【更新】SUMIKA プロジェクト見学
東京ガスさんが企画・運営しているSUMIKA Project。
見学してきました。
東京ガスさんが、ガスならではの豊かな暮らしに対する理解を深めることを目指し、宇都宮市に持っている遊休地を使い、著名建築家に設計を依頼して戸建住宅を建築。
コンセプトは自然環境に配慮した「五感を楽しむ生活」とのこと。
建築中にも一度道路から見て、完成見学の機会を伺っていました。
私は工務店なので設計と施工をします。
施工者の視点から。
このような前衛的住宅を見学する時は、将来の経年変化に対応できる※納まりで造られているのか?ということに関心が行きます。
特に雨漏りや水の処理に対する納まり。
住宅で、一番瑕疵が出やすいのは雨漏り等の水関係。
普通の住宅で、かなり注意深く計画していても、思わぬ現象や施工ミスで水の浸入があることもあります。
ですから、屋根の庇の少ない住宅や、特殊な材料で造っている前衛的住宅では、特に雨水の処理が重要で注目せざるを得ません。
また、設計者の視点からは、施主の希望という抑制が掛けられた住宅のほうが、面白い家が出来るのだなと思いました。
これらの家に施主はいません。
施主がいたら、もっともっと面白い家が出来たと思います。
(多分、世の中の専業設計事務所。住宅設計を中心としたアトリエ系事務所は、殆ど食えて無い身の上。売れているセンセイたちの設計した家に対しては、いろいろな思いがあっても語れない雰囲気があります。だから工務店の私が語ります。)
写真左 西沢大良氏「宇都宮のハウス」 右 藤本壮介氏「House before House」
場所は星ヶ丘中学の南側道路に面しています。
藤森照信氏「コールハウス」
伊藤豊雄氏「SUMIKA パヴィリオン」
一番印象に残ったのは、伊藤氏の※納まり。
前衛的な印象の裏に経年変化にも対応できる※確かな納まりをしています。
経験(痛い思い)をしないとこのような計画は出来ないのではないでしょうか?
反対に、水の処理に配慮が無く、定期的にメンテしないと5年も持たないのでは?という家もありました。
あくまで私の感想です。
実際に住む住宅では無いので、少ない部材でシンプルに納めて、実際に暮らすということを考えず、見た目重視という考えなのだと思います。
または、予算による優先順位でそうなったのかもしれません。
しかし、建築を志す学生、建築家に依頼したい施主等も見学するはずなので、雨水への配慮もあったほうが良かったと思います。
とりあえず、配慮せずシンプルに納めて雨漏りしても、工務店がお金を出してなんとかするだろうと思っている?
私は施工をします。
こんな設計者の施工を担当する工務店は大変だなと思ってしまいます。
カッコいい(?)建築の裏に確かな納まりを発見する。
もっとカッコいいと思います。
地元宇都宮の設計事務所の方が解説員を務めていました。
解説員の方には、良い配慮をしている納まりの説明もして頂けると、建物の見方に奥行きが出ると思います。
では、「SUMIKAパヴィリオン」のカッコいい納まり。
フラットに見える屋根の上からコの字型の部材を外壁面より少し出して水を処理。
外壁面の汚れを少なくする配慮。
写真右上がそれです。
床には砂利で水はね防止。
屋根の上から撮った写真からもこの存在は目立ちません。
寸法の決定もかなり慎重に行っているのだと思います。
さすが、男前。
外周のガラス面と室内の木材面にゴムで隙間を取っている。
丸いのがそれ。
ガラス同士の固定と木材面のスペーサーを兼ねているようです。
ガラスに木材を付けてしまうと半年もしないうちに結露でカビが出ると思います。
この木材が構造体になっています。
床のモルタル面。木の柱の周りには、薄いクッション材を廻して、収縮によるモルタル面の割れを最小で防いでいる。
短時間の見学でこれしか分かりませんでしたが、配慮は他にも沢山ありそうです。
いろいろと書きましたが、良いところも沢山。
売れている人には売れている理由があるのです。
変わった造りでワクワクし、気分が高まった住宅もありました。
でも、今考えると、ジャングルジムみたいで童心に返っただけのようです。
さすがに全部がメディアに載りやすい住宅になっていました。
※納まりとは・・・
例えば壁と床が接する部分を取り合いという、その部分をどのような形にするかを「納まり」
という。
有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。
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