研修・勉強会/展覧会.

今年最後の新住協関東支部の研修会は、鎌田先生による「100年後にも通用するエコハウスを考える」というテーマで、12月12日(水)に大宮JA共済ビルで行われました。

 

鎌田先生は、元国立大学法人室蘭工業大学の教授及び新住協の代表というだけでなく、「高断熱高気密」という言葉の生みの親でもあります。全国の設計・施工者に支持されている理由は、現場に精通していること。実際に使える具体的な高断熱高気密住宅の技術を設計・施工者や建材メーカーと一緒に開発して広めています。

 

今年最後の研修会は、人は住宅に何を求めているのか?、Q1.0住宅の基本工法の話はもちろん、北海道室蘭市で最後に造られた実験住宅を例として、長持ちする下地材と仕上げ材は何なのか?についても語られました。Q1.0住宅の基本工法は、建材メーカーの開発したクローズド工法でなく、誰もが使えるオープン化された普遍性があることが特徴。200mm以上の付加断熱にすると、断熱性能が極端に高まることが魅力です。

 

13時半から講義が行われて気が付くと17時。久しぶりに鎌田先生の話を聞きましたが、いつものように具体的な現場で使える内容で、あっという間の3時間半が過ぎました。

 

印象に残った点を取り上げて、私なりに感想を書きます。

 

人は住宅に何を求めるのか?

講義の最初は、「人は住宅に何を求めるのか?」について。

 

家を造る時の関心事は、坪単価(予算)、デザイン、平面プラン、広さ、立地、生活スタイルへの適合、防災(地震・火災・台風に強い家なのか?)、高齢化への対応、特にバリアフリーと高齢化時の寝室位置としての平屋願望、構成材料(木の家、漆喰の家、大工の手仕事)、快適性と省エネ(冷暖房費のランニングコスト)などがあるが、その中から、実際に住んでみて一番良かった要素は何なのか?という問いかけ。

 

家を造る前の関心事として、「住まいの快適性と省エネ性」についての順位は低い。しかし、住んでみるとこれが一番生活に直結する。地震などの災害は、その時にならないと分からないが、快適性、省エネ性は毎日のことであり、寒い家は心疾患等の病気になりやすい上に、暖冷房もガンガンかけないと過ごせないので、お金も掛かるからだ。

 

また、当社はリフォーム・リノベーションも行っているため、他社が手掛けた新築の家をリフォーム・リノベーションすることも多い。だから新築時にメンテナンス回数を減らせる、長く使える仕上げ材料で造っておくことも最重要だと感じている。高額のメンテナンス費用が繰り返し掛かる仕上げ材で新築してしまうと、お客さんはお金が無くなってしまいメンテナンスが出来なくなるからだ。

 

新築時に長期使用できる仕上げ材を使ったほうが新築時は値段が高い。しかし、新築時に安い仕上げ材料を使うと、メンテ回数が増えたり、廃盤になったりする可能性が高くなるので、結局は新築時に長期使用できる仕上げ材を使ったほうが、長い目で見るとお得なのだ。それについてはこのブログで後述する。

 

この20年、住宅が一番進化したのはデザインでなく高断熱高気密による快適性と省エネ性能

付加断熱の外壁下地。高断熱化が日本の住宅を変えた。

 

「人は住宅に何を求めるのか?」の話を聞いていて、この20年、住宅で一番進化して、住まい手に好影響を与えたのは、木造住宅の高断熱高気密化だと感じました。具体的には分厚い断熱材の施工と、樹脂サッシに代表される窓の高断熱化が、住宅革命と言えるほど、人の暮らしを大きく変えた。

 

分かり易いので、住宅の「デザイン」と「高断熱化」が住まい手に与えた影響を比較してみる。

 

住宅のプロでない一般の人が、日本の住宅デザインの最先端雑誌、新建築「住宅特集」の20年前と現在号を見比べたら、どちらが最新号なのか分からないと思います。(実際には、最近号にはリフォーム・リノベーション特集が多く組まれているので、どちらが最新号かは分かるが)

 

人間の摂理・天気・地域性・流通に限定される住宅は、大きく内外観のデザインや材料を変えるのは無理なのです。例えば住宅の外観は、地面と垂直に設置される外壁と、勾配の付いた屋根で構成されて、そこに開口部(窓)が付きます。

 

新しいデザインの住宅が造りたいからと、外壁を斜めにしたり、屋根がまっ平らだったりすると、外壁や屋根が雨によって傷みやすくなる。自然の摂理に反する外観にすることは、普通の設計者ならリスクがあって出来ません。ですから20年前と住宅の外観が、ほぼ変わらないのは当たり前の話なのです。

 

これは室内でも同じ。室内の床が斜めだったら暮らしにくく、壁が斜めだったらもちろん暮らしにくいので、床は水平で壁は垂直で、各部屋の移動の為にドアが付きます。20年前と室内の見た目もほとんど変わらないのも当たり前の話。

 

実際にはネットの影響で、内外観のデザインや材料を真似しやすくなったので、住宅のデザインも少しずつ進化し洗練されている傾向です。しかしその変化は分かりにくい。

 

それに対して、この20年で住宅を一番変えたのは、Q1.0住宅に代表される、快適性と省エネ性能を向上させた「高断熱高気密の技術」です。例えば宇都宮の住宅でもQ1.0住宅なら、真冬でも薄着で生活できる(下手すると半袖で)のは、断熱性と気密性が極端に上がったからです。20年以上前は、冬の宇都宮では室内でも厚着をしていたし、現在でも殆どの家では厚着で暮らしています。

 

ただし、どんなに断熱性能が低い住宅でも、住宅業者は勝手に高断熱高気密住宅だと名乗れてしまうので、消費者は注意が必要です。

 

快適性が高い断熱性能の目安は、HEAT20のG2レベルだと思います。住宅の省エネ性能を暖冷房エネルギーそのもので評価と表示を行っているのは、Q1.0住宅とパッシブハウスだけであるという、テキストの記述に納得。北関東の高断熱住宅は外壁225mm断熱で、ベストバランスなところまで行ったと思います。

 

高断熱住宅では気流止めが最も大切

気流止めが施工されたQ1.0住宅の基本工法

 

日本の一般的な木造住宅の断熱材は、実はほとんど効いていない。その理由は、外壁と間仕切り壁の内部に、床下や室内から上昇気流が発生しているから。

 

室内を暖房すると、外壁内、間仕切り壁内部の空気も暖められ、壁内にも上昇気流が生じ、その空気により熱と水蒸気が天井裏に抜ける。上昇気流と同時に、床下や室内から冷気と水蒸気も室内や壁内に流れ込む。

壁内に上昇気流が起こった結果、断熱材はほとんど効かなくなるばかりか、外壁内と小屋裏で結露が生じる。

 

グラスウール断熱材の性能を確保するためのポイントは、気流止めの設置である。高断熱住宅では、「気流止め」が最も大切。これにより、断熱材の性能が100%発揮され、同時に壁内に侵入する水蒸気が激減する。

 

Q1.0住宅の基本工法

剛床・外壁下地構造用面材を前提とする在来木造で、内装の石膏ボードも桁上まで貼り上げることで、外壁部は基本的に「筋違い無し」で断熱材施工を簡略化する。断熱材部分に筋違が入ると、断熱材が上手く入らない上に薄くなるからだ。

長持ちする外壁仕上げ材は何なのか?

外壁に分厚い無垢材を使い、ノーメンテナンスで50年を目指した室蘭の実験住宅

写真出典

住宅の高断熱化と共に、メンテ回数を少なくできて長持ちする外壁仕上げ材と屋根材は何なのか?というのも、大変気になるところ。外壁と屋根は面積が大きいので、メンテナンスにお金が掛かる場所だから。

 

というのも、現在ほとんどの木造住宅で採用される窯業系サイディングは、10~15年に1度は足場を架けて、板間のシーリングの打ち替えと再塗装が必要であり、多額のお金が掛かるからだ。

 

外壁塗装時には、外壁以外の雨樋・軒天・破風等も塗装する必要があり、ベランダが付いているとベランダの防水のメンテナンスも必要になる。また、屋根もコロニアル等のメンテナンス過多な材料で仕上げてしまうと、同時期に塗装が必要となる。

 

この外装リフォームは、10~15年に1度繰り返し何度も行う必要があるので、メンテ回数の多い外装材を使ってしまうと、大変お金が掛かる。

 

新築時、窯業系サイディング外壁やコロニアル屋根は、安くて初期性能だけは高いので採用されることが多い。しかしメンテナンスコストは高額になる上に普遍性と持続性がない。要するにローコスト住宅を含めての定番外壁材なので、安っぽい感じがするし、とにかく定期的に塗装しないと維持できない。実は造り手側の多くも、今までの経験からそれが分かってきたので、出来たら窯業系サイディングを使いたくないと考えている。これは、一般消費者は知らないことだ。

 

窯業系サイディングの初期性能の高さとは、大きな版を外壁に貼って目地をシーリングするだけなので、誰でも施工出来て、雨に対する漏水防止効果が高いこと。出来ているモノを貼るだけなので、気温にも左右されにくく施工性が良い。

 

対して、モルタル等の左官外壁は、水を入れて練るので気温や職人の腕に大きく左右される湿式工法の外壁材。手間が掛かってクレームになりやすい左官系外壁を、大量生産系住宅会社であるハウスメーカーやローコストビルダーが使わないのは当たり前の話だ。

 

鎌田先生が手掛けた、室蘭最後の実験住宅の外壁材はそのどちらでもなく、105×30という断面の下地用の間柱材(道産カラマツ)を7mmの隙間を空けて貼って、無塗装で仕上げている。無塗装なので、塗装のメンテナンスは不要。板厚が30mmと厚いので、50年くらいはノーメンテナンスで行けるのではないかという話。

 

木材の経年変化が好きで、受け入れられる方なら、長期的に考えて一番お金の掛からない外壁材の1つと言って間違いないと思う。工業製品ではないので、廃盤になる心配がなく、腐ったら部分交換できることも最大の魅力だ。無垢の木の外壁材は、塗装でなく木材の厚さを確保するほうがメンテナンス回数を減らせるという話にも納得。15~18mm程度と薄い木材でも雨掛りにならなければ、ノーメンテナンスで50年に近い年数は持つかもしれない。

 

Q1.0住宅デザイン論6

 

それに対して、例えば窯業系サイディングや室内の建具を既製品で仕上げてしまうと、その商品が廃盤になった場合は、部分交換は難しくなるから、全面交換が基本となる。外壁なら全面貼り替えとなり大変お金が掛かる。

 

私は実際にリフォームで窯業系サイディングの全面貼り替えを経験している。新築後15年程度の家で、外壁材の一部が劣化しており部分交換したかったが、廃盤になっており部分交換が出来なかったからだ。一部だけ違うサイディングにすると外観がおかしくなってしまうので、全面貼り替えとなった。

 

高断熱高気密を志向する施主の中には、断熱性と気密性のみに集中してこだわり、仕上げ材に無頓着な方や、お金が回らない方がいる。しかし、外壁や屋根は面積が大きく、メンテナンスコストは膨大になる場合も多いので、新築時の仕上げ材の選択にも配慮すべき。

 

仕上げ材の耐久性やメンテナンスについてはこちらのブログもご覧ください。

 

新築時の外壁材に窯業系サイディングを使わないほうが良い理由

 

【会話】建具職人が造った造作ドアは、時を経ても別の建具職人が修理出来る!しかし既成品ドア (既製品建具)は古くなると修理が効かない可能性が高い!という職人との会話

 

造作ドアにすると決めた理由は「吉田さんの造る住宅はダサイ!」と言われたからでした

 

新住協関東支部の事務局員の仕事を卒業

新住協の関東支部は、埼玉・群馬・栃木・茨城の北関東4県と、最近では長野・山梨・新潟の一部の方も参加している約55社からなる組織。

 

関東支部では、1年に6回の研修会の運営を、会長と事務局員のほぼ2人行っています。私は、関東支部の事務局員の仕事を2年間行い、この12月研修会で卒業することになりました。2年間という話で引き受けたのですが、正直、結構大変でしたから、お役御免でホッとしたというのが正直なところです。新住協という組織の裏側が、少し見られて勉強になりました。

 

2年間の事務局員の仕事。具体的に何をしていたのか整理しておきます。

 

研修会は短くて半日、長いと1日です。研修会当日、事務局員は受付をするので誰よりも早く会場に到着して、1人2000円程度の研修費を受けとり、受付しなければなりません。自分の仕事があるからと、研修会を欠席することはできませんし、遅刻や早退も許されません。

 

また、研修会を1回開催するにあたり、研修日とは別に半日から1日の準備時間が必要でした。

 

具体的には、研修会場と懇親会会場を押さえて、講演者と打合せを行い、会員さんに案内をメールして問い合わせに答え、申し込みを受け付けして、研修費の領収書を人数分用意したりすると、最短でも半日程度は掛かります。住宅見学で、見学会場まで人数分の車の手配をする時は、もう少し時間が掛りました。

 

年6回研修会を行うとすると、準備として別に6日掛るので年間12日は新住協のことをすることになります。その他、年に2回の本部への会計報告と、年間スケジュールを決める打合せもあるので、まる1日ではありませんが、年間15日程度は新住協関係のことをやっていました。

 

毎回、裏方として時間が掛った分、絶対に自分とって有意義な研修会にしたいので、最前列に座ることにしていました。

 

会員が支部会長や事務局員も兼ねるエコシステムが機能して、活発に活動している関東支部は素晴らしいと思います。活動が活発なのは、関東支部の代々の伝統でしょう。

 

会長の仕事は、年間6回の研修会テーマを考えてとスケジュールを出して、全体を管理すること。会長が設計監理で、事務局員が現場監督だというと、住宅業界の方は分かり易いと思います。

 

今年は、関東支部会長の夢・建築工房の岸野さんの発案・設計で関東支部のホームページを作りました。これから各会員のページが更新されるので、定期的にチェックして頂きたいと思います。

 

新住協 関東支部ホームページ

 

会員が完全に自主自営で研修会を行い、お金の管理もして、会員が会員をお客様として迎えるという運営スタイル。こんな工務店・設計事務所・建材メーカーの、3者が共存するグループは珍しいと思います。

 

だから非常に安い年会費で、濃い内容の研修会が運営出来ているのだと実感した2年でした。関東支部は現在55社が在籍していますが、(何度も言いますが)ほぼ会員2名で運営しているというエコシステムです。また、年1回、全国各地で開催される新住協の全国総会には確か、500人程度が集まりますが、その運営の多くも開催地の会員が行っているのですから、全国総会を運営している会員さんを尊敬しています。

 

以前、私はFPグループという断熱材メーカーが主催する工務店グループの北関東支部に所属していましたので、そのFPグループと比べると、新住協の特徴が際立つと思います。

 

FPグループ北関東の場合は、運営は全て断熱材メーカーの社員さんの仕事でした。断熱材メーカーからすると、会員工務店はお客さんという立場なので、研修会の運営や会費の管理をすることもなく、とても楽でした。当時は40社程の工務店が在籍しており、FPグループ北関東の事務所には、運営する社員さんが、事務の女性を入れて7~8名居たと思います。

 

FPグループは、建材メーカーが主導する工務店グループの構成だと普通ですが、会員は工務店だけで、専業の設計事務所や建材メーカーの会員さんはいません。工法がクローズドであり、断熱材自体に普遍性が無いので構成員が多彩でなく、建材メーカーの社員さんの給料という人件費が掛かっているので、会費も高いです。これはFPグループ以外のスーパーウォール、ソーラーサーキット、エアサイクル等、建材メーカーが主導する工務店グループでは共通だと思います。

 

それ対して、専業の設計事務所が会員として入会している団体は、大概普遍性とコスパが高いです。施工をしない設計事務所にとっては、断熱材の種類は優位性にならず、性能と普遍性・持続性のみが重要だからです。

 

そんな話を研修会後の居酒屋までの道すがらで、鎌田先生にしていたら、新住協本部は5名で運営されているとのことでした。先日、来年の会員名簿が来たので会員数を見てみたら、779社の会員が登録されていました。これまた本部も会員数に対して、エコな人数で運営されていましたw。

 

新住協の支部の運営方法は、会長と事務局員がしっかりやっていれば、効率的に運営できるスタイルです。しかし研修会の運営には結構時間が掛るし、時にはお金の催促をしなくてはならないし、同じ立場の会員さんをお客様として迎えるというストレスもあるので、任期は2年が妥当だと思いました。

 

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士

栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

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