraft.net/wp-content/uploads/2025/02/ミラフォーム透湿 2025-02-03-175108.jpg)
ミラフォームDDSボードスキン層ありM2RSの透湿係数は55以下で、DDSボードラムダの透湿係数は145以下です。数値が大きいほど湿気を通しやすい。
ちなみに厚手のビニールゴミ袋の透湿係数は、5~10でほぼ湿気や水を通しません。アルミや陶器の透湿係数は0、プラスチックバケツも、ほぼ0で湿気や水を通しません。
断熱材の中に水が入るのが心配であれば、ミラフォームのDDSボードスキン層ありM2RSが良いと思いますが、床下で万一漏水した場合でも、何日間も水に浸っている可能性は少ないので、DDSボード3種類のうち、どれを選んでも心配ないと思います。
下記の表は、各断熱材の透湿率が書いてあります。数字が大きいほど透湿しやすい。
![](https://yoshidacraft.net/wp-content/uploads/2025/02/断熱材透湿率2025-02-03-222742.jpg)
当たり前の対策として、基礎コンクリート完成後は、基礎コンクリートと基礎断熱材を雨水で濡らさないようにして、乾燥させることが大切です。
私は、基礎コンクリートと基礎断熱材を乾燥させる方法として、下記の1~4の対策を行い、最近は5も行っています。
1.上棟後は、特に基礎内部(建物内部)に雨水を入れないこと。入った場合は、早めに乾燥させること。
2.基礎完成から断熱材を貼るまでに乾燥期間を置く。基礎断熱材は基礎完成後1か月くらい後で設置しています。外壁が雨仕舞できる(外壁から雨が入ってこない状態)までは、柱の外側に雨養生のブルーシートを貼ると思いますが、作業中はめくって、基礎コンクリートが乾くように、通風を良くします。夏は特に通風を確保して基礎を乾燥させるため、写真のような大型扇風機を、1階が20坪だと、2台くらい入れています。基礎断熱材を貼れない期間は、外壁下地や屋根下地などを行います。
![](https://yoshidacraft.net/wp-content/uploads/2025/02/送風機.jpg)
3.1階床下地の24mmとか28mmの厚床合板を貼った後にも、通風を確保。1階床合板の、両端の対角 線で半畳分1枚ずつとか、フローリングを貼るまで合板を貼らない箇所などを設ける。床面に穴を開けておき、通風させて乾燥を良くするため。
4.完成後、基礎断熱用床換気口を設置。1階の床面積が20坪程度の場合、日本住環境のフロアスリッター600を7~8枚以上くらい設置している。
![](https://yoshidacraft.net/wp-content/uploads/2025/02/フロアスリッター 2025-02-03-141234.jpg)
5.できれば、24時間換気システムも、第一種換気システム澄家のように、給気は床下1か所のみに行うものが、乾燥には良い気がします。床下で常時、給気により空気の流れが出来るので。
上記、1~2のようにすると、基礎コンクリートが、ある程度乾燥した状態で断熱材を設置することになります。かつ3~5を行うと、乾燥も進むので、コンクリートの水分でカビが生えるということは無いと思います。
基礎断熱材を剥がして、裏面にカビが生えているかどうかを、確認したことはありませんが、床下点検で床下を這っても、カビくさいということはありません。
完成引き渡し後の、床下の温湿度については、実測しても露点温度(結露が生じる温度)になる可能性は、極めて少ないです。床下に温湿度計を入れて実測し続けている施主もいます。
Aさんからの返答
吉田さま
大変にご丁寧な返信誠にありがとうございます。
内容拝読させて頂きました。
ご回答頂いた内容で不安が払しょくできました。本当にありがとうございます。
特にコンクリート放湿に伴うカビは気にしていたのでとても助かりました。
私の家は12月末に基礎は完成しているのですが、大工などの手配の関係で、上棟が2月中旬になっていて、たまたま断熱材施工までの期間を開けられている状態です
本来、依頼している工務店に聞くのが筋なのは重々承知なのですが、あまり結露などに詳しいところではなく、全面断熱も私のお願いで施工いただくこともあり、悩んでおりましたので大変助かりました
また、漏水についてもほとんどケースはないとのことで安心しました。
改めましてこの度はご丁寧なご返信を頂きましてありがとうございました。
ヨシダクラフトからの返答
A様
基礎が去年12月末に完成しており、結果として上棟が2月中旬であれば、1か月半以上基礎コンクリートの養生期間があるということです。
上記を考えると、雨水だけ入れないようにすれば、カビ発生の可能性は低いと思います。
基礎断熱してある床下の漏水も、可能性としてはありますが、昨日書いたように排水管が詰まらないようにして、将来万が一、漏水してしまった場合は、対処するしかないと思います。
頂いた質問内容が普遍的であり、家造りする方の参考になると思いますので、やり取りをブログにします。
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有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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