TROOP

──清巌寺通りの角地に建つ美容室併用木造3階建て住宅

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角地の建物は、一角の顔となる責任がある

宇都宮市の清巌寺通り沿いに建つ、美容室併用木造3階建て住宅です。実家が建っていた敷地での建て替え。オーナーは下北沢で23年美容室を経営。生まれ育った宇都宮に木造3階建て住宅を造り、美容室を移転しました。

敷地は、下町的な住宅密集する角地。最近、近くに日本酒専門居酒屋、ハワイアンカフェ、古民家イタリアン等、大手チェーン店ではない「こだわりの個人飲食店」が複数開店。グルメブロガー達が頻繁に取り上げたため、一部の人には「おなじみ」の地域になりつつあります。こだわりの飲食店が建つ街の雰囲気にも合う、美容室併用住宅を目指しました。

角地の建物は、その一角の顔となる責任があるような気がします。少なくとも2方向から建物が見えることで存在感がありますし、道案内をするにも、「あの建物の角を右に」などと、建物を目印として説明したりするので印象に残るからです。

既存店舗を訪問し、設計の手がかりとした

ご依頼頂くと決まった後、最初に下北沢の既存店舗を訪問し、オーナーと話をしながら、店内を実測しました。敷地の大きさを考えると、店の広さは下北沢と同じ10坪程度なので、既存店舗を見ることが参考になると考えたからです。既存店舗の良い部分を継承し、使いにくい部分を修正することで設計の手がかりとしました。

視察した下北沢は日本一の美容室の激戦区。美容室同士が隣り合い、1つのビルに2つの美容室が入っていることも珍しくありません。外観、看板、インテリア、素材等の建築での差別化が上手く行われており、個性的な店舗が目立ちます。地方では見慣れた空き店舗が全くありません。

すぐに個性的な多くの店舗が、貸店舗のリフォーム物件であることが分かりました。新築の場合は、法律で内外装が規定されますが、リフォームは全く自由です。下北沢の美容室の多くは、リフォームの自由さを存分に生かして、木材で窓や外壁を造ったりして、フランクな土地柄に合った、手作り感ある店を造っていました。

ただし今回は新築であり、かつ法規で厳しく材料と施工が制限される準耐火建築物になるので、リフォームのような自由な内外装は出来ません。しかし、下北沢の美容室は、参考にするのにちょうどよい広さでした。オーナーと下北沢の気になる店舗を視察し、方向性を話し合いました。

店舗がメインの設計

店舗ですからなおさらですが、人々が建物の前を通ることで、ちょっと楽しくなるような気分にしたい。その解決方法が外観を住宅に見えないようにしながら、手作り感を出すことでした。

手づくり感を出すために、無垢の木材ウェスタンレッドシダーを外壁の外側に貼り、店舗入口の両側にも同材のウッドデッキを設けています。店内は、自宅に招かれたようなリラックスできる雰囲気を出すために、珪藻土の壁と木材を使って、暖かみのある内装に仕上げました。

敷地が狭く、屋根の軒は出せないので、陸屋根に近い外観です。ビルに近い真四角な外観の屋根を陸屋根(ろくやね)と言います。敷地が狭く造形的な外観は出来ないので、壁の1部をふかして陰影を付けて住宅に見えない外観としています。また、生活感を出さないように、洗濯物が見えないようにするため、ベランダの手摺壁を2.4Mと高くしました。

東側を店舗入り口として、一番目立つ敷地の角に大きめの窓を設けて、店内の雰囲気が分かるようにしました。住居用の玄関は北側。1階床面積12.5坪のうち、店舗部分を11.3坪と最大化。店舗部分は出来るだけ正方形に近くして、最短距離で動作ができ、どこに居ても店内の雰囲気が分かるようにしました。

2・3階の住宅部分は、2階にLDK、水廻り、個室、WIC。3階に主寝室、WIC、ベランダを設けました。狭小住宅ですが、収納を最大限確保しました。また、全てのドアを引き戸とすることで、狭くても移動しやすく、使い易い室内を実現しています。

木造3階建て住宅の耐震性と耐火性について

木造3階建て住宅は特殊な住宅です。法律関連では、木造3階建て住宅は、確認申請書にも構造計算書を添付しなければなりません。また、住宅の骨組みである柱や梁の構造体が完成した施工途中の時点で、中間検査が実施されることも普通の木造住宅とは違うことです。図面の段階から施工中も、厳しく外部からチェックを受けます。その構造の厳格さは、良い意味で、耐震性の高さに表れています。よく、ネット上に木造3階建て住宅は揺れやすい等と書き込みがありますが、この住宅は、2階建て住宅以上に揺れを感じません。金物と構造面材で固められた耐震等級3の住宅は安定感があります。

準防火地域の木造3階建て美容室併用住宅。防火構造の建物です。主な防火措置として、外壁内部は、石膏ボード12.5㎜+9.5㎜の二重貼り。室内の間仕切り壁は石膏ボート15㎜。天井は全て耐火石膏ボード15mm。火災が上部に廻らないように、外壁と全ての間仕切りにファイアーストップの木材が設置されています。3階建の住宅は、通常の火災によって容易に倒壊しないような仕様になっています。栃木県は敷地が広いので、木造3階建て住宅は非常に少ないです。


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北東より建物を見る。角地の建物。
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北面外観。外壁に凹凸をつけ陰影を出し、住宅には見えない外観としている。

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南東より建物を見る。3方向から建物が見える。どの方向から見てもおかしくない住宅を目指した。
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美容室入口。白壁に赤いテントが映える。

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北東より店舗を見る。外部にウッドデッキを設けて、小物が置けるようにした。
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店舗入口から待合を見る。オーナーの個性が感じられる店内。

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セット面を見る。
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セット面から入口を見る。

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シャンプー台。手造り感のある黄色いタイルが貼られたリラックスできるシャンプー台。
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店舗トイレ。

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受付。壁はウェスタンレッドシダー。外部と同材。
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住宅部分玄関。

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玄関内部を見る。
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2階個室よりリビングを見る。2枚引き込み戸を開けるとリビングと個室は一体になる。

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リビングを見る。
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2階個室を見る。隣がWICになっている。

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キッチンは2階。コンパクトで使い易い。
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3階ベランダを見る。床をウッドデッキとしてアウトドアリビングとして使う。高い白壁は、映像が写せるスクリーン。

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3階主寝室。奥がベランダ。
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天井までの収納を造り付けた。ギター、CD DVD等でぎっしり

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閉めるとスッキリ。ギターがピッタリ納まった。
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主寝室の南面を見る。

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主寝室に隣接する4帖のWIC(ウォークインクロゼット)
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階段見下ろし

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店舗夜景。北東より建物を見る。
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店舗入口。暖かいオレンジの光が漏れる。

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店舗夜景。北東より店舗を見る。
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店舗コーナー窓。窓枠を工夫して小物が置けるようにした。

TROOP外観 パース
外観パース 外壁の陰影が分かる
troop模型
模型 右側が最終案。3階部分が大きくなり外観がシンプルになった。


美容室併用木造3階建て住宅TROOP(トゥループ) 概要

所在地: 栃木県宇都宮市仲町3-10
用途・構造: 店舗併用住宅 木造軸組構法3階建て
設計施工: (有)ヨシダクラフト 設計協力: (有)枝川設計
敷地面積: 63.15㎡(19坪)
延床面積: 119.76㎡(36.15坪)。うち店舗部分36.93㎡(11坪)
屋根: ガルバリウム鋼板立ハゼ葺き
外壁: ラスモルタル吹付塗装
室内壁天井: 店舗部 珪藻土/住居部 珪藻土クロス
室内床:店舗部 塩ビシートタイル/住居部 パインフローリング
玄関ドア:店舗部 オーダーフロントサッシ/住居部 アルミ高断熱玄関ドア
サッシ:アルミ樹脂複合サッシ LOW-Eペアガラス
断熱気密:壁 防湿フィルム付高性能グラスウール断熱材ア)100 16K
天井: 高性能グラスウール断熱材ア)200 16K+気密シート