2015-06-18
本・映画

読書感想文「日本人はどう住まうべきか? 養老孟司・隈研吾」

日本人はどう住まうべきか?

解剖学者であり、著書「バカの壁」で有名な東京大学名誉教授の養老孟司(ようろうたけし)氏と、栃木県では馬頭町広重美術館の設計者として有名な、東京大学教授の隈研吾(くまけんご)氏の対談本。気鋭の論客2人が日本の住まいの問題点と対策を分かりやすく語ります。お二人とも東大卒、東大教授であり、中学高校も先輩後輩同士。力の抜けた雰囲気で会話が進みます。

 

震災、人口減少、少子高齢化、東京集中、仕事の変化などの問題を抱えた日本人は、これからどう暮らし、住まうべきか?日本の昔からの暮らしと現状との関係、そして未来の住まい方について。この本を読んで日本の住まいの現状と未来を俯瞰してください。面白かった部分を書き出してみます。

 

 

 

コンビニ型建築をひねり出したコルビジェ

サヴォア邸サヴォア邸出典

20世紀最高の建築家と言われているコルビジェ。どうして彼が有名になったかというと、ピロティという細い柱で、建築と地面を離したからである。彼の代表作と言われているサヴォア邸は、もともと綺麗な緑に囲まれている美しい場所に建っているのに、わざわざピロティで建物を浮かせて、寒々しい?!屋上庭園を造って自然と一体と住むとか言っている。

 

そういう自然との不自然な関係の作り方で、彼は世界に知られるようになった。廻りの緑のほうがよっぽど感じがいいのに、コルビジェは湿度が高いからとか、屁理屈をこねまわして、庭園を上に上げた。

 

その理由は、ピロティにして大地から建築を切り離せば、どんな環境の中だって同じようにピロティ建築は作れる。そのやり方は、世界のどこでも通用することを彼は見抜いていた。そういう意味ではマーケティングの天才で、それで世界的に有名になった。

 

どこでも通用するピロティという具体的な形態を発明したのは凄いが、よく考えるとコンビニ的かもしれません。

 

アメリカの超高層ビルの花屋の話

花屋

アメリカでは、超高層ビルの1階には花屋さんがよくあるという。家賃を物凄く安く抑えて花屋さんに1階に入ってもらう。確実に花を飾ってくれて自分でメンテナンスもしてくれる人間付緑地である。花屋さんはつまり並木、植栽と一緒で、植物から高い家賃は取らないという話。コーヒーショップも同じで、コーヒーショップが1階にあることで、街が楽しい雰囲気になる。それと反対なのが、日本の超高層ビルで、家賃が高くて、1階には普通の店は入れないし、短期的に成り立つショールームやアンテナショップばかりが入っている。そういう店は何年か後には撤退するので、街の風景にならない。

 

花屋とコーヒーショップの話はいい話。すぐに撤退する会社が入るより、このほうが行きたい街になりそう。

 

モンゴルではパオの中が共用空間

パオ

パオ出典

モンゴルでは、パオと呼ばれる折り畳み式のワンルームが家族の共用空間。プライベートは外にある。アフリカのサバンナも同じで小屋の中に何十人も生活する。小屋の中こそ、公共でセックスは外でするという。

 

プライバシーを守るために家を造るのでなく、家の中こそが公共空間。日本とは全く逆の生活で面白い。

 

 

マンションの矛盾は、年月が経つと大きくなる

日本では分譲マンションが主流。ビルそのものは公用なのに、その場所の一部分を私用するというヘンな感覚が普通になっている。(言われてみたら大きな矛盾。こりゃ、凄い!)年月が経つとその矛盾が大きな問題になります。マンションは共同所有のため、建替えがしにくく、建替えられない場合は最終的にスクラップにするか、スラム化するしかありません。それなのに、分譲されるときは、あたかも一生の安心を買った気になってしまう。20世紀の最初に、住宅ローンで家さえ手に入れば幸せな一生を約束するという上手い嘘をアメリカが発明して。その幻想が一番うまく効いているのが、日本である。

 

対談本は、人がおしゃべりしているのを聞くように気楽に読めるのが利点です。日本の住まいの、過去、現在、未来が独特の視点で語られているので、とても面白く読めました。注文住宅建築、リフォーム、マンション購入を考えている人にお勧めしたい本です。

 

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

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