建築いろいろ.

東京 乃木坂のTOTOギャラリー・間にて開催されている「堀部安嗣展 建築の居場所」に行ってきました。

 

会期は残り1日、3月19日日曜日まで。

 

凄い内容の住宅建築展覧会が無料。

 

これから注文住宅を建てる人は、見ておいたほうが良い展覧会である。

 

堀部安嗣展 建築の居場所

 

住宅設計者に一番影響を及ぼしている建築家

今、住宅建築のデザイン面で、住宅設計者に一番影響を及ぼしている建築家は、堀部安嗣さんと伊礼智さんだと思います。

 

著作や作品集も多く出版されており、私もほとんどの書籍を持っています。

 

展覧会は模型と短編映画が中心

展覧会は3階と4階で行われており、3階は模型が中心の展示。4階はエンドレスで堀部安嗣建築の30分の短編映画が上映されている。

 

特に、短編映画の中で写される代表作の「阿佐ヶ谷の書庫」は、らせん階段の周りの書庫機能がそのままデザインになっていて圧巻。まさに小宇宙。

 

模型と短編映画を見るだけでも価値がある。

 

 

屋根の架け方も日本一上手い建築家

3階の模型群を見ると、建物の外観は屋根を主とする輪郭の美しさで決まるということを再認識する。

 

屋根を美しく架けて均整のとれた外観にするには、整理された平面プランと階高の調整が必要で、かつ窓と外壁を適切な配置にしないと美しくは見えない。

 

施主の要望も加味した上で、美しい屋根を架けるのは難しいのだ。

 

模型撮影禁止表示があったので、撮影可の場所でしか写真を撮らなかったのですが、それは建前だったようです。

 

堀部安嗣展「建築の居場所」ブログで検索すると、展覧会に行った人のブログに美しい屋根の模型写真が多数出てきます。

 

人が宗教建築に魅力を感じる理由

堀部さんの建築は静謐(せいひつ)で精神性が高いと評される。設計する建物が寺や神社等の宗教建築のように感じるからだ。

 

屋根の形を含む住宅の輪郭や、アプローチからの建物の見せ方が、寺などの宗教建築に似ている。

 

展示によると、10代のころから伊勢神宮や奈良に神社やお寺を見に行っていたようだし、アスプルンドの森の火葬場を見て建築家になる決意をしたとあった。

 

気付いていないが、人は本能的にお寺や神社といった宗教建築に特別な想いを感じている。その理由は、自分が死んだ後に骨となり、寺の墓地に入ることが分かっているからだ。

 

自分や廻りの人間が死ぬことは、普段あまり考えたくないが、確実に起きることなので、心の深いところにいつもある。だからお寺は全ての人に関係の深い場所であり、無意識のうちに、寺の建物には自然と特殊な感情を持つ。

 

自分が死んでから入る寺には、お金やモノを持って行けないので、精神性が高い建築でないと困るのだ。これは古今東西、全世界共通の「思い」だろう。

 

年齢を重ねるほどに、社寺などの日本的なモノに惹かれるのは、死んだらそこに入るという無意識が作用しているのかもしれない。

 

また、神社でお参りをする時には、特別な想いで建物を見上げる瞬間がある。お参りをする建物なんて神社以外には無いから、知らないうちに、建物に特別な感情を持つに決まっている。

 

普段の生活では感じない「宗教的な思い」で見る建物は別格であり、それに似た輪郭の住宅に魅力を感じるのは、よく考えたら普通のことだと思った。

 

寺も神社も均整のとれた大きな勾配屋根が載る。

 

ちなみに静謐とは、静かで安らかという意味。

 

室内も陰翳礼讃で静謐

3階ギャラリーの壁に、完成引渡し後の写真が何枚が展示されていた。夕方、もしくは午後に撮ったと思われる写真は、外から撮られており庭と室内が見える。

 

非常に魅力的な写真だったので、その写真を撮った。

 

その時は、何が魅力的だったのか分からなかったが、写真をよく見ると、外は明るいのに室内は暗い。

 

外が明るい時間に室内が暗ければ、下手で魅力の無い設計者なら「室内が暗い!」「照明が少ない」と施主にクレームを言われてしまうだろう。

 

しかし「暗さも美しい」と施主に言わせてしまうような静謐な室内になっている。室内が暗いので照明が美しく見える。陰翳礼讃だ。作業は「しにくい」だろうけど。

 

BOX型の真四角の家を建てようとしている人は、ひとまず計画中止して堀部安嗣展へ

これから注文住宅を建てる人の中で、BOX型の真四角の家がカッコいいと思っている方は、来週月曜日までに堀部安嗣展に行って、軒の出た美しい勾配屋根の模型を見て考えを改めるべきだろう。

 

勾配の付いた屋根と軒の出は、雨から建物を傷みにくくするという点や日射を防ぐということで日本の住宅には必須だからだ。

 

堀部安嗣展 建築の居場所

期間: 2017年1月20日(金)~3月19日(日)

開館時間:11:00~18:00

休館日:月曜・祝日

会場:TOTOギャラリー・間 港区南青山1-24-3

入場:無料

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士

栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。


*