2018-08-04
高断熱・高気密住宅

高断熱住宅フランチャイズと新住協との具体的な違いは何か?

新住協関東支部8月研修会。断熱リノベーション事例発表

約2年前の2016年の12月から、地域工務店・設計事務所・建材メーカーが会員として所属する、新住協関東支部の事務局をやっています。新住協はQ1.0住宅という超高断熱住宅で有名であり、関東支部は、新住協(新木造住宅技術研究協議会)という全国組織の中の地方組織です。

 

事務局の主な作業は、年6回程度開かれる研修会を運営すること。

 

今日のブログは、

 

■工務店や設計事務所は、どんな業界団体に所属しているか?

■新住協のQ1.0住宅が、断熱性能でも高断熱住宅フランチャイズの家を上回っている

■高断熱住宅フランチャイズと新住協とのバックヤードの違いは何か?

■新住協関東支部の研修会内容と、事務局の私が行っている具体的な作業は何か?

 

の4つを書いてブログにします。

 

新住協

 

工務店や設計事務所は、どんな業界団体に所属しているか?

地域工務店・設計事務所は、自分の仕事に役立つ知識や情報を得るために、特化された団体に所属して、住宅技術等を勉強しているのが普通です。

 

例えば、建築士なら各県の建築士会や建築士事務所協会に所属している方が多く、私も建築士なので栃木県建築士会に入っています。

 

しかし建築士会は、公的な色合いの強い団体なので、入会しているからと言って「差別化された何か」を学べるということは、ほぼありません。

 

新住協のQ1.0住宅が、断熱性能でも高断熱住宅フランチャイズの家を上回っている

工務店の中には、「〇〇工法」とか「〇〇の家」といった全国組織の高断熱住宅フランチャイズに入って、「入会しないと手に入らない特殊な断熱材と工法を使って」高断熱住宅を建てている会社も多いです。

 

しかし5年程前から、温暖地の栃木県でも「Q1.0住宅と言われる普遍的な断熱材を使って、少し勉強すれば誰にでも超高断熱な家ができる、グラスウール200mm以上の付加断熱の家」が徐々に浸透してきました。

 

壁の断熱材が高性能グラスウールで200mm以上の付加断熱の家は、断熱性能でも、全国展開する高断熱住宅フランチャイズの家を大きく超えるようになりました。

 

断熱性能の優劣は、温熱シュミレーションソフトQpex等で計算すると分かります。

 

高断熱住宅フランチャイズと新住協とのバックヤードの違いは何か?

価格でも、住宅フランチャイズは、本部の人件費や、特殊な断熱材の宣伝費が掛かりますから、お客さんに提供する住宅の値段も高くなるのは当然の話です。

 

それに対してグラスウールの付加断熱は、材料も施工方法も普遍的。少し勉強すれば誰にでも出来る断熱工法であり、何よりもフランチャイズの高断熱住宅よりも断熱性能も高くなりました。

 

建築材料と施工方法が普遍的なのは、人口が減る、これからの時代は特に重要です。

 

新築時に特殊な建材やクローズドな工法にしてしまうと、生産中止になったり特定組織のメンバーしかメンテできなかったりするので、お客さんに不都合が生じる可能性があります。

 

住宅会社が行った断熱工法による差別化が、将来お客さんに不都合を感じさせるという皮肉な結果にもなりかねません。

 

ですから、私のようにフランチャイズ系住宅団体を辞めて、もしくは最初からフランチャイズには入会せずに、新住協に代表される住宅技術研究団体に入会する人が多くなっています。

 

事務局をやっていると、新入会員の情報が真っ先に入ってくるので、この傾向が高いことが分かります。

 

両者の大きな違いの1つが、住宅フランチャイズ本部には、専業の社員さんが多数在籍して、お客さんである会員工務店さんのお世話を、手取り足取りしてくれること。

 

要するに高断熱住宅フランチャイズの運営は、多数の社員を抱える本部が行いますから工務店は楽なのですが、多数の本部社員さんの給料を支払うので会費も高くなるのです。

 

それに対して、新住協のような住宅技術研究団体は、本部が4~5名と非常に小規模で運営されています。

 

新住協の、各支部の実際の運営業務は誰が行っているかと言うと、会員の一部が行っています。新住協関東支部の場合は、会長と事務局の2名が中心となって運営を行っています。

 

もっと分かりやすく言うと、住宅フランチャイズに入会すると、工務店はお客さんとなるので、受動的に楽に過ごせます。

 

それに対して新住協の、特に運営側になると、工務店も設計事務所も、とてもお客さん気分では過ごせず、自分の仕事時間を削って積極的に運営に関わらざるを得ません。

 

運営側の立場になると、自分も会員なのに、会員さんをお客さんとして接する必要があるので、正直ストレスになることもあります。

 

この違いが、年会費にも反映しています。

 

ちなみに新住協の年会費は5万円ですが、高断熱系住宅フランチャイズの年会費は多分40~50万円くらいはすると思います。

 

この組織の違いと、建材の普遍性と特殊性による差が、年会費やお客さんが支払う家の価格の違いになっています。

 

高断熱住宅フランチャイズと新住協の具体的な違いは、ここにあります。

 

新住協関東支部の事務局をやって、初めて分かりました。

 

高断熱住宅フランチャイズに所属している工務店が、建築マスコミから取材されにくい理由

高断熱住宅フランチャイズは、リクシル等の大手建材メーカーや、断熱材メーカーが組織しているので、住宅業界雑誌や住宅新聞等の建築マスコミから、普遍的な内容の取材を受けにくいです。

 

その理由は、例えばある住宅雑誌が、ある断熱材メーカーから定期的に広告をもらっている場合、その断熱材メーカーのライバル社が組織している高断熱住宅フランチャイズの所属工務店の記事は書きずらいはずです。

 

私が編集者なら、自分の首を絞めることになるので、絶対に取材しません。

 

高断熱住宅フランチャイズの所属工務店の場合、どうしても取材内容が「特定の断熱工法や断熱材」に触れざるをえず、それに触れてしまうと、ライバルの断熱材メーカーから広告をもらっている場合、顔を潰すことになるため、高断熱住宅フランチャイズに所属している工務店は、実力があっても建築マスコミから取材されずらいのです。

 

建築マスコミから取材されにくいということは、これからも続くSNS時代には、かなり致命的な欠点になります。マスコミに登場するには広告しか方法が無いからです。

 

差別化をしたくて高断熱フランチャイズに入会したのに、所属しているがゆえに建築マスコミからは取材を受けにくい(差別化が出来ない)という「ジレンマ」が存在しています。

 

新住協関東支部の研修会内容と、事務局の私が行っている具体的な作業は何か?

実際の研修会の内容ですが、先日8月1日に行った8月研修会を例にすると、午後の半日かけて

 

・関東支部WEB制作経過報告

・断熱リノベーション事例発表

・お客様へのQPEX活用術、営業手法 (QPEXとは温熱シュミレーションソフトです)

 

という、とても具体的な内容の研修を行いました。会員が発表者となり、自分の設計事例、施工事例を発表することが多いです。

 

次に、私が行っている新住協関東支部事務局の具体的な作業を書いてみます。

 

関東支部は、埼玉・栃木・茨城・群馬・千葉の5県の、工務店・設計事務所・建材メーカーが集まっており、平成30年度は、合計55社の会員さんで構成されています。

 

事務局の仕事は、会員さんに対して年に6回程度行われる研修会を、案内・設営・集金すること。研修会後の飲み会の段取りも事務局の作業です。

 

1回研修会を行うと、研修日とは別に約1日程度の段取りの時間が掛るので、仕事が忙しい時は負担になりますが、2年間という任期で引き受けたのでなんとかやっています。

 

新住協の事務局を経験したので、他組織の研修会に参加した場合、運営側の気持ちも分かるようになりましたw。

 

ちなみに研修会後の飲み会は、大宮の来々軒という1人2000円でたらふく飲み食いできる店が定番ですww。

 

このドッグフード、値段が安いのに品質は良いです。おススメ!

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

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