2015-06-08
土地・地盤
家づくりの初めに

狭小住宅を建てる施主が事前に理解しておくべき隣地状況と対策

狭小住宅建築で隣地を借りるのは必須

右が現場、左がお借りした隣地。

宇都宮市の中心市街地で美容室併用木造3階建て住宅の施工がスタートしました。敷地面積19坪、建築面積13.6坪、延床面積36.6坪です。延床面積は36.6坪ですが、ほぼ敷地一杯に3階建てが建つという意味で狭小住宅です。狭小住宅を建てる場合は、敷地内に車を停めたり資材を置けないので、隣地を借りたりする必要があります。普通の住宅よりも隣地を借りる分だけ、余計にお金が掛かります。今回は、狭小住宅の設計及び間取りの注意点ではなく、これから「狭小住宅を建てる施主が事前に理解しておくべき、隣地状況と対策」について書きます。

 

狭小住宅は工事用車両を停める駐車場の確保にお金が掛かる

駐車場写真出典

 

住宅建築の場合の工事用車両とは、主に現場で作業する職人の通勤用車両、資材運搬車両とレッカー車や生コン車、ポンプ車、ユンボ等の工事用特殊車両を指します。狭小住宅の建つ敷地とは、のどかな団地の敷地でなく、交通量の多い街中の敷地になります。路上駐車の取り締まりが厳しい地域です。私の住む栃木県宇都宮市で言うと、宇都宮駅、宇都宮市役所、栃木県庁近辺が狭小住宅の建ちそうな地域に当ります。

 

このように、狭小敷地では、敷地内に工事車両を停めるスペースはなく、路上駐車もできませんから、工事用駐車場が必要となります。工事用駐車場は、施主に借りて頂もらうか、造り手側で探して見積もりに入れることになります。郊外の団地などは、敷地が広いため、敷地内に工事用駐車場が確保できますし、交通量も少ないので、路上駐車はしやすいため、工事用車両の駐車場代金は、一般的には計上しません。

 

狭小住宅では、工事用駐車場はどこに借りたらよいのか?

工事用駐車場は、工事現場の隣地を借りられればベストです。隣地を借りることが出来ない場合は、重機を入れることが困難になるので、また余計にお金が掛かります。それは後程書きます。隣地に建物が建っていたりして隣地が借りられない場合は、工事現場からなるべく近くに借りるのがベターです。工事用駐車場を誰から借りるか?については、建替えの場合は、その土地に長く住んで、近隣との付き合いもある施主に情報を求めます。新たに土地を購入した場合は、ネットで不動産情報をあたり、近隣住民にも工事用駐車場として借りられそうな土地がないかを尋ねる場合もあります。次は、隣地を借りることができない場合を見てみましょう。

 

狭小住宅では「隣地が借りられるか借りられないか?」で、大きく工事金額に差が出る

新築の場合、既存建物が建っている場合は、建物を解体してから新築工事をはじめます。解体工事では、建物を壊すのに建物の脇に重機を設置して建物を壊しはじめます。狭小住宅で敷地内もしくは、隣地に重機が入れるスペースが無いと、重機が入るスペースを確保するまでは、人力解体となります。人件費は高いです。隣地を借りる等して、最初から解体用重機を入れることが出来た場合と比べると、解体用重機が入れなかった解体工事の金額は人力解体の分だけ高くなります。

 

また、地盤が弱い場合の地盤改良工事では、現場にミニプラントと重機が必要であり、家の骨組みを組み立てる建て方では、建物脇に柱と梁を組み立てるレッカー車が必要になります。隣地が借りられないことで、これらを全て人力で行うことになれば、多額のお金が必要になります。狭小住宅では、隣地が借りられるか、借りられないかで、大きく工事金額に差が出ることが分かると思います。

 

狭小住宅で、工事用の駐車場をいくらで借りるのか?

近隣の駐車場代金の相場をネット検索し、土地の所有者もしくは不動産業者と交渉するのが普通かと思います。その場合、あまりに安い金額提示は、今後の施主と土地所有者の付き合いを考えると、施主の不利益になるかもしれないので、提示する金額はよく考えたほうが良いかもしれません。

 

狭小住宅では、足場が敷地内で納まらない

狭小住宅とは、敷地一杯に建物が建つ、小さな家を指します。隣地境界線(道路境界線)から、建物の外壁までが近いことがほとんどなので、敷地内に足場を建てられず、隣地(道路)をお借りして、足場を建てることも多いです。狭いところに足場を建てるので、作業しにくい狭い幅の足場となることが、ほとんどです。隣地を駐車場としてお借りできていれば、その面に足場の階段を付けるなどして、最低でもその面の足場は、比較的使い易い、普通の足場とできます。足場上での職人の作業の「しやすさ」が施工品質に関わることもあるので、できるだけ使い易い足場とする必要があります。

 

狭小住宅を建てる場合、普段から隣家や近隣と仲良くしておくのが吉

 

戸建住宅を建てる場合は、隣家や近隣の方々と普段から仲良くしておくのが吉ですが、狭小住宅ではこの傾向が顕著です。なぜなら、今まで書いたように、敷地をお借りしたりする可能性が高いからです。また、工事する建物から、隣家までがとても近く、工事で発生する音等でご迷惑をお掛けする可能性があるからです。隣家や近隣が工事をするときは、反対の立場になりますから、お互い様の精神で対応するのが良いと思います。経験はありませんが、狭小住宅を建てる場合、隣家や近隣と仲が悪いと、隣地が借りられず余計にお金が掛かったり、文句を言われて工事が進まなくなったり、下手したら工事できないなんてこともありえます。

 

それでも狭小住宅、狭小敷地はメリットが多い

狭小住宅、狭小敷地の隣地状況に関するデメリットを書いてきましたが、デメリットを越えるメリットがあるので、多くの方は狭小住宅の建つ街中に住みたいわけです。宇都宮市の狭小住宅地域は、宇都宮駅、宇都宮市役所、栃木県庁近辺であり、今後ますますコンパクトシティ化されますから、郊外よりも住みやすくなると思われます。街中に住んでいれば、車に乗らなくても、病院に行ったり買い物に行ったり、役所に行ったりできます。また、交通量の多さや人の多さは、その地域で商売をする場合は、メリットになることが多いです。私も街中に住んでいるので、便利さからとても引っ越す気にはなれません。多めの工事費が掛かっても、街中の狭小住宅に住みたい理由は多々あるのです。

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

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