2017-09-26
住宅探訪
研修会・展覧会
高断熱・高気密住宅

新住協総会2017@横浜で、都市型狭小敷地・温暖地の高断熱・高気密Q1住宅を見学してきた

あすなろ建築工房さん 六ッ川の家

先週9/21(木)は、新住協総会2017に出席するため、6時38分の新幹線で横浜へ。

 

朝9時から夕方6時まで横浜球場近くのワークピア横浜会議室にて、全国から300人近くの工務店経営者が集まり総会及び研修会。

 

翌日9/22(金)は、横浜市の会員建築設計事務所と工務店の建てた、都市型狭小敷地・温暖地の高断熱・高気密の家3軒を見学させていただいた。

 

とても素晴らしい住宅でした。ブログを書きたいと思います。

 

Q1住宅(キュウワン)住宅の標準工法

総会では、新住協の新しい標準工法として、「不燃断熱材であるグラスウールの特性を生かし、省令準耐火の仕様をできる限り取り込む」合理化された工法が改めて発表になった。

 

外壁は、耐力面材を外側に貼り、内側の石膏ボードと合わせて壁倍率3.4~5.0の耐力壁として外壁内側には筋交いを設置せず断熱材も施工しやすくする。

 

グラスウールは、ウレタンやポリスチレン等の発砲系断熱材や羊毛等の自然素材系断熱材と比べて火に強いので、ガルバリウム鋼板外壁材や杉板外壁材等の耐久性と更新性は高いが火に弱い外壁材を組み合わせると

 

防火構造にしやすいのが利点だ。私が発砲ウレタン断熱材→羊毛断熱材と使用断熱材が変わり、グラスウールに落ち着いたのも、外壁材としてガルバリウム鋼板外壁材を下地を複雑にすることなくシンプルに使用しやすいからだ。

 

Q1住宅のデザインプランニングと30坪以下のプロトタイプ住宅の開発

「外観デザインの良いコンパクトなプロトタイプのQ1住宅」の開発が進められている。夫婦に子供2人の家族が想定され、延床面積約30坪以下の住宅。

 

2.5間(4.55M)×6間(10.92M)と、4間(7.28m)✖︎4間(7.28m)の総2階住宅が計画されている。計画中の平面図を見たが、とても普遍的な総2階のプランでした。

 

このブログでレポートする、あすなろ建築工房さんの六ッ川の家も30坪以下の住宅に家族4人が暮らす。30坪は狭くもなく広くもなく、ちょうどよい家の大きさだと思う。

 

床下エアコンの設置方法のコツ

床下エアコンの設置方法として、エアコンと床板の隙間を塞ぎ、エアコン周りの気密性を確保することで、床下が圧力チャンバーになり、きちんと床下エアコンが効くようになると、壁掛けエアコンの床下への設置例が3種類示された。

 

Q1住宅事例発表3つ

・里山住宅博in神戸での建築家 堀部安嗣氏と大阪の会員工務店ダイシンビルドさんのヴァンガードハウスでの協同の舞台裏。堀部さんも新住協の事を絶賛し、新住協の断熱仕様を取り入れているようだ。

 

・西方設計 話題の自邸建築概要

 

・自社でパッシブハウス認定取得 (株)カネコ

 

熱損失解析ソフトQpexの新バージョンVer3.5の解説、と非常に盛りだくさんな内容。

 

毎回、新住協の研修はコスパが高い。研修会後の懇親会費、翌日の会員住宅見学を含めて16000円程度の会費。

 

仕事に生かせる素晴らしい内容の研修や事例見学を、とても安い会費で研修が受けられる。会費が安い理由は、会員工務店が運営も兼ねているから。それが高い会費の住宅フランチャイズとの違いでもある。

 

横浜の都市型狭小敷地の高断熱・高気密Q1住宅、鈴木アトリエさんの横浜下町の家と戸部S邸

懇親会は中華街で行われたが、その後、また1軒中華街で飲んで一泊し、9/22(金)は朝から分科会。

 

2日目も同じ会場にて、壁掛けエアコンを使った床下冷暖房という研修会もあったが、私は会員設計事務所と工務店の実作3軒を見るバスツアーに参加した。

 

まずは鈴木アトリエさんの横浜下町の家戸部S邸を見学させていただく。

 

どちらも横浜の街中の狭小敷地。隣家が間近に迫るが、外壁を盾として、建物内に上手く気持ちの良い場所を造っている。

 

特に、3階建ての横浜下町の家の、LDK⇔ベランダ⇔水回りの気持ちよさは格別。窓際のベンチに腰掛けて周囲を見渡すと、別世界にいるようだ。

 

カフェのようなキッチンが素敵。対面の棚は本棚として造られたようだが、今は陶芸作品も並ぶ。

 

造作洗面台やシャワーブースの名古屋モザイクタイルもシンプルな室内だからこそ、鮮やかな色が映える。

 

室内造作も造り込まれているが変な緊張感を与えず、とてもリラックスできる雰囲気が素晴らしいと感じた。

 

どちらの住宅も写真は撮らせて頂きましたが、お施主さんが住まわれているため写真掲載は止めておきます。

 

鈴木さんは建築知識2005年2月号で内装設計のディティールを執筆しており、私の住宅でも玄関ドアに付けるポスト口(堀商店NO530)、玄関ドア下のスーパータイトという気密部材の納まり、階段の納まりを参考にしたことがある。

 

この建築知識2005年2月号は、何度も読み返して使える実践的でお得な本だ。

 

WEBにも素晴らしい住宅が並んでいる。

鈴木アトリエさん

 

横浜の都市郊外型高断熱・高気密Q1住宅、あすなろ建築工房さんの六ッ川の家

立地の分かる模型も上手い。社長の関尾さんが造ったそうだ。

次はあすなろ建築工房さんの、六ッ川の家。

 

社長の関尾さんの自邸で、モデルハウスとしても使用されている。

 

横浜市内を電車で走ると、車窓から坂と擁壁が迫ってくるような人工渓谷のような風景を目にするが、まさに敷地は入り組んだ崖の上にある。車では敷地まで行けない過酷な立地。

 

乗ってきたバスを通りで停めて徒歩で坂を登る。坂を登っただけで息切れがしそう。どうやって家を建てたのだろうかと、施工の大変さや役所及び近隣との折衝を想像して頭がクラクラしてしまう。

 

東京や神奈川の狭小地や坂道の多い敷地で家づくりする工務店は、何とか家を造ってしまうというノウハウと粘り強さがあるのだ。

 

そんな過酷な敷地に、ほぼ総2階、延床面積27坪の住宅を建て、ご夫婦と子供2人の家族4人が暮らす。

右端に床下エアコンが見える。

吹抜や勾配天井、天井までの建具の効果と、LDKとウッドデッキ⇔庭との繋がりもあり、室内が外に広がっていく。

 

いろいろな場所に回遊式導線もあり、かつ吹抜を介して1階床と2階天井の対角線に視線が飛ぶので広がりを感じ、とても27坪の家とは思えない。

 

大工さんが造った(家具職人かも?)作洗面化粧台やテレビボードも、手作り感がありながらセンスと使い勝手が良さそうで勉強になった。また、室内の白壁と木の割合が絶妙で、室内がスッキリとし、かつ温かみを感じる。

 

お風呂はハーフユニットバス。ユニットバスの防水性を確保しながら、壁天井は無垢材。これはやってみたい。

 

断熱気密性能は、UA値0.48・Q値1.488・C値0.3と温暖地での最高レベルである上に、プラン・収納・ディティール・素材がうまくコーディネイトされ27坪に凝縮されている家。

 

床下エアコン1台と壁掛けエアコン1台の2台で全館冷暖房するが、両エアコンも吹抜に面した良い位置にあるので、快適な室内になっているだろう。

 

丸棒ステンレスの8mmのタオル掛け、室内物干しとか金物をオリジナルで作ると室内の雰囲気がよくなりますね。

 

細かいところを、もう1度見たくなるような住宅でした。

 

あすなろ建築工房さん

 

ちなみに、3軒の住宅を見学させて頂いたが、どの住宅も外壁はガルバリウム鋼板でした。ガルバリウム鋼板外壁材は、グラスウール断熱材とのセットで防火構造にしやすく、屋根材としても使用されるだけあり高耐久で廉価、かつ窯業系サイディングと違い普遍性があることが採用理由だと思う。

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

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