2017-09-08
住宅設計
本・映画

小さな名作平屋住宅「栗の木のある家 設計/生田勉」の現代性

小さくて使いやすい、魅力的な家を造りたいと考えているので、参考になりそうな「小さな家」が掲載されている建築本や建築雑誌は、古いモノも含めてなるべく読みたいと思っています。

 

名作平屋と言われている「栗の木のある家 設計/生田勉」が掲載されている「現代日本建築家全集13 生田勉・天野太郎・増沢洵」を古書で買いました。

 

今日のブログは、「栗の木のある家 設計/生田勉」が3~4人程度で暮らす平屋の小さな家として最適で、かつ今後の経済縮小傾向の日本に合った簡素さ・内外観の美しさ・仕上げ材の普遍性の3つを実現している素敵な住宅だということを書きたいと思います。

 

生田 (いくた つとむ)1912年2月20日1980年8月4日は、日本の建築家建築学者東京大学名誉教授。木造の温かみを生かした住宅・山荘作品に独自の境地を開いた。ル・コルビュジェの作品・思想に強い影響を受けた。wiki

名作平屋「栗の木のある家 設計/生田勉」の現代性

栗の木のある家。この写真は軒側。

 

妻側も美しい形をしています。

 

「栗の木のある家」は、横板張りの内外壁と屋根板金の水平ライン、特に屋根の水平ラインが強調された、24坪程の素朴で美しい小さな平屋の家です。

 

1956年完成なので61年前の住宅ですが、現代的な開放的間取りと意匠。

栗の木のある家平面図

特に間取りは玄関から居間・キッチンに至る「しの字」の導線及びウッドデッキとの関係が、とても使いやすそうな上に、プライバシーと開放感を両立している。

 

「栗の木のある家」は3~4人程度で暮らす平屋の小さな家として最適で、かつ今後の経済縮小傾向の日本に合った簡素さ、内外観の美しさ・仕上げ材の普遍性の3つを実現している住宅のように感じました。

 

「栗の木のある家」設計/生田勉は高額古書で買えなかった

「栗の木のある家 設計/生田勉」は、先日見学した、「日本の家 1945年以降の建築と暮らし@国立近代美術館」でも取り上げられていたようですが、派手な建築に混じって地味目だったからか、どこに展示されていたのか分からず見逃してしまいました。

 

せっかくこの住宅を見に行ったのに、気が付いたら閉館時間になってしまい残念!

 

そこで生田勉さんの古書、「栗の木のある家」を買おうとしましたが高額すぎて買えず、栃木県内の図書館にもありませんでした。

 

何と生田勉さんの本、「栗の木のある家」はアマゾンでも高額古書、11,459円(送料別)で売っています。送料込み3,000円なら買いますので、持ってる方はご連絡ください。

 

見たことが無いのでどんな内容の本なのかは分かりませんが、名作と言われている平屋の住宅「栗の木のある家」の解説本なのだと思います。

 

生田勉さんは作品集的な著作がほとんどなく、唯一古書で買えそうなのが、「現代日本建築家全集13 生田勉・天野太郎・増沢洵」。アマゾンで2500円で手に入れました。

この本は、宇都宮市図書館でも借りることができます。古い本なのでページが外れていましたけど。

 

初めて生田勉さんを知ったのは、「TOTO通信」の連載、現代住宅併走「牟礼の家」

設計者のための業界紙「TOTO通信」、現代住宅併走は、藤森照信氏(建築史家・建築家)が日本の名作住宅を取材し、分かりやすい独自視点の文章と生活感のある写真で、読むのが楽しい連載です。

 

特に建築の歴史を踏まえた推測力は、知識の量が違うなと毎回納得させられる。

 

初めて、生田勉氏設計の自邸「牟礼の家」を見たのも、TOTO通信2014年新春号の現代住宅併走でした。

 

総2階の立方体に切妻の屋根が乗った小さな家。

 

外壁はこれまた板張り(栗の木の家と違い縦貼り)で、内装は、ほとんどラワンべニアの茶色い家は、開口部(窓)が明快で簡素。この住宅も小さいですが、整理されかつ開放的で、とても魅力的に見えました。

 

吹抜に面して大きな窓のある、これまた現代的な間取りの住宅です。1961年完成ですから、56年前の住宅ですが、間取りと仕上げ材料は、現代の住宅とほぼ変わりません。

 

生田の作品群を見ると、公共建築は少なく、住宅が、それも小さな独立住宅が多い。公共建築もスケール感をわざと小さく抑えている。名作として歴史に名を残すのは、「栗の木のある家」(1956年)や「かねおりの家」(59年)のように小さな家ばかり。TOTO通信2014年新春号現代住宅併走「牟礼の家」より

 

長く使われる名作住宅の仕上げ材を見て、新築・リフォームするときの参考にしよう

 

50年以上前の住宅の間取りや材料が、今の住宅と変わらないのは、進化が無いのでなく、長く使われる間取りや建材は、普遍的で限られているということだと思います。

 

室内での人の行動は、50年前とあまり変化がないので間取りにも変化がなく、建材も地域の木材や職人を使って造り、修理できたほうが長く使えるので、合理的だということだと思います。

 

今の住宅が大きく改良されたのは、住宅性能(断熱性と気密性、主にサッシと断熱材の性能と施工)が向上したことでしょう。

 

矩計図(家の断面を切ってあり、壁の中の材料まで分かる図面)が掲載されていたので見たら、断熱材の表記はないので、無断熱の家だった思われます。

 

「牟礼の家」も住宅性能向上リフォームを行えば、外観と間取りが良いので、とても住みやすい家になると思いました。

 

「栗の木のある家」と「牟礼り家」を魅力的に感じた一因は、現代のQ1住宅(超高断熱高気密住宅)で実現しているような開放的な間取りです。

 

当時は無断熱だったでしょうから、冬の室内はコートを着ないと寒くて居られなかったと思いますが、今は断熱性と気密性高まったことにより、小さな家でも間仕切りを少なくして、快適に広く住めるようになっています。

 

高断熱高気密住宅を造っている私としては、この意匠と間取りで断熱性を高めればより魅力的になると思うので、「栗の木のある家」と「牟礼り家」は素敵に思えるのです。

 

「牟礼の家」の写真と図面から仕上げ材を見ると、床が無垢フローリングで、ドアが造作建具、外壁は板張り、屋根は板金です。

 

これを見ると、意匠の良さはもちろんですが、どのような建材を使うと長持ちするかが分かります。

 

このTOTO通信の連載は、「藤森照信の現代住宅再現」として単行本化されており、築50年前後の名作住宅が多数掲載されています。

 

 

長く使われ続けている名作と呼ばれる住宅ばかりが掲載されている本です。

 

中には奇抜過ぎて参考にならない家もありますが、これから家を新築・リフォームする人は、「どのような内装材、外装材を使うと長持ちするか?」を見てみるという点でも、この本は、とても参考になると思います。

 

結論から言うと、ハウスメーカーやローコストビルダーで使用されている、廃盤になってしまう新建材は皆無で、板張りの外壁材や、無垢フローリング、造作建具等、更新しやすい普遍的な仕上げ材料で作られていることが分かります。

 

この本も宇都宮市図書館にもあります。

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

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