2014-10-28
自然素材

住宅の外壁材の素材別シェアとフレキシブルボード下見板貼りなど、住宅の珍しい外壁材を考える。

先日、Q&Aサイトに「住宅の外壁材として、フレキシブルボードを下見板貼りした場合の問題点は?」という質問があったので答えた。

 

外壁材としてフレキシブルボード下見板貼りをした場合の経年予想

 

「外壁材 フレキシブルボード下見板」と検索すると、写真が出てくると思う。

フレキシブルボードという燃えにくい材料を、下見板貼りしたもの。

 

フレキシブルボードはこちら

「下見板貼り」は木製サイディングで行うのが一般的。

 

レッドシダー下見板貼り上記写真は木製サイディングの下見板貼り。下から重ねて貼る。

フレキシブルボード下見板は、無機質な不燃材料を有機的に貼った感じである。

 

本日、フレキシブルボードのメーカーである三菱マテリアル建材のテクニカルセンターに

「外壁材としてフレキシブルボード8ミリを下見板貼りしたいと思うがどうですか?」と見解を電話で聞いてみた。

 

フレキシブルボードはweb上では内装用に使用が限定されているが・・・。

答えはこのブログの最後。

 

住宅の外壁は面積が大きいので、とても印象に残る。

だから「外壁材に何を使うか?」は、とても重要だ。

 

新築戸建住宅の外壁材素材別シェアグラフ(2009年度)

 

外壁材シェアグラフ

 

2009年で8割近くが窯業系サイディング。圧倒的だ。

増税や材料高騰、不況の為、2014年現在はもっと窯業系サイディングのシェアは増えていると思われる。どうりで廻りは窯業系サイディングだらけ。

窯業系サイディングだと、値段は安いものもあるがローコストビルダーかハウスメーカーのような「ありふれた感じ」になってしまうことが多い。

 

モルタル外壁は質感も良く、シンプルに仕上がり、安っぽさも無く、塗装でリフォームにも対応できる。

しかし、重いので当社のように充填断熱100ミリ+外貼り断熱100ミリを視野にいれていると、軽い外壁材のほうが無難である。

 

軽い外壁材で耐久性、更新性が高く(廃盤になる可能性が低く、リフォーム対応できるという意味)、

窯業系サイディング以外となると、今のところ、ガルバリウム鋼板外壁材か木製サイディングの2択である。

 

どちらも長く使える材料だと思う。よく木は腐るという。確かに腐朽するが、貼り替えで更新が可能だ。

証拠に吉村順三さんの代表作「吉村山荘」の外壁材は木だ。

 

吉村山荘写真上記の吉村山荘の写真は建築探訪さんにお借りしました

1962年完成なので、築52年の木製サイディングの家である。当社の近所でも築50年を越えると思われる、木製外壁材の家は複数存在している。

 

 

ショールームのレッドシダー外壁材うちのショールームも木製サイディングとして、木の外壁材を使ってもらえるようにアピール。

 

ただ、木製サイディングは腐朽するという心配から、エンドユーザーには敷居が高い。

木製サイディングを勧めても、結局より無難なガルバリウム鋼板外壁材になることが多い。

 

そこで、軽くて新しい外壁材を探していたところ、

ある建築雑誌に載った住宅がフレキシブルボードを下見板貼りしていた。

見たことが無い意匠と質感だったので興味を持って、「不燃ボード」三菱フレキシブルボードNのサンプルを取ったことがあったのだ。

 

「外壁材としてフレキシブルボード8ミリを下見板貼りしたいと思うがどうか?」と見解をメーカーに電話で聞いてみた。

 

私:御社のフレキシブルボード8ミリを下見板貼りしたいと思い、サンプルを取ってみました。外壁材として下見貼りできますか?

 

メーカーさん(以下M):以前は外装材で使っていたが、現在は内装材として使って頂くことを前提としています。

 

私:何で外装材としては推奨しなくなったのですか?

 

M:以前は石綿が入っていましたが、今は原材料に全く石綿は入っていません。

石綿が入っていないことにより、外装材としては推奨していません。

また、フレキシブルボードは、本体及び下地に先に穴を開けてから、ビス頭の裏に座彫り加工があるビスで

フレキシブルボードを留めることが基本ですが、なかなかやって頂けないようです。

これをしないとビス穴廻りに亀裂が入ることがあります。

その亀裂は施工後すぐに入る場合と、かなり時間が経過してから入る場合があり、

周囲の環境と施工状況によるので、どういう場合に亀裂、ひび割れが入るとは言えません。

 

私:なるほど、下穴を開けるのは手間が掛かりますから。8ミリと薄いので、言われてみると下穴は必要ですね。石綿が入っていないと弱くなるのですね。
主原料は、セメントということですが、窯業系サイディングは14ミリ厚が最低の厚さになっています。フレキシブルボードは8ミリだと変形しやすいですよね。材料は窯業系サイディングとほぼ同じですか?

 

M: いえ、セメントが主原料は同じですが、フレキシブルボードは違います。もっと、粘りがあります。

また、下見板貼りは、外装材の1部分をビスで留めて、その他は垂れ下がるようになるので、状況によってはビス穴廻りに荷重が掛かり、割れが生じることもあります。

また、薄いということもあり周囲の環境の影響も受けやすい。森に囲まれたような湿気のある場所では、材料が湿気を吸放出するので変形しやすいし、直射日光のあたる部分も同じように変形しやすいです。

外部で使うことは推奨しませんが、何度かフレキシブルボードを下見板貼りした経験があり、施工後の経過が分かっている方なら良いと思います。

 

私: なるほど。分かりました。メーカーは推奨しないのだから、結局は自己責任ということですね。とても丁寧にお答え頂きまして、ありがとうございました。

 

M: ありがとうございました。

 

(まとめ)

フレキシブルボード下見板貼り外壁材は、不燃材で軽く、ありふれていない良さそうな材料で魅力的。だが、10年~20年経年変化したものを見ることが出来ないのは、やはり不安が残る。使った施主さんのブログ等で経過報告と感想が見たいが、一般化してしまうと使う意味が無くなるのが痛いところ。珍しく、見たこともない外装材だからこそ、価値があるのだから。

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

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