2015-05-09
リフォーム
建材・住宅設備・便利グッズ

60年前のラワンベニアを見て感じた、私は新建材が嫌いなのではなく、廃盤になってしまう新建材が嫌いだということ!

60年前のラワンべニア

60年前のラワンべニア。飴色になっている。

約60年前に、内装仕上げ材として施工されたベニア板(合板とも言う)を見る機会がありました。色は濃く、出汁がでそうな風合いに変わっていましたが、60年物とは思えない程、劣化が少ない状況だったので驚きました!べニア(合板)は新建材ですが、長く使える建材だということを再認識しました。60年前のベニアの状況とベニア板(合板)の歴史について書きたいと思います。また廃盤になる新建材のデメリットもザックリ書きたいと思います。

 

既存ベニアの状況と施工方法
60年前のラワンべニア

before。両側のラワンべニアは健在。奥の漆喰壁が結露や湿気で痛んだと思われる。

仏壇廻り壁貼り替え

after。壁、床、天井をシナべニアで貼り、カウンターの無垢材は痛んでいたので削りなおして再生。

仏壇廻りリフォーム

シナべニアにオイルを塗り、仏壇が納まった。

既存壁は、べニアと漆喰で造られており、べニアの種類はラワンベニアです。施工箇所は、居間の仏壇廻りの壁。ベニア自体は傷みも無く何ともないのですが、壁の一面(外壁側、向かって奥の壁)がブロック下地の漆喰仕上げになっており、その面が傷んでいたので、既存の漆喰壁とラワンベニア壁の上から、シナベニアを貼りました。60年前のべニアが劣化していない状況に軽く驚きました。外壁側にベニアが貼っていない状況が良かったのだと思います。外壁側に断熱材が入っていない状況だったので、そのままベニアが貼ってあれば、結露で劣化していたと思われます。結露対策、劣化対策、寒さ対策には、建物外皮に断熱材を入れること、断熱材の内側に気密シートを貼ること(高断熱高気密にすること)は必須です。気密シートを貼らないと、室内の湿気が壁の中の断熱材に入ってしまいます。べニア(合板)の劣化には、水分が大きく影響しているものと思われます。湿気の多い室内では、ベニア(合板)の劣化は早いだろうと予測できます。ちなみに、このお宅はMI-house の旦那様。MIさんのご実家です。

60年前、昭和30年の時代背景

60年前に建てられた家に使われているベニアについて書いていますが、今から60年前は昭和30年です。西暦だと1955年。年代流行というWEBを見ると、電気洗濯機、電気冷蔵庫、テレビが「三種の神器」と呼ばれ、大好きなアルフレッド・ヒッチコック監督の「裏窓」が公開された年です。日本経済が飛躍的に成長を遂げた高度経済成長の時期は、1954年(昭和29年)12月から1973年(昭和48年)11月までの19年間と言われていますから、まさに高度経済成長期の初期に建てられた住宅であり、建材です。ちなみに私の中でのヒッチコックベストは、「北北西に進路を取れ」、2位「裏窓」、3位「サイコ」、4位「めまい」、5位「ダイヤルMを廻せ」と「ロープ」です。次にべニア(合板)の歴史を見てみましょう。

 

日本のベニア(合板)の歴史は100年以上、世界のベニア(合板)の歴史は数千年以上だった

驚いたことに、日本での合板の歴史は100年以上でした。今から100年前というと、1915年。大正4年です。日本のベニア(合板)は根拠なく、日本では高度経済成長期に出来たものだと思っていましたが、違っていました。それより長い歴史がありました。

 

日本では100年前から合板づくり

合板の歴史は古く、エジプト時代にも貼り合わせた板が見られるそうです。日本でも、正倉院に合わせ板のものが残されています。日本でベニヤレースが開発され、合板が作られたのは明治40年(1907年)、名古屋の浅野吉次郎という人が作った、木材丸剥機(今日のベニヤレース)に始まります。出典 NPO法人 木材・合板博物館

 

世界の合板の歴史は、数千年以上でした。

 

合板は数千年前から作られており、紀元前3500年前の古代エジプトに、単板を互い違いに重ね合わせた合板から作られた製品が産出されている。元々は良質な木材の不足のために、合板は作られた。品質の劣る木の表面に、薄くスライスした木材を接着剤で貼り付けた。構造的な利点は偶然のものだった。合板を発明したこの方法は、歴史の中で繰り返された。例えば、シェリダンなどのイギリスの家具メーカーの多くが合板を使用した。ウィキペディア合板より

 

新建材が嫌いなのではなく、廃盤になってしまう建材が嫌い

べニア(合板)は新建材です。交換できて長く使えるのでべニア(合板)は好きな材料です。無垢の木材と同じように長く使える可能性があります。この60年前のベニアを見て、私は新建材が嫌いなのではなく、廃盤になって無くなってしまう新建材が嫌いなのだと気が付きました。廃盤になってしまう可能性の高い新建材とは、例えば、大手建材メーカーの既製品のドア、外壁材、床材等です。廃盤になってしまう建材を多く使うと、リフォーム対応できない箇所が多くなり、新築しか選択肢が無くなります。リフォーム、リノベーションという選択肢が無くなるので嫌いなのです。築60年の住宅に使われていたべニアは、黒光りして、とても良い風合いでした。

 

ラワンの木ラワンの木写真 出典

 

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

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