2015-06-01
住宅設計

「天窓の数は必要最小限にしてくれ」と、施主はキッパリ設計者に言うべきだという話

天窓専門メーカー「ベルックス」から届いた天窓リフォームチラシが分かりやすく、レイアウトも綺麗なので眺めていました。チラシはこれです。

 

ベルックス天窓チラシ1

ベルックス天窓チラシ

 

 

シンプルでよく出来たチラシです。ちなみに私は、天窓を付ける場合はベルックス社の天窓を使っています。下の写真はベルックスの天窓を使った当社施工例です。

 

天窓

天窓施工例

 

現在、日本国内のサッシメーカーは、ほとんど天窓は作っていなくて、ベルックス社の販売代理店状態なのでした。リクシル、YKK、三協のサッシ大手3社の中で、オリジナルで天窓を作っているのは、リクシルのみ。以前自社で天窓を作っていたYKKと三協は、現在ベルックスの天窓を売っています。ベルックスは、デンマーク生まれの、世界NO.1ブラントです(チラシより抜粋)

 

YKKの天窓はベルックス

 

三協の天窓もベルックス

 

 

チラシには、まず

 

古い天窓でお困りではありませんか?

 

とあります。やはり、天窓は古くなると色々と困ることが起こるのです。そして、

 

屋根交換・メンテナンス時が天窓交換のチャンス!

 

天窓だけ取り替える工事では、既存の屋根部分に負担をかけない工事の工夫が必要ですが、屋根葺き替えでは、ルーフィングや屋根材を新しくするので、新築同様の工事が行えます。

 

とあります。

 

保証欄には、3年保証/ブラインド・電装部品。10年保証/雨水侵入・水切り。20年保証/ガラスシール・内部結露とあります。天窓の寿命は、20年程度だという事が分かります。

 

分かりやすく言うと、天窓は20年ほどで交換となる可能性が高いので、屋根のメンテナンス(葺き替え)の時に天窓交換も一緒に行いましょうということです。

 

天窓は、普通の窓(サッシ)と違い、雨の降ってくる方向に対して、垂直に近く、直射日光もまともに受ける形で付いているから、過酷な環境にある建築部材なのです。だから、普通の窓よりも劣化が早く交換の可能性が高くなります。屋根のメンテナンスと一緒に天窓まで交換するのは、一石二鳥というか、当然その時に行うべき話なのです。天窓を交換するには、天窓廻りの屋根と内装も壊し交換する必要があります。

 

このチラシを見てあらためて感じたことは、新築時に「天窓設置は必要最低限にすること」「できれば天窓設置はしないこと」です。

 

街中の狭小敷地では、隣家が迫っていて窓から採光できないために、「天窓」から採光する場合や、将来、隣家が建った場合に備えて、新築時にあらかじめ天窓設置をすることもあるでしょう。しかし、それは最小限にすべきです(これ大事です)。くれぐれも、新築やリフォームを行う方は、天窓に憧れないようにしましょう。

 

意匠系建築雑誌を見ていると、やたらと天窓を付けている家があります。「もう天窓はこれだけ付いていれば必要ないでしょう」「もうこれ以上天窓を付けるの勘弁してあげてください」と言いたいくらいに天窓を付けている家もあります。

 

「建築家住宅 天窓写真」とグーグルで検索すると、たくさんの天窓が付いている住宅があります。

 

「建築家住宅 天窓写真」

 

施主は、将来思いがけないメンテナンスコストを支払うことが分かっているのでしょうか?多分、分からないと思います。天窓は普通の窓に比べてメンテナンスが必要になる可能性が高いという説明も受けていないと思われます。設計者もメンテナンスのことまで考えて天窓を計画している人は少ないです。ですから、お施主様におかれましては、設計の時点で不必要な天窓は付けないよう、設計者に強く自己主張することをおススメします。

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

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