映画の中の建築、インテリア/「裏窓」ヒッチコック

裏窓写真出典

映画の中の建築やインテリアの興味深いポイントを独自視点でご紹介します。

第1回目はヒッチコックの「裏窓」（うらまど、Rear Window）です。

裏窓のあらすじ

カメラマンのジェフ(ジェームズ・スチュアート)は事故で足を骨折し、車椅子生活を余儀なくされる。そんな彼にできる楽しみは、カメラの望遠レンズを使って裏窓から見る隣のアパートの住人達の人間模様の観察であった。

ある日、いつも口喧嘩が絶えなかった中年夫婦の妻が突如として姿を消す。セールスマンらしい夫の怪しい挙動を観察していたジェフは、数々の状況証拠から殺人事件と確信。恋人リザ(グレース・ケリー)と共に調査に当たる。事件を認めない友人の刑事を納得させるため、確たる証拠を掴もうとする2人に危機が迫り……。　ウィキペディアより

裏窓の建築とインテリアの興味深いポイント

劇中、カメラはジェフの部屋から出ません。ジェフの部屋の中と、裏窓から見える隣家のアパートの様子が、映画の全てです。場面を限定することで、観客もジェフの部屋に居るような気にさせます。ジェフの部屋は大きな窓がある広いワンルームで居心地も良さそうです。その大きな窓から隣のアパートが見えます。その居心地の良い部屋に訪ねて来るのが、恋人役のグレース・ケリー。ですから視聴者の男性は、ジェフになりたいと思うに決まっています。グレース・ケリーの服装もとてもおしゃれで、今見ても素敵です。このインテリアとファッションで、趣味の良いカップルだと印象付けています。それにしても、グレース・ケリーは美しすぎますね。

また、裏窓で視聴者の心が動かされるのは、他人の生活を覗き見ていること。それも、1部屋でなく、隣のアパートのほぼ全ての部屋を同時に見ているという設定になっています。隣家アパートの住人の生活が一斉に演じられて、カメラもワンシーンで撮っています。普段、見ることが出来ない他人の生活をパノラマ的視点で見られるのですから、視聴者も興味深く楽しいのです。

裏窓の季節設定が夏の理由

裏窓の季節設定は、夏です。夏という季節設定が、映画にとても重要な意味を与えています。冒頭、主人公の額から汗が流れ落ちるシーンは、夏のジメジメした雰囲気と建物内部の湿気をリアルに感じせます。また、骨折した脚を固定しているギブス部分が痒いという演出が何度も入り、二枚目っぽくない親近感を与えますし、骨折してイライラしている様子も分かります。季節設定が他の季節であれば、隣家の住人たちが窓をあける頻度も少なくなるので、季節設定は夏なのではないかと思います。夏だと色々と分かりやすい設定に出来ます。

私が一番好きなシーンは、隣のアパートの住民が、夜中涼しいベランダで寝ていて、朝にマットレスを部屋に入れるシーンです。室内が暑いということが、とてもよく分かるシーンです。風が通りそうな建物であり、ベランダなので、私も住んいたら、ベランダで寝ていたかもしれません。心地よさと、人間らしさがとてもよく分かります。裏窓は、実在のアパートを借りてロケーションするのではなく「全編スタジオセット撮影」という方法が採用されています。

本作は主人公とその部屋の窓から見えるアパートの住人たちの生活風景を全員が一斉に演じ、一連の流れの中での撮影が要求されたため、実在のアパートを借りてロケーションするのではなく「全編スタジオセット撮影」という方法が採用された。したがって窓の外にひろがる隣近所のアパート群との距離、見える角度、車道を通過する自動車の種類、台数、タイミングなど、全てが完璧に計算されたものとなっており、ヒッチコック作品の中でも特に作り込みの細かい作品である。ウィキペディアより

ヒッチコックのカメオ出演

ヒッチコック監督は、自分の映画にちょっとだけ出演することが多いのですが、裏窓では、隣のアパート最上階の作曲家の部屋に登場。ピアノの横で時計のネジを巻いている人として出演しています。

ヒッチコック写真出典