2016-03-25
インテリア・家具・収納

和風ホテルの造り付け家具と建具(ドア)が、住宅を新築・リフォームする時の参考になるという具体例

富士山

前回のブログに続いて、宿泊施設の話です。旭川では、扇松園(せんしょうえん) という和風ホテルに1泊しました。トップ写真には和風のシンボル富士山を持ってきましたw。

 

ホテルや旅館の室内は、狭い空間の中に人が使い易い機能が凝縮しているので、住宅を新築、リフォーム、リノベーションする場合にも参考にできることがあります。

 

今後は、家族人数が減るに従い小さな家が増えていくので、家具と建具(ドア)によって、室内を使い易くする工夫は、宿泊施設に学ぶ点もあると思います。

 

特に和風ホテルは、洋風ホテルに比べて襖や障子など建具の数が多く、建具の面積も大きくなるので、室内の印象を大きく左右します。ですから、和風ホテルは、造り付け家具と建具(ドア)に力が入っていることが多いです。

 

扇松園さんも1泊朝食付で8000円程度と、ビジネスホテル並みの料金でしたが、とても落ち着く良いホテルでした。旭川は家具の産地でもあるため、ホテル内の休憩スペース等にシンプルなデザインの無垢材で造られた椅子や机が置いてあったことも、ホテル全体の印象が良くなった理由だと思います。

 

旭川家具工業協同組合

 

全国の主な家具産地

 

では、旭川の和風ホテル扇松園さんにあった造り付け家具と建具(ドア)の具体例を見てみましょう。

 

小さなクローゼットの扉に鏡が隠れていた

鏡付扉2

上着を入れる小さなクローゼット。両開き戸ですが、扉の大きさをよく見ると右扉が大きく、左扉が小さいのが分かります。

 

右扉には、もう1つ扉があり、開くと身だしなみを整えるための鏡が隠れていました。

鏡付扉3

 

扉に鏡を付けるのは私もよくやりますが、鏡を隠したことは無かった。鏡に扉を付けた理由は、鏡が見えていると、室内の色々なものが映り込んでしまい、室内が落ち着かなくなるからだと思います。

 

両開き戸を開くとこんな感じ。

鏡付扉4

右扉の裏側を見てください。鏡をカバーする扉と、クローゼットのドアを同面(どうづら。同じ面という意味)にするため、ドアの一部を厚くしてあります。シンプルにみせるための工夫です。

 

そのクローゼット下にスライド式の棚が隠れていた

鏡付扉5

クローゼットの扉の下には、スライド式の棚が隠れていました。使う時に棚を出せるようになっています。この棚の用途は良く分かりませんが、想像すると着替える時に財布やスマホを置いておくのに使うのかもしれません。または、下の金庫に貴重品を入れる時に、金品を床に置かないように仮置きする用途かも。どちらかでしょうが、これは無くても良いと思いました。

 

窓の内障子の外側には、断熱性を上げる建具が隠れていた

サッシ内側引き戸

窓の内側。障子とサッシの間には、薄い引き戸が隠れていました。サッシはアルミサッシが付いており、樹脂サッシや木製サッシに比べて断熱性能がよくありません。内陸の盆地である旭川は、北海道内でも最も寒い地域ですから、木造住宅の窓は、樹脂サッシが標準です。

 

この薄い引き戸。あまり使われていないようで、きつくて閉められませんでした。なので閉めた写真はありませんw。

 

障子を閉めた時に隙間風が入らない工夫は、戸じゃくり

戸じゃくりオス

戸じゃくり オス

戸じゃくりメス戸じゃくり メス

 

障子を閉めた時の木部の合わせ目が、オスメスになっており、障子を閉めた時にピッタリと閉まるようになっています。これは、戸じゃくり(とじゃくり)の1種だと思います。

 

実はこの障子も紙にみえますが、貼り替えの必要ないワーロンプレートです。障子を貼り換える必要がないので、便利なのですが、ワーロンを落とし込みにすると、建具の値段が高くなるのがネックです。この建具は、落とし込みでなく、障子の格子の外側から納めています。うまくワーロンプレートが、外れない工夫がしてありました。造り方が分かったので、今度取り入れたいと思います。

 

※戸じゃくり(とじゃくり)

建具を閉めたときに隙間が出来るのを防ぐために、柱や戸枠に戸の厚さ分の溝を掘ること。

造作建具だと、このような工夫ができる。既製品建具だと出来ない

鏡付扉

YM-house 鏡付扉

 

今まで書いた建具(ドア)の工夫は、それぞれのスペースに合わせて造る、造作建具(ぞうさくたてぐと読みます。建具職人が造ったオーダーの建具のこと)だからできることで、既製品の建具では出来ません。

以前にブログにも書きましたが、違和感の無いシンプルな室内とメンテナンスできる持続性を確保するためには、既成品の建具でなく、建具職人が造る造作建具(造作ドア)の1択になります。

 

造作建具と既成建具のメリット・デメリットについて詳しく書きました。よかったらご覧ください。

 

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

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