2017-10-13
Q1.0住宅宇都宮三番町の家 SI-house(宇都宮市 三番町)
研修会・展覧会
高断熱・高気密住宅

自立循環型住宅研究会 関東ゼミで発表したQ1住宅の資料差し上げます。

「狭小敷地のQ値1.35付加断熱住宅、床下エアコンと室内の快適性」と題して、当社設計施工のSI-houseについて発表してきました

10/11(水)に自立循環型住宅研究会の関東ゼミで、「狭小敷地のQ値1.35付加断熱住宅、床下エアコンと室内の快適性」と題して、当社設計施工のSI-houseについて発表してきました。

 

付加断熱住宅は、断熱性能が上がり室内が快適+省エネになりますが、外壁が分厚くなってしまうので、街中の狭小敷地では施工しにくい住宅です。

 

東京や神奈川の狭小敷地で付加断熱住宅が少ない最大の理由は、狭い敷地で付加断熱をしてしまうと、室内が狭くなってしまうからです。

 

発表した住宅は、室内の広さと付加断熱に「折り合い」を付け、225mmの分厚い付加断熱住宅を、宇都宮市の中心市街地の狭小敷地に建てました。

 

発表内容は、設計時に決めた断熱性能Q値や暖房・冷房や通風方法に対して、冬と夏の実際の温度・湿度を室内外6箇所で実測して考察。

 

施主に住み心地を聞いて改善点をまとめたものをパワポ資料20枚程度、30分の持ち時間で発表しました。

 

せっかく資料を作ったのに使わないのはもったいないので、興味ある方に資料を差し上げます。詳しくは下を読んでください。

 

私の他に3名の同業者が発表しました。

 

自立循環型住宅研究会 関東ゼミとは

データロガー(自動温湿度計測器)はコレ。室内・床下・外と6箇所にロガーを置いて計測した。

自立循環型住宅研究会は、「省エネで快適となる住まい」を模索し実践する地域工務店、設計事務所、省エネ建材設備メーカー・販売店などの民間による任意団体です。 その中の関東ゼミとは、主に関東甲信越地区の会員が参加しています。毎年10月には5社程度が実測事例発表しているようです。

 

私は現在、自立循環型住宅研究会の会員ではありませんが、データロガー(温湿度自動計測器)を自立研さんにお借りしたので、発表することになりました。自立研は誰でも参加できるオープンな団体です。今回の研修会参加者は30名ほどでした。

 

参加している地域工務店、設計事務所が取り組む断熱方法・断熱材も様々。

 

造っている住宅の断熱性能もG1レベル、G2レベルと様々です。

 

会員さんが行っている断熱方法と断熱材の種類も様々。

 

・充填断熱は高性能グラスウールで、付加断熱はポリスチレンで行っている方

・私のように充填断熱、付加断熱共に高性能グラスウールで行っている方

・グラスウール充填断熱の方

・ソーラーサーキットという外張り断熱工法を行っている方

・スーパーウォールという硬質ウレタンパネルでの断熱を行っている方

・現場発砲ウレタンで充填断熱をしている方

と会社によって様々です。

 

暖房方法も様々。

・ペレットストーブメインで、補助的にエアコン暖房している方

・私のように床下エアコンの方

・パッシブ冷暖という床下エアコンをダクト配管して冷暖房をしてる方。

 

栃木県からは、小堀建設さんと、NASUホームさんが会員として参加されていました。

 

断熱材・断熱工法や暖房方法は様々ですが、研修後の懇親会を含めていろいろ情報交換しました。

 

自立循環型住宅研究会

 

どんな発表をしたのか?

発表した資料の一部「温熱設計のポイント」。

 

まず、敷地特徴と外観、設計意図についてお話ししました。

 

次に、温熱スペックの設計意図(なぜ、その断熱性能にしたのか?)を説明。住宅の設計段階で温熱解析ソフトを使い、家の断熱性能や電気・灯油の燃費などを計算したこと。

また、計算するだけではなく、建てた後の住宅の各所の温湿度データの実測結果を示し「なぜそうなったか」考察を説明しました。実際の温度湿度計測は、室内各所に長期間設置したデータロガー(自動温湿度測定器)で計測しています。

 

燃費データを取ると、温熱解析ソフトを使って行った「予想」に対する「実際の状況」がわかります。温熱解析ソフトは、新住協のQpexを使いました。

夏の室内各所の温度変化グラフ

発表内容は、

1.敷地環境と外観(どんな敷地に建つ建物で、外観をどうやって決めたのか?)

2.設計意図(敷地状況、要望、予算をどうやって整理したか)

3.街中の狭小地であり、付加断熱部分だけで、1.6坪(畳3畳以上)の面積がとられてしまうが(付加断熱をしなければ室内は広くできたが)、室内の広さと折り合うことで快適性は上がったこと。

4.狭小敷地での外壁の位置の決め方。隣家の塀や外壁との隙間に配置される、エアコン室外機が正常に動く位置を外壁位置としていること。

5.温熱スペックの設計意図(なぜ、その断熱性能にしたのか?)

5.なぜ、発砲系断熱材や自然素材系断熱材でなく、高性能グラスウール断熱材を使っているのか?

6.冬と夏の温湿度実測状況(どこに計測器を置いて、いつからいつまで調べたか?;冷暖房位置やドアの開閉との関係)

7.立面図と矩計図でポイント解説

8.温湿度実測結果(一番寒かった冬と夏の2日間を抽出)

9.温湿度実測結果の考察(グラフの特徴を考察し、なぜ、そうなったのかという自分の考えを話した)

10.南と北に4階建てのビルがあり、冬期日射取得が少なめになる代わりに、夏期にビルが日射遮蔽材となり、日射の入る面のハニカムブラインドを下ろしていれば、昼間冷房を入れずに涼しく過ごせたこと。

11.冬期の湿度は低めになるので、ほぼ終日加湿器を入れて過ごしたこと。去年の冬は基礎コンクリートを乾燥させるめ、4か月間終日床下エアコンを付けていたのも湿度が下がった原因である。

12.今年は、終日床下エアコンを付けないで、朝と夕方から寝るまでの間のみ床下エアコンを付けて、再度実測する予定。

13.Q値1.35の高断熱高気密に由来する室内の静かさで、施主は深く眠れていること。「よく眠れる」というのは健康面で最大長所の1つである。

14.まとめ。

 

事例発表は私を入れて4件

1.ささ木暮らし設計 佐々木 努「夏を改めて深堀してみる」埼玉県北足立郡

2.斎藤建設 斎藤真悟「暖房機の種類で実測・体感どう変わる?」群馬県太田市

3.伊東工務店 伊東誠三 「床下エアコンデビュー作、南に正対させた小形山の家」山梨県甲府市

4.ヨシダクラフト吉田武志「狭小敷地のQ値1.35付加断熱住宅、床下エアコンと室内の快適性」栃木県宇都宮市

 

他の方の発表を聞いての率直な感想

他の方の発表を聞いての率直な感想は、栃木県の住宅に置き換えると付加断熱できる環境がほとんどなので、シンプルに断熱材を分厚くして、窓と玄関ドアに高性能な物を使い、暖冷房設備はエアコンで考えるのが良いと感じた。建物の形も四角形のシンプルなものが合理的だ。

 

暖房は、薪が無料で手に入り、薪にする作業が面倒でないなら薪ストーブは選択肢の1つ。薪は買ったら高いので、無料もしくは超破格値で手に入らないと暖房器具として使い続けられない。ペレットストーブは、火が見えるという心地よさはあるが、灯油ストーブよりランニングコストが高いので、私からおススメするのは辞めておこうと思った。

 

また、当たり前だが住宅の内外観のデザインは、断熱性能以上に重要で、素材や形態を含めて地域性をもっと反映したい。

 

実測をすると、予想に対する実際の室内状況が分かり、今後の設計に役立つ

自立循環型住宅研究会の世話役である、オストコーポレーション北関東の吉田さんが、東大の前先生から、大量のデータロガー(自動温湿度計測器)を借りており、それを主に自立研の会員に貸して、住宅の温熱環境を実測しています。

 

今回は、そのデータロガー(自動温湿度計測器)をお借りしました。実測すると改善点が見えます。

 

また、今回は狭小敷地の建物の夏のメリット。日射遮蔽が夏は特に快適性を高くしやすいことが分かった。この建物、断熱性が高い上に隣家が日射遮蔽材となっており、夏はほとんど冷房が必要がない状態です。

 

事例発表後の意見交換ワークショップで、同業者の意見や評価を受けられる

事例発表後のワークショップ

 

事例発表後、発表ごとに4つの班に分かれて、各発表についての意見交換ワークショップ。

 

私の発表についてのご意見を頂いた。

 

金魚の水槽や洗濯物の室内干しやお風呂に水をためておいての自然蒸発だけでは、冬の湿度は45から60%程度にはならない。やはり冬は加湿器が必須かと。

 

また、今年の冬は、床下エアコンを終日付けないで過ごす予定なので(朝と夕方から夜だけ床下エアコン付ける)、湿度も上がると思う。再度実測させていただき、来年もう1度発表することになった。

 

研修の後は懇親会

懇親会も参加しました。場所は水道橋の居酒屋。出席率は驚異の80%超え。基礎断熱のスラブ上はすべて断熱材を敷いたほうが良かったとアドバイスをもらう。

 

 

Q1住宅の発表資料を差し上げます

今回、せっかくQ1住宅の実測資料を作ったのに、使わないのはもったいないということで、家づくりをお考えの方に、発表資料を差し上げます。

 

Q1住宅(Q値1.35)の住宅を宇都宮市で建てると、冬と夏の温度と湿度がどのような状態になるかが分かると思います。

 

また、床下エアコンを採用しているので、床下エアコンを使った室内の温度と湿度の変化が分かります。

 

資料を差し上げる対象は、栃木県内で新築もしくはリフォーム・リノベーションを考えている方といたします。

 

お問い合わせフォームから、必要事項を明記してメールください。

 

最後の「お問い合わせ内容」の欄には、簡単な自己紹介と、どういう部分に興味を持ったか書き込んでください。

 

お問い合わせ

 

今日のわかった

7年前の2010年にも、自立循環型住宅研究会 関東ゼミで、データロガーを使って実測した建物の発表をしています。

 

7年前の建物は、断熱性能を表すQ値2.38の住宅について発表しました。Q値2.38は宇都宮市の次世代省エネ基準である2.7を上回る断熱性能の住宅です。

 

しかし今回の住宅は、Q値1.35と断熱性が桁違いに良かったので、室内温度を建物の隅々まで一定にしやすく、かつ住み心地も桁違いに良くなっていました。この性能の家なら、小さな家でも家の隅々まで利用でき、吹抜を設けながら大きく暮らせます。

 

実測して初めて分かったこともありました。実測するのは大切だと実感しました。

 

今日はちきりんさんが299円セール中です。

私の廻りで読んでる人が多い。これ買いました。281円セール中。

 

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

この記事をシェアする
コメント