Q1.0住宅 宇都宮小幡の家 「1階で生活が完結できる間取りの家で、かつ家族が帰省した場合も2階リビングが寝床となる延床面積31.15坪の小ぶりな住宅」
設計契約した「Q1.0住宅 宇都宮小幡の家」。
基本設計が完了したので、ブログで紹介します。
「温熱関連の数値も大切だが、その他の面での住み心地も大切だ」という施主の要望に、どのように対応したか?について箇条書きにします。
1階で生活が完結できる間取りになっている上に、お子さん達の家族が帰省した時に宿泊できるように、2階にミニキッチンと寝床にもなるリビングを設けた延床面積31.15坪の小ぶりな家。
高断熱住宅は、室内のどこも寒くないので、極端な話、廊下や納戸でも眠れるため、部屋の用途を兼用しやすく、小さな家でも広く暮らせる住まいになります。
LDKにソファベットを置いておけば、そこで眠れますから、普段は使わない客間のような、無駄なスペースを造ることが避けられます。
小さな家の場合は、客間を設けることは出来ないので、室内のどこでも寒くないし暑くもないという超高断熱住宅の特徴が、2階の開放的なLDKを、特別な冷暖房を必要とせずに、一時的に寝床にもできるということに繋がっています。
1階で生活が完結できる間取りになっています。1階に各個室とダイニングキッチンとお風呂があり、2階に行かなくても1階のみで暮らせる住まいです。
このwebを見てメールで問い合わせを頂き、予算・建物の大きさ・要望をお聞きして、計画ができると判断しました。
設計契約の後、要望書に記入してもらい、現在のお住まいと生活の様子を見せて頂いてお話を伺い、設計が始まりました。生活は新築後も変わらないことが多いので、既存の住まいを見せて頂き、カウンセリングすることを超重要視しています。
宇都宮市の中心市街地の土地区画整理事業地域。準防火地域内に建つ、間口約6.8間×奥行3間の、2階建ての下屋のあるQ1.0住宅。
吹抜けと玄関ポーチを入れた施工床面積は33.15坪です。
目次
土地区画整理地域に建つQ1.0住宅
敷地は宇都宮市の中心市街地の北西に位置する土地区画整理地域内にあります。戦災を逃れた旧道沿いには、古い大谷石を組積して造られた住宅や蔵が点在し、お寺もあり、古き良き宇都宮の雰囲気を感じさせる住宅密集地でした。地元の人間なら誰でも「あのあたりだね」と分かる地域です。
その地域が土地区画整理事業により、新しい道路と街区になって、特に防災面と交通安全面から、今以上に住みやすい地域になると思います。
土地区画整理地域で新築する場合の特徴
区画整理地域で新築する場合の特徴は、隣接する敷地の住宅も、ほぼ一斉に撤去された後に新築されるので、隣接する建物が、どのように建つのかが分からないことです。
一般的な建て替えなら、隣接建物は立っていることが多いので、南側の建物と重ならないように建物を配置して、窓を設けて南から日射取得したり、プライバシー確保のため、できるだけお隣と窓が重ならないように配慮しますが、それが出来ないので、隣接建物を想像して設計を行います。
新たな敷地も現在と同じく、北東道路の角地で、位置はほぼ現在と変わりません。ただし、北東の角は、車が通りやすく、かつ歩行者も安全なように、大きく敷地の角が「隅切り」されたのが敷地特徴でした。
南面から北東の隅切りの角までは6m程度しかないので、日射取得のために、建物を北側に寄せて、南側を空けるのは難しい。
南隣地は東側のみ接道し、その間口は「狭め」なため、自然と建物同士の距離は近くなります。
南側敷地の駐車場と建物が、どのように配置されるのかを、施主と共に想像してから設計しました。
当該敷地の駐車場を北道路の西側に2台配置して、建物をなるべく東側に寄せて設けるように計画しました。そうすることで、交差点から離れた車が安全に停めやすい駐車場になります。
南隣地は、東道路にのみ面しているので、駐車場を造るとすると、間違いなく東側になります。その場合、当該建物の南面の東側は南隣地の駐車場に面することになり、その部分は建物同士が重なる可能性は低くなると考えました。
建物同士が重ならないと想定した場所に吹抜けを設けて、大きめの窓を配置して、なるべく南から日射取得できるように計画しました。
住宅性能
断熱はいつもの210mm付加断熱のQ1.0住宅+省令準耐火仕様。
上下階は、南側の吹抜けを介した開放的な間取りになっており、個室と水廻り以外に間仕切りの無い、1階のダイニングキッチンと2階リビングが吹き抜けによって繋がる、大きなワンルームのような間取りです。
暖房用の床下エアコン1台と、主に冷房用の2階の壁掛けエアコン1台の、合計2台で全館暖冷房します。
夏の日射遮蔽材は、施主の希望により、引違窓はシャッターです。シャッターを下ろすことで、室内は暗めになりますが、外付けロールスクリーンの布が劣化した場合の交換が面倒とのことで、シャッターにすることになりました。縦すべり窓はハニカムサーモスクリーンで日射遮蔽します。
定番となりつつある、省令準耐火仕様&許容応力度計算による耐震等級3+制震ダンパーとして、火災保険料が安く、地震にも強い住宅となる予定です。
Qpexによる温熱性能計算結果
Q値0.92、UA値0.29。Q1.0住宅レベル2でした。下屋が2つあると、外皮面積が増えますから、総二階の建物よりも、温熱性能的には不利ですが、その分、間取りによる快適性を大切に考えました。
暖冷房設備容量計算結果
暖房1.55KW、冷房1.61KW以上あれば良いので、共に計算上は、暖房・冷房共に、2.2KWの6畳用エアコンが1台あれば、良いということになります。
余裕をみて、10畳用のエアコンを、床下暖房で1台、主に冷房用で1台の、合計2台採用予定。
暖房用の床下エアコンは三菱エアコンの霧ヶ峰をワイヤードリモコン仕様。主に冷房用の2階リビングの壁付けエアコンも、日立エアコンの高くない普通のものです。
1階で生活が完結できる間取りとは?
1階で生活が完結できる間取りが求められました。
今回の1階で生活が完結できる間取りの意味は、1階に各個室とダイニングキッチンとお風呂があり、2階に行かなくても1階のみで、なんとか暮らせるということです。
1階で生活が完結できる間取りとは、足腰が弱くなる、老後を見据えた間取りを作る場合に用いられることが多く、2階に上る回数を少なくできる間取りとも言えます。
付加断熱住宅の下屋について
壁に105mmの付加断熱をする場合、下屋の無い総二階の住宅のほうが、手間が掛りません。下屋を造ると、かなり手間が掛かります。特に、外壁材下地の通気を綺麗に通すには手間が掛ります。
だから、よく見てください。付加断熱している住宅は総二階が多いです。総二階にすると外皮面積を少なめに出来るメリットはありますが、それよりも下屋を造ると手間が掛るので、出来れば総二階にしたいのです。手間が掛るとは、施工難しくなり、コストが掛かることと同じ意味なので、総二階が多い。
ただし、前の項でも書いたように「1階で生活が完結できる間取り」にすると、総二階にはしずらいし、「南側に下屋のあるデッキを造るメリットも大きい」。
そのため、私は出来れば総二階にしたいと考えていますが、施主の希望をよく聞いて、下屋を造るかどうかの判断をするようにしています。
総二階にするために、建物を大きくしてしまうのは、下屋を造るよりもお金が掛かってしまうことが殆どなので論外です。
新築時に行う足腰が悪くなってからの4つの対策
新築時に、足腰が悪くなってからの対策として、施主と打ち合わせて行うことは4つです。
1つは、玄関アプローチに手摺を設ける事。
2つ目は、室内の必要な箇所に、適切な手摺を設けておくこと。
3つ目は、普通のシングルベッドよりも少しだけ幅の広い電動介護ベットを置いても、何とか枕元まで車椅子でも行けるようにすること。各個室は2畳分の収納を入れて6畳程度ですが、収納間仕切りの出幅を調整します。
4つ目は、階段に、将来対応で「椅子型電動昇降機」が付けられるように電源を設置すること。これで団欒する2階リビングへも行けるという算段をしています。
2階リビングを帰省時の寝床にする
2階にミニキッチンと勾配天井になるリビングを設けており、そこに2つのソファベットを設置して、お子さん家族が帰省した時の寝床にもなる計画です。
納戸を兼ねた趣味スペース
2階には納戸を兼ねた奥さんの趣味の部屋があります。美術品の収納スペースも入れて5畳と広くはありませんが、リビングと隣接して使いやすそうですし、1人分ですが、布団を敷いて寝床にも出来ます。
水廻りと各個室を絡めた使いやすい動線
寝室に近いトイレが求められました。寝室の前にトイレと洗面台があり、玄関にも近いので使いやすいと思います。
脱衣室内には、洗濯機と長年愛用している乾太くんはもちろん、天井までの衣類収納と洗濯用流しが配置されます。
洗濯用流し、TOTO のSK507は、施主の希望により、初めて取り付ける洗濯用ボウルになります。既存の住まいでも使っている深い陶器製ボウルは、ラフに手洗い出来るので、とても使いやすいとのことです。
必要充分な収納と引き戸の効果
いつものように、造作建具と造作家具を用いて、適材適所に収納を設けて、統一感のある室内を目指します。
小さな家での必須アイテムの「引き戸」を多用して、部屋同士を自然な形で繋げます。吹抜けもあるので、開け放しておくと家全体がワンルームのような雰囲気になるかもしれません。
持ち込む家具と購入予定の家具寸法が明確なため、いつものように図面に家具を描きました。既存の住まいを訪問しており、生活の様子を確認しているので、上手く行くと思います。
美術品を飾れる壁面
お子さんの1人が芸術家。美術作品を飾れる壁とストックするスペースが求められました。作品を飾れるシンプルな白壁を用意して、ピクチャーレールを複数設置予定です。
建物と一体化した外物置
2台の自転車、1組のタイヤ、外置きゴミ箱が配置できる外物置が求められました。引違いの防火戸は無いため、シャッターを開けて物置に入ることになります。
外物置内部には、可動棚も付けて、収納しやすくします。
独立した物置の場合は、その周囲にスペースが必要となるため、特に街中の広くない敷地の住宅では、建物と一体化した物置のほうが敷地を有効に使えて、外観の統一感も出ます。
全ての設備と機器がメンテナンス(掃除)しやすいこと
設備と機器が掃除しやすく、メンテ費用が極力掛からないことが求められました。
施主の希望により、第一種換気システムは、初めてマーベックス社の澄家使います。Q1.0住宅+マーベックス社の澄家という換気システムの組み合わせ。
基礎断熱専用の換気システムであり、換気本体は床下に設置されます。フィルター交換が外で脚立に乗らずに出来て、掃除しやすいことも利点の換気システムです。
しかし、床下に複数の太い排気ダクトと給気ダクトが配管されるので、給排水管の邪魔にならないように事前によく計画しておく必要があります。
照明器具も、いつものように極力天井には付けずに、交換しやすい壁面に付ける予定です。
ガルバリウム鋼板の外壁材
外壁材と屋根材は、既存の施主の住宅にも採用されていたガルバリウム鋼板が求められました。既存住宅は、30年近く、一度も塗装せずとも何とか持ったとのことで、施主のガルバリウム鋼板外壁材への信頼は厚いです。
既存住宅と同じようにガルバの色は、屋根・外壁材共にシルバー色。
当社は、ガルバリウム鋼板外壁材の住宅を多く手掛けています。好きで得意な外装材の1つですが、当然メリットとデメリットがあります。
ガルバリウム鋼板外壁材の一番のメリットだと感じることは、塗装の時期を逃しても、窯業系サイディングのように、基材まで傷むことが稀な事です。
基材まで傷まなければ、何とか塗装で復活できる可能性が高いです。
一般的な窯業系サイディングよりも、比較的長期スパンでメンテナンスコストを削減しやすい外壁材だと思います。
デメリットは凹んでしまった場合は、貼り終い部以外は、その部分だけを交換するのでなく、今まで貼ったほぼ全てを外して交換することが必要となるため、大変大がかりな工事になることです。また、見知らぬ一般ユーザーからも、自宅建築中の施工不良写真付きで、ガルバリウム鋼板外壁を上手に施工できる職人を紹介して欲しいというメールが来ることがあります。
当然、紹介はできませんが、上手くて、周囲に配慮できる板金職人が少ないことも、デメリットの1つかもしれません。当社では信頼できる板金職人を確保しており、1枚の長尺ガルバリウム鋼板で継ぎ目なく外壁を貼ることを基本にしています。
見学希望の方はご連絡ください
ご予算と価値観の方向性が合えば、見学して頂きたいと思います。施工中や完成後に見学希望の方は、下記の問い合わせフォームからご連絡ください。
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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